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第2話 じゃじゃ馬メイド娘※挿絵あり

2023/02/01 じゃじゃ馬メイドの挿絵挿入

 着替えを終え朝食の席に着く。

 今日の朝食はトウモロコシを粥みたいに煮込んでバターなどと混ぜあわせたものを分厚いパンの間に挟んだ『ドゥルシラ』という料理だった。

 これが出ているという事は今日の食事担当はおふくろなのだろう。

 ドゥルシラはおふくろの故郷、イリス王国の伝統料理でありおふくろの得意料理でもある。


 さて、我が家は一夫多妻で母親が3人いる。

 親父は『転生したらハーレム作りました』を実現した男だ。

 冷静に考えると一夫多妻なんてトラブルの元では無いのかと思いきや我が家では意外と上手く機能していた。

 どうやらナダ人の民族性と母親達の仲が元々良くてやや共依存関係にある事が原因らしい。 

 まあ、正確には他の2人がナダ人でおふくろはイリス人なんだが何せ上手くいっている。


 一度、一夫多妻を実現するなんて男の夢だよなって親父に冗談を言ってみたら少し遠い目をして『色々気を遣うんだよなぁ』と言っていた。

 まあ、実際に妻が3人もいると色々と気を遣う様な事もあるのだろう。

 

 更には夜の生活が中々過酷だったとぼやいていた。

 ハーレムでまず思い浮かぶのがそこなのだがやはり理想と現実は違うんだなと感じた瞬間だった。

 

 先ほど顔を合わせた姉と妹達はいずれも俺と母親が違う。

 俺と母親が同じなのは3番目の姉であるアリス姉さんだ。

 残念な事に最近遠方へ嫁いでしまい今はこの家に居ない。

 何で結婚したんだよという気持ちと幸せになってくれて嬉しいという気持ちが入り混じっていて複雑だ。


 こんな風に母親が違うものの血を分けたきょうだいであることに変わりはない。

 皆、仲は良いと言えるだろう。本当にあのクソみたいな『前世』とは大違いなのだ。

 俺はとても幸せ者だ。

 

「おはよう。コーヒーを淹れてやったぞ」


挿絵(By みてみん)


 幸せをかみしめていた俺の前にメイド服を着たじゃじゃ馬が湯気の立つカップを置く。

 俺は目を見開きじゃじゃ馬を凝視。そして心の中の声が飛び出した。


「うわぁ、似合わねぇ……」


 はっきり言って服装と口調が全く合致していないのだ。

 あれか?生意気メイド的なジャンルを狙っているのだろうか?

 そもそもメイド服は誰のものなのだろうか。明らかにこいつの持ち物では無さそうだ。

 そうなると我が家の誰かの持ち物を借りていることになるのだがこんな酔狂な格好をする者が果たしているのだろうか?


「似合わないって、随分と失礼だな。あんたのお母さんから借りたんだぞ?わたしもこういう服は初めてで勝手がわからないっていうか」


 おふくろぉぉぉぉっ!?

 酔狂な格好をする者の正体はまさか自分の実母であった。

 え?マジ?おふくろってこんな服を持っていたの!?

 フリフリでしかも胸元が少しドキドキするこの服をおふくろが……

 

 驚きが隠せない。まさか俺が生まれる前とか……例えば新婚時代にこんなものを着ていたとか!?

 何か混乱効果のある魔法をかけられた末の行為だろうかとも考察してみたが冷静に考えればおふくろならやりかねないと気づいた。

 

 何せ二人目の母親であるメイママが親父にプロポーズした際には負けじと追いかけプロポーズをその場でやらかしている大胆な人だ。実は結構な負けず嫌い。

 あまりに堂々たるプロポーズはその様子を見ていた周囲の人達から絶賛され市内には記念碑が建てられるというちょっと意味の分からない事態にまで発展した。

 そういう人だからちょっとした対抗心でメイド服を纏うくらいの事はやりかねない。

 

「あのな、それなら無理にそんなもの着るなよ。ていうかお前は何でまだウチにいるんだよ」


「仕方ないだろ。あんたの世話をしに来たはいいけど『特に何も困ってない』とか言われちゃってこっちが困ってるんだよ」


 困っているのはこっちだ。

 このじゃじゃ馬の名前はフリーダ。オンデッタ村という田舎の出身だ。

 断っておくが妹では無い。また、親戚だとかそういった間柄でもない。完全に赤の他人なのである。

 そんな女が何故我が家でメイド服を着てこんな事をしているのか。

 

 彼女は俺に憧れていた冒険者見習いであった。

 遠くに嫁いだアリス姉さんの様子を見に行った際に偶然再会したのだがそこで事件が起きた。

 その時に現れたモンスターに彼女は無謀な戦いを挑んだ挙句ピンチに陥ってしまったのだ。

 俺が咄嗟に庇った事で彼女は無事だったが、俺は大怪我を負ってしまった。

 まあ、『大怪我』というのは彼女視点で見た場合であり俺からすれば何のことのない傷だ。

 ただ、どうやらその後で他所の息子に大ケガを負わせてしまったという事で責任を取って来いと実家を追い出さされてしまったらしい。

 そして仕方なく『身の回りの世話をする』と称し転がり込んで来て今に至るわけだ。


 ただ、あの時に受けた傷については先にも述べたが俺にとって問題のないもの。

 家に帰った頃には完全回復していたくらいなのだ。

 そういうわけで身の回りの事も何一つ不自由ないので彼女の助けなど一切必要ない。


「困ってると言われてもな。何度も言うがこの通り俺は元気そのものだ。何の助けもいらん。だからさっさと村に帰れ」


「だからさぁ、帰りたくても帰れないんだよ!」


「はぁ、めんどくさいなぁ」


「めんどくさい!って何だよ!」


「そのままの意味だよ。煩わしいとかそういう意味だ。良かったな、新しい言葉を覚えたぞ?」


 言いながら俺はコーヒーに口をつける。

 美味い。すーっと鼻を抜ける香りがたまらない。

 ぎゃーぎゃーと喚くじゃじゃ馬が居なければより良いのだがな。


 この世界のコーヒーは名前こそ同じだが前世とは違う性質を持つ。

 まずそもそもの発祥が寒冷地で、身体を温める為に飲まれていたらしい。

 コーヒー豆も寒冷地適応の種で実際に体を温める効果のある成分が含まれているらしい。

 流石は異世界って感じである。


 とりあえずこのじゃじゃ馬については親父が親の所へ話をつけに行ってくれている。

 そう時間もかからずこいつを故郷の村とやらに返品出来るだろう。

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