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第34話 憎悪の変身

今回登場の新キャラ2名は第1話に一瞬だけ登場しています。

身勝手の塊の様なキャラです。


【ホマレ視点】

 

 俺にとって一番大切な人。

 この世界に産み落とし、無償の愛を注いでくれた人。

 

 フリーダの『加速糸(アクセラレイト)』で加速バフを掛けてもらった俺は肺の空気が無くなるほどに全速力で駆け抜け自宅へ駆け込んだ。

 そしてキッチンに横たわるおふくろの姿を見つけた。


「おふくろっ!」


 駆け寄り抱き起す。

 だが呼びかけに返事はなくぐったりとするおふくろの身体の下には血だまりが広がっていた。  

 俺の手にはべったりとおふくろの血がついていた。

 見れば腹部から今も血が流れている。

 俺は近くにあったタオルを傷口に詰めて出血を抑えようと試みる。


「頼む、止まれ、止まってくれよ!!」

 

「あきらめた方がいんじゃない。そのおばさん、もうダメだよ」


 背後から声をがする。

 椅子にふんぞり返り嘲笑する男女が居た。


 真っ黒な髪の男性は頬に何やら紋様が刻まれておりテーブルの上のリンゴをかじっている。

 女性の方は足をテーブルの上に放り出していた。


「随分といい所に住んでるんだな。役立たずの分際でよ」


「何だ、お前らは?お前らがおふくろをこんな目に……」


「おふくろねぇ。相変わらず下らねぇことを言うんだな、クソ兄貴。変わってねぇな」

 

 俺はこの感覚を知っている。

 纏わりつくような悪意。人の尊厳を踏みにじっても何とも思わないその言動。

 そして『兄貴』と呼ぶ男女。まさか……


「アトム、それにキララなのか?お前ら、転生していたのか」


 クダンの予言。『お前と血を分けた者が、お前の一番大切な人を奪いに来る』

 ずっと忘れていた。レム家の姉さんや妹達意外にも俺と血を分けた者は存在する。

 そう、こいつらは『前世の弟と妹』だ。

 世界的に大流行した病気になった俺を医者にも連れて行かず倉庫に押し込めてそのまま死なせた連中。

 

「あんたが異世界転生するなんてねぇ。前世よりはイケメンになってるんじゃない?まあ、それでも中身があんただからマイナスだよね。残念」


「お前ら、何で……何でおふくろをこんな目に?」


「そりゃ、お前のせいに決まっているだろうが!!」


 アトムが吐き捨てる様に言った。

 その言い方はアトムが仕事のストレス発散の為に俺に対し暴力を振るう時と同じ言い方だった。


「お前があんなとこで死んじまっただろ?あの後、警察が来て大変だったんだよ。わけわかんねぇ捜査とかしてな。てめぇがくたばったのは俺らの責任者がどうだのとか抜かしやがってな。おかげで捕まるわマスコミの餌食になってドラマは降板させられるわ。本当に疫病神な奴だよ」


「あたしCM全部降ろされてグループも追放されちゃってさ。本当、どこまでも役に立たない兄貴だよね。しかもさ、付き合ってたカレシにまで捨てられるし。だからこんなの山にでも捨てときゃいいって言ったじゃん。どうせ誰も探さないような奴なんだし」


「待てよ。その事とこの人に何が関係ある?おふくろがお前らに何かしたっていうのか!?」


 何故、俺がここに転生したことを知ったかという疑問はある。

 だがそれよりも、おふくろに傷つけられる理由なんかがあるわけない。

 ふたりは顔を見合わせ小さくため息をつく。


「は?別に?」


 キララは『こいつ何聞いてるの、バカじゃね』と蔑むような視線を俺に送りながら言った。


「まあ、敢えて言うならさ。あたしらが破滅して最終的に死んだのってあんたのせいじゃん。そんな奴が転生していい暮らしをしているとか本当にあり得ないよね。だからさぁ、あんたをこの世に産んだ『罰』みたいなやつかな?」


 俺への当てつけ?

