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第35話 ヤバイ救援が来た件

今回のホマレは移動でエネルギーを使い果たしている+怒り狂っていて冷静じゃない状態です。

【ホマレ視点】


 許さない。

 俺の大切な人を、おふくろをよくも!!

 全身が裂かれているような心の痛みを感じる。

 前世で俺を見殺しにした事なんかはどうだっていい。

 俺を大切に育ててくれた人を奪おうとしている事が、どうしても許せなかった。

 心の底から、このふたりの事が憎い。憎くて仕方ない!!


「ははっ、出来損ないの癖にヒーローごっこは出来るんだな。まあ、それでも二流、いや、三流だがな!」


 変身した俺を見たアトムは小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

 そして手をかざすとその肉体が燃える様な深紅の鎧兜を纏った戦士へと変容していく。


「その姿は……」


「懐かしいだろ?俺のデビュー作『アポロンナイト』。主人公が変身するヒーローと同じ姿だ!お前みたいなまがい物とは違う。本物のヒーローというやつだ!」


 そうだ。30年間続く特撮ドラマ『ナイトシリーズ』。

 アトムはその中の『アポロンナイト』の主演を見事に務め大人気俳優へと駆け上がって行った。

 当時は誇らしさを感じると共に憧れであった。だが今は……


「それがどうしたっ!お前は殺すっ!絶対に許さないっ!!」


 俺はアトム目掛け突っ込んでいきドロップキックを見舞う。

 アトムは攻撃を避ける気も無い様子で一撃を喰らうも何事もない様に被弾箇所を手で払っていた。

 俺は更にパンチを連続で繰り出すがそれも蚊が止まって程度の反応でしか無く微動だにしない。


「やれやれ、姿が変わったから少しは期待したんだが……所詮はこんなものか」


「黙れ!!」


 俺はアトムを担ぎ上げると図上高く放り投げ同時に回転。

 落下してくるアトムの顔面にオーバーヘッドキックを叩き込んだ。


「ぎゃはははっ、そんなガキみたいな蹴りで俺を倒そうなんてなぁ」


 アトムは身体を捻り回転すると俺の背後に回り手から衝撃波を放った。


「片腹痛いわぁっ!!」


 背中に衝撃波を受けて地面を転がるが立ち上がると腕を組んで全身の力を振り絞って暗紅色のビームを放つ。

 

「ゼピュロォォォスビィィィィィィム!!!!」


 ビームはアトムに着弾し激しい爆発を引き越すが煙が晴れた後には悠然と立つ敵の姿。


「無傷だと!?直撃したのに!?」


 今の一撃なら中級モンスターは軒並み倒せるはずなのに!?


「いや、効いていないわけじゃねぇさ。ダメージはある。俺の鎧『アイギス』は20層からなる超多層装甲。まあ、お前が砕いたのは、ほんの『1枚』だがな」


「なっ!?」


 今の一撃をあと19回直撃させなければアトムにはダメージが通らないって事なのか?

  

「あははっ、所詮クズはどこまでいってもクズって事だよね、クソ兄貴!!」


 キララの足元にある影から大量の黒い刃が飛び出し俺の身体を斬り裂いて行く。


壊刃影(ブレードウェイ)!あたしは『影使い』。あたしの影は武器となり、自信を守る刃となる!あのおばさんもこれでぶっ殺してやったのよ!!」


「そうか、お前がおふくろを刺したのかッッ!!」


 俺はアトムからキララにターゲットを移しこぶしを握り締め突撃していく。


「えっ、あれ?そんなっ、いきなりこっちなんて……怖いじゃん!!」


 キララの姿が視界から消え次の瞬間には俺の背後に回っていた。

 同時に俺の身体に激痛が奔る。斬られた!?カウンター攻撃!?

 傷口から血が噴き出し膝をついた。


移動殺影(いどうさつえい)。ホント、単純すぎるバカだなぁ」


 更にアトムが両腕から出した衝撃波が直撃し、俺の変身が解除される。

 バカな、いくら何でも解除までが早すぎる!?まさかここに来るまでに力を使い過ぎていたという事か?


「やれやれ、所詮はこの程度というわけか」


「あんた、聞いた話じゃ冒険者として有名だった時期があるらしいけどさ。あたしらは食うか食われるかの芸能界でのし上がってきたんだよ?チートスキルがあったってあんたみたいな出来損ないが敵うはずないじゃん!!」


「そう言うことだ。俺達は芸能界を必死に生き抜いたのにたった一つのスキャンダル。お前みたいな出来損ないの兄貴が自宅で死んだせいで一気に転落だ。どれだけ悔しい思いをしたかお前みたいなやつにわかるか!?」


 クソ、全身に激痛が奔って動けない。

 こいつら、勝手な事を言いやがって。

 そうやって自分達の事だけ考えて俺を見殺しにしといて、それすら俺が悪いみたいに言って。


「この世界に転生して、ある方の元で働いていた俺達はお前の存在を聞いて怒り狂ったよ。お前が俺達から奪った栄光。その代償としてお前の大事なものを奪ってやる。まずは母親。それから、そうだな。お前は随分と美人な姉ちゃん達が居るらしいな。きれいな女は好きだ。俺が可愛がってやってもいいんだぞ」


