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第28話 危険なフルーツ狩り開始

【フリーダ視点】


 アスカさん親子、そしてナギとの女子会をしているとそこへホマレが戻って来た。

 彼の隣には緑色の身体をした大柄なオークが居て。


「パパ~」


 ガサリ君がオークの方へと走って行き飛びつく。

 という事はあのオークがアスカさんの旦那って事か。


「おいおい、結婚したって聞いてたけどまさか相手がアスカさんだったとは……よくあの人を落とせたな、レヒ」


 ホマレは驚きの表情でアスカさんを見ていた。

 オークの男性レヒさんは『でへへ』と照れくさそうにしていた。


「え?知り合いなのか?」


「ああ。その人は“戦迅”のアスカ。異世界出身の上級冒険者だ。二振りの剣『ラプンツェル』と『スノーホワイト』を扱い相対した敵を屠っていく死神。アリス姉さんとは何度も死闘を繰り広げたことがある強者だよ」


「は?」


 アリスさんって確か遠方へ嫁に行ったっていうお姉さんだよな。

 死闘を繰り広げたって……


「懐かしいわね。あの時は内紛中の国で片方の勢力に雇われていてね。アリスは敵方の勢力だったからよくやり合ったものだわ。結局、ウチの雇い主が倒れて戦う理由が無くなっちゃったから戦闘は終わったけどね」

 

「その後、意気投合した姉さんがウチに連れてきて俺とはそこで出会ったんだよな」


「敵と意気投合!?」


 随分と驚いたがホマレの家ではよくあることらしい。

 この間会った隊長さん、つまりはナギの母親も昔はホマレの家族と敵対していたことがあるだとか。

 アスカさんはホマレからアリスさんの近況を聞き残念がっていた。

 

「そう。アリスは剣を捨てたのね。いつかはあの時の続きをしたいと思ってたけど……まあ、わたしも子どもが居るから命のやり取りは出来ないけどさ」


 いや、命のやり取りする気だったのかよ!?

 この人、時折見せる物騒さが怖いぞ!?


「アスカさんが死んじまったらオデもうだめだぞー」


「ママ―」


 旦那さんと子どもが悲しそうな顔をしたのでアスカさんは『はいはい、大丈夫だから』と慰めていた。何かいいな、ああいうの。

 わたしもいずれは…………っていうかそれってつまりはホマレとその……そうなるよな?


「あれ?どうしたんだフリーダ?顔が赤いぞ」


「え、いやその……」


 悟られたらダメだ。

 流石に今考えた事は恥ずかし過ぎる!

 と、そこまで考えて気づく。

 ナギがニヤッと笑いながらこちらを見ている。しまった!


「ふふふっ、フィリーったら可愛いね。何考えてんだろうね」


「う、うるさい!ていうか勝手に変なあだ名をつけるな!!」


「え?何かお前ら仲良くなってないか?」


「別になってないよー」


「そ、そうだ。なってない!!」


【ホマレ視点】


 何だかよくわからんがナギとフリーダが仲良くなっていた。

 本人達は否定しているが少なくともナギの方はあだ名で呼んでいる所から何かしら親近感を感じているのは確かだ。

 まあ、今から危険地帯に赴くわけだし仲が良い方がいいだろう。


 というわけで俺達はアスカさん達と別れてユピル平原へと足を踏み入れるわけだが……

 黒雲が空を覆い、稲光、そしてゴロゴロと鳴り響く雷鳴。

 子どもの頃、ウチも家族旅行でここに来たなぁ。あの時はリリィ姉さんが雷に魅せられて目を輝かせてたよな。その後自分の開発した技にここの地名をつけるくらいだからよほど気に入ったんだな。

 姉さんの技、食らってみたいなぁ。今度頼んでみようかな?


