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第21話 ゴーレム出現

【ホマレ視点】

 

 旧カリスト領はかつて聞いていた通りモンスターの巣窟だった。

 ただ、大したレベルのモンスターも居ないのが救いだ。


 モンスターの危険度は初級・中級・上級・最上級と4つに分類されている。

 最上級以外はそれぞれ更に10のランクに分かれており、親父達が結婚する前の時代からさらに細分化されているらしい。

 

 旧カリスト領で出て来るモンスターの危険度は高くても初級Lv6。

 目の前でフリーダが戦っている『6ツ目ハト』がLv4程度だ。

 鋭い爪でホバリングしながら襲ってくるのだが……


「よっと!」


 フリーダはそれを華麗に避けて槍を叩き込み撃破していく。

 ゲームで言う所のジャスト回避。しかも反撃に転ずるまでも無駄が無い。

 こいつの隠れた才能ってやつだな。

 この辺のモンスターなら十分対応できる…………と言いたいところだが以前の事もあるからな。

 彼女自身の体質が何かを『引き寄せる』事も十分考えられる。

 

「なぁ、この気持ち悪いハトって倒した後はどうするんだ?」


「ああ、えーとな。こいつは肉がそこそこ美味いから肉屋にでも持っていけば売れるし何なら持って帰って食材として活用すればいい」


 俺は解体用のナイフで素早く肉を一部貰い簡単に処理すると持ってきていた保冷用のボックスに収納する。


「へぇ、解体も素早いんだな」


「のんびりやってたら血の臭いに寄ってくるモンスターと鉢合わせしてしまうからな。それに、この手の解体はおふくろ仕込みさ」


 おふくろはモンスターからいい素材とか取り出すのが昔から得意な人だったからな。


「さて、と。地図によるとこの先に見えているのが旧カリスト伯家だな」


 まあ、地図なんか見なくてもこの辺りじゃ明らかに他より大きく立派な建物だからあれで間違いないだろう。


「なぁ、ホマレ。納品する『ローゼンドール』って貴重な品なのか?」


「いーや、割と大量生産されている人形さ。今でも店に行けば1万くらいから手に入る。依頼主はかつてあの家に住んでいた娘だ。暴走実験の際に避難したが想い出の品であるローゼンドールは置いて行ってしまったらしい」

 

 その辺で売っているものの『想い出』にある『同じもの』はそこにしかないからな。

 今も屋敷内に存在しているかはわからないが出来れば持ち主に返してあげたい。

 そんな事を考えながら屋敷に近づくと見覚えのある女性が屋敷から出てきた。


「なぁ、ホマレ。あの人って……」


「ああ。そうだな……」


 その女性は以前、ミラ湖で出会った女性。

 唐突に現れて俺に寄って来たやつだな。

 こんな所で出会うって事は……厄介な事になりそうだな。


「ウフフ、まさかまた会えるなんてね。かっこいいお兄さん」


「あんた…………確かミラ湖で会ったな」


「ええ、お久しぶりねお嬢さん。何だか私達縁があるみたいね」


「その様だな」


 俺はいつでもフリーダを守れるよう警戒を強める。

 こいつはまだ気づいていない様だが、何か嫌な予感がする。

 何せ前回はこの女が現れた直後にモンスターが現れた。

 今思えばあの時、この女は俺達をあの場から『離そうとしていた』のでは無いか。

 そして再会したのは魔道実験で人が住まなくなった土地。

 ある可能性が浮かぶが、ここは穏便に済ませられるならそうしたい。 

 

「なぁ、あんたこの屋敷に住んでいるのかい?実はさ、俺達この家に昔住んでいた人からの依頼で『ローゼンドール』って人形を取りに来たんだ。あんたの生活を邪魔する気はない。もしその人形があるなら譲ってくれないか?」


「ローゼンドール……ああ、あの人形、ね。確かに古臭い人形があったわね。ちょっと待っていて」


 キュレネは屋敷の中へと戻っていく。


「やったな。これで後は人形を受け取ったら依頼達成だ」

 