「姉さん達に手を出すな!殺す!殺してやる!!」


「あはは、負け犬の遠吠えって滑稽よね。力のない奴なんて奪われるだけなの。身の程を知らないとね」


 くそっ、身体に力が入らない。

 何でだよ。ようやく手に入れた幸せなのに、何でこんな理不尽に奪われなくちゃいけないんだ。

 どうして俺はこんなにも無力なんだ。


「くそぉぉぉぉっ!!」


 絶叫する俺を見て大笑いするアトム達。

 だが……


「ダメでしょう。庭で叫んだら近所迷惑になりますよ。アンジェラが怒るじゃないですか」


 子どもの頃から聞き慣れた声がする。

 顔を上げるとそこには我が家で2番目の母親、メイママが立っていた。

 メイママは屈むと俺の頭をそっと撫でてくれた。


「重傷みたいですけどしばらく我慢してくださいね。先にリゼットの方を助けますからね」


「な、何よ。このババアいつの間に!?どこから来たのさ!?」


 キララの問いに対しメイママは答えることなく家の中へと歩いて行く。

 そして一瞬足を止めるとアトム達の方へ視線をやる。


「ああ、言い忘れました。『背後に注意』ですよ?」

 

 その言葉の意味はすぐに分かった。

 アトム達の背後にはこぶしをポキポキ鳴らす筋骨隆々な男、親父が立っていた。


「よく来たな強盗さん。歓迎はしないけどなッッ!!」


 親父の鉄拳がアトムに直撃した。


【フリーダ視点】


 今、わたしに出来る限りありったけの力を注ぎ込んで糸を出した。

 ナギも滝の様な汗を流しながら『声』で治療をしていた。けれど出血が余りに多すぎてリゼットさんの意識が戻る気配はない。


「ダ、ダメだ。これ以上はもう……声……が……」


「ナギ!?」


 ナギの声が枯れ始めた。どうやら魔力だけでなく喉を酷使するらしい。

 という事はこれ以上、治癒の『声』は出せない。

 そんな。それじゃあリゼットさんはもう……

 握っているリゼットさんの手が冷たくなっていく。


「そんな、ダメだなんて。間に合わなかったなんて……ごめん。ごめんホマレッ!!」


「いえ、間に合いました。よくここまで頑張ってくれました」


 そう言ってリビングに現れたのはリリィさんやリムさんの母親であるメイシーさんだった。


「えっ、メイシーさん?」


 彼女は腰に差した道具入れから数本の串を取り出すと素早くリゼットさんに差していく。

 するとリゼットさんの身体が大きく震えて跳ねた。


「気付け串。強心作用がある『ザックーム』の枝を加工して作ったものです。内部にはさらに強力な『ザックームの葉』エキスがしみ込ませてあって突き刺した相手に浸透します。さぁ、さっさと起きなさい!!」


「っがっ!!」


 血を吐くと同時にリゼットさんが目を開けた。


「メ……メイシー……」


「せっかく娘がおめでたなんです。孫を抱かずに死んでしまうなんて勿体ない事はダメですよ。さて、とりあえずこの木の実をかじりなさい。『生命の木の実』です。失った血の再造成を超促進させますよ。まあ、後で動けなくなるくらい反動がありますけど」


「うぇ……そ、それ無茶苦茶苦いやつだよ……ね!?」


 リゼットさんの言葉を無視してメイシーさんは砕いた『生命の木の実』を数個口にねじ込み吐き出さないように口を押さえて無理矢理のみ込ませた。


「うえぇぇぇ……鬼ぃ……」

 

「好き嫌いしてたら大きくなれないってよく子ども達にも言っていたじゃないですか。はぁ、それにしても派手に色々壊れてますね。この様子じゃ今夜のおめでたパーティーはお預けになりますね。残念。それにしても……お腹が空きました」


 いつもの調子に戻ったメイシーさんは何処からか取り出した串焼きをかじり始める。

 そして懐から飴を取り出すとナギの口に入れる。


「さあ『ハミングキャンディ』です。魔力の回復は無いですけど喉にはとてもいいですよ、噛まずにしっかり舐めていなさい。よく頑張りましたね、ナギ」


「おい、そこのババア。何やってくれてんだよ!せっかくあのバカを絶望させられると思ったのに!!」


 メイシーさんを追って入ってきたのだろう。

 賊の女がナイフを手にこちらへと向かってくる。

 メイシーさんは軽く視線をそちらに流すと自分が食べていた串焼きの串を投げつけた。


「がはっ!な、何でッ!身体が!?」


 串が刺さると同時に賊は固まったように身動きが取れなくなる。


「多分……ツボみたいなのをついたんだと思うよ……あの人、そういう人……だから」


 声が出せる様になってきたナギが説明をしてくれた。

 いや、ツボってまさか食べ終えた串で!?


「確かに私は孫がいるのでババアで合っていますけどね。ストレート過ぎて失礼じゃありませんか?語彙も少ない頭が悪そうなお嬢ちゃん」


「う、うるせぇぞ。賞味期限切れのババァ……がッッ!?」


 メイシーさんはダメ押しでもう一本賊に串を刺す。

 すると完全にマヒしたのか賊の女は喋ることも出来なくなってしまった。

 

「静かにしてください。あなたの声、ぶっちゃけ耳障りです。はぁ、お腹が空きましたね」

 

メイシーの戦闘力は何気に過去のシリーズ作品から凄まじい魔改造がされています。

まあ、孫も生まれて50代に突入してますけどね。

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