「な、なぁホマレ。この落雷、大丈夫なのか?」


「ここは高い木とかが多いから不用意に武器を掲げたりしなけりゃ落ちてこないさ。念のために雷避けコートを羽織ってるわけだし」


 ユピル雷原で動くにあたって雷避けコートは重要だ。

 万が一雷が落ちて来てもこれがあればダメージはかなり軽減される。

 念のためにAランクの高級品を購入しておいたからな。


「むしろ気をつけないといけないのはあっちの方だからな」


 俺は崖の間を通る狭い道を塞ぐように立つ丸々と太った魚みたいなモンスターを指さす。


「さ、魚!?」


「ここはモンスターの巣窟。いずれも雷への強態勢を持ち雷原内を動き回る連中だ。例えば視界の先に居るのはゲスゲスという雷から身を守る特殊な油を身体から分泌する陸棲の魚類だ。さて、俺も働くけど言い出しっぺでここまで連れてきた聖女様、わかってるよな?」


 ナギは肩をすくめる。


「もう聖女は辞めてきたから、一応元聖女なんだけどな。まあ、いいか。それじゃあ、やりますか」


 肩を回しながらナギが前に出る


「なぁ、ホマレ。ナギって『声』を扱うんだよな?その、『声』であんな強そうな相手を倒せるものなのか?」


「まあ、見てなって」


 フリーダが怪訝そうな表情で見守る中、ナギは息を吸い込み『あー』と美しい声で歌いだす。

 そして次の瞬間、ゲスゲスの体半分が吹き飛んだ。あの技、以前見た時より威力上がってないか?


「え!?」


「ランチャーソング。ちょっと狙い外れちゃったけど倒せたから問題はないよね」


 フリーダは何が起きたかわからないといった表情で俺に解説を求める。

 まあ、いきなり敵が爆ぜるあの光景はちょっとした怪現象だから仕方あるまい。


「声を増幅して収束、それをエネルギーとして叩きつけで振動であらゆるものを粉砕したのさ」


「ああ、なるほど……それでさっきのカフェでも……って全然わからんわ!!」


 一応、何が起きたかを端的に説明してやったのだがツッコミが帰ってくることになった。


「要するにナギが口から出す音って超すごい破壊力みたいな?って事だよ」  


 そう。要するにはそういう事なのだ。ナギは『超すごい』音による攻撃で敵を粉砕している。

 魔法と違い音は見えないので何が起きているか周囲の人間にはわからない。そして魔法防御も貫通するといった優れものだ。その便利さは我が家の人間が扱う『ビーム』に近いものがある


 陸棲魚類を撃破するとその血の臭いにつられ大小さまざまなモンスターが崖の上に集まってきた。


 

「あれれ、そんなにナギの歌聞きたいんだね。仕方ないなぁ……スプリットソング!!」


 口から放った魔力を持つ歌声が拡散し散らばっている敵を次々に粉砕していく。

 ああ、これって俺が別に動く必要ないパターンだな。


「えぇぇっ!?嘘でしょ!!?」


「目の前で起こっていることは現実だ。『静寂の聖女』ウォーグレイブ・ナギ。イリス王国が抱える聖女の中でも随一の戦闘能力を誇る。彼女が歌った後に訪れるのは敵対者の命が消えた静寂なる空間。故に『静寂の聖女』って呼ばれる危険人物さ」


「ちょっとホマ!人の事を危険人物とか酷くない?言っていいことと悪い事があるでしょ!まあ、今のは言っていい事だけどね」


「いいのかよ!!」


 フリーダが思わずツッコミを入れていた。なかなかいいタイミングだ。

 初めて会った時も見事なツッコミを披露していた。

 こいつ、もしかしてツッコミの才能とかあるんじゃないか?


「さて、こういう戦闘力だからモンスターとの戦いは安泰さ。それじゃあ、黒雷イチゴを探しに行こうか」


「な、何かフルーツ狩りって……いや、ある程度は予想してたけど思ってたのと違うぅぅ!!?」


 叫ぶフリーダを苦笑しながら見ていた俺はふと、雷原の奥の方へ視線をやる。

 何だ、この嫌な気配は?

 ナギの『レーダー』にはひっかかっていないみたいだけど、『何かが居る』ぞ?

 それもヤバイ奴が……



---------モンスター名鑑---------


ゲスゲス

種族:陸棲魚類

体長:2m50cm

危険度:中級Lv2


ユピル雷原に住む丸々と太った陸棲の魚。

体表は絶縁性の油で覆われている。

油は素材にもなり小瓶1個分で約1500ゴルトになる。

強力な個体からは更に上質な油が採れるらしい。

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