 それだけの事で、何の関係もないおふくろを傷つけたのか?

 孫が出来たって朗報を聞いた日に……きっと、きっと飛び上がる程嬉しかったはずなんだ。

 それなのに……

 

「クズはクズらしく底辺を這いつくばっていりゃいいのに調子に乗りやがってさ。身の程わかってるのかよ。お前のせいで俺達がどれだけ迷惑したかも知らないでへらへら笑いやがって」


 俺は、この世界に転生して、この家に生まれて、人生をやり直せた。

 神のスキル何か関係なく俺を愛してくれる家族に囲まれて幸せに暮らしていたんだ。

 前世で虐げられた事も、もう終わったことだってお前に進んでいたのに。

 

「ホマレッ!」


 遅れて飛び込んで来たフリーダとナギ謎の訪問者に一瞬戸惑うが俺の手の中でぐったりしているおふくろを見つけるとこちらに駆け寄って来た。


「ホマ!リズさんをこっちに!!フィリー!」


「わかった!治癒雷糸(ヒーリングライト)ッッ!」


 フリーダは糸を出すとお袋に伸ばし傷口を縫うように糸を通していく。

 更に俺からおふくろを奪い取る様にして引き寄せたナギは……


「ギガヒールソングッッ!!」


 回復効果のある『声』でおふくろを治癒し始める。


「あのさぁ、そこの姉ちゃん達無駄な事は止めとけって。どうせ助かりっこねぇんだから。それより俺と良いことでもしないか?」


 俺はげらげら笑うアトムにゆっくりと近づいていく。


「何だよ。怒ったのか?ソウル?」


 碧空が呼んだのは前世における俺の名前。

 その名前で呼ばれるのは嫌だった。ずっと学校とかでも名前の事をいじられて。

 何より、その名前に良い想い出なんかない。

 

「……その名前で呼ぶな」


「は?」


「俺はホマレだ。レム・ジェスロードホマレ。俺を大切に育ててくれた親父が悩みに悩んでくれた名前だ!許さない、お前らよくも俺のおふくろを!絶対に許さない!!!」


 腹の底から沸き上がってくる憎しみを抑えきれず呪詛を込めて吐き出す。

 同時に俺の身体から赤黒いオーラが沸き上がりデュランダルへと変身していく。

 何故か敵が目の前にいる状態で変身を果たしているがそんな事はどうでもいい。

 心の底からこいつらが憎い。こんな奴ら血を分けた者』だろうが関係ない。

 俺はこの力でこいつらを……


「殺してやる!お前ら二人とも、殺してやる!!!」 


【フリーダ視点】


 血まみれのリゼットさんをわたしとナギは必死に治療する。

 そんな中、ホマレが相手に激昂していきなり変身した。

 今までとは違い全身がひび割れたようになっており赤黒いオーラが噴き出している。


「ナ、ナギ!ホマレが!!」


「わかってるよ!明らかにおかしい変身だって。多分『闇落ち』でヤバイ奴だけど……だけど今はリズさんを何とかしなきゃ!心臓は動いてるけど『音』が段々弱くなってる!フィリーももっと糸を!!」


 ナギは再び『ギガヒールソング』を使いだす。

 恐らく相当消費が激しいんだろう。滝のような汗を流していた。

 わたしも更に『癒雷糸(ヒーリングライト)』を使いリズさんを治癒させていく。


「絶対に死なせないから!ホマを悲しませたりなんかさせないから、だから頑張ってよ、リズさんッ!!」

 

 ナギが治癒させつつ必死にリゼットさんに呼び掛ける中、背後で轟音がした。

 それはナギ曰く『闇落ち』したというホマレが窓をぶち破って賊二人を庭へと追いやった音であった。



------------キャラ名----------------


碧空(アトム)

年齢:???歳

職業:異世界転生者、元俳優、前世の弟


希星(キララ)

年齢:???歳

職業:異世界転生者、元アイドルグループメンバー、前世の妹



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