 喜ぶフリーダだったが直後、玄関付近に5つの魔法陣が発生。

 そこから剣を持った一つ目のブロンズゴーレム達が姿を現した。

 いや、まあ。何となくそうなる気はしてた。


「ええっ!?」


「チッ、やっぱりか。フリーダ、気をつけろ。こいつらはさっきまでのモンスターより強いぞ!!」 

 

 恐らくは警備用に調整されたブロンズゴーレム。

 モンスターなどが多く出る土地で護衛用などに使役されるので必然的にそれなりの強さが必要だ。

 鑑定スキルが無いので確認できない平均すると初級のLv7~9程度の実力が相場だ。


「いいか、フリーダ。こいつらは防御力が高いから気をつけろよ。関節を狙うんだ!!」


「わかった!!」


 フリーダが槍を構えると穂先が発光を始める。

 どうやら武器に付与されている雷属性の力を解放したらしい。


「でりゃぁぁぁぁ!!」


 雷の力が乗った突撃で4体のゴーレムがバラバラになる。

 うわ、攻撃力エグイなあれ。


「…………いや、俺のアドバイス!?」


「いや、その……関節を狙おうかと思ったけど何というか狙いをつける前に、な?」


 こいつが雷属性の攻撃をするのは武器に仕込まれた発電核のおかげでなんだが調べれば恐らく適性もあるのだろう。

 何だろうか。雷属性使いというのは細かい事が苦手な性格だったりするのか?

 というのもバリバリの雷属性使いとして我が家には四女のメールという好例が居る。

 あいつは細かい事を考えるのが苦手で雷を纏いながら力任せに敵を薙ぎ払っていく。

 まあ、そこが可愛いのだがな。待てよ。ということは即ちフリーダも可愛いという事になってやはり俺がこいつに抱いている感情は『愛情』ということに……うむ、奥が深い。


「まあ、結果オーライってやつかぁ」


「ホマレ!後ろっ!!」


 フリーダが叫ぶ。

 いや、わかってるよ。俺の背後でブロンズゴーレムが剣を振り上げてるんだよな?

 俺は敵の攻撃を避けるとその関節部目掛け正確に連撃を叩き込んでいく。

 ゴーレム系統はダンジョンを攻略していた頃嫌って程相手したからなぁ。


「経験って無駄にならないんだな」


 バラバラになったゴーレムを見下ろしながら呟いた。

 神に貰ったスキルは返却してしまっているものの経験はしっかり残ってくれていた。


「くそー、あの女。急にゴーレムをけしかけてくるだなんて」


「まあ、ある程度予想はしていたけどな。思う以前戦った巨大ウナギもあの女の仕業なんだろうな」


「ええっ!!?そ、そうなのか!!?」


<その通り。あの子は私のペット!あの湖を実験場に性能テストをしていたのにあなた達が邪魔したおかげで費やした歳月が無駄になったけどね>


 声が響く。

 そして突如屋敷の屋根を突き破り大小さまざまな形をしたゴーレムが4体出現。

 それらが変形しながら組み合わさりボディのあちこちに剣状の棘が生えている巨大なゴーレムになっていく。


<ウフフフ、これが私の最高傑作、『剣棘(けんきょく)(まと)うアイアンゴーレム』よ!!>


「な、何だよ。あれ!?」


 合体変形ロボ……いや、ゴーレムだと!?


「や、やべぇ……こいつはマジで……」


「ホマレ?そんなに?」


「やべぇ、無茶苦茶かっこいいーーーーー!!!」

 

 男の夢!合体変形ロボじゃねぇぇぇぁかぁぁぁぁっっ!!!


「ええっ!?ホマレェェェェッ?」


---------モンスター名鑑---------


6ツ目ハト

種族:鳥魔獣系

体長:0.6m

危険度:初級レベル4


目が6つあるハト。ホバリングしながら鋭い爪で攻撃する。

肉は低カロリーかつ高たんぱく。



ブロンズゴーレム

種族:魔法生物系

体長:1.7m

危険度:初級Lv8 ※本話登場の個体


キュレネが召喚した警備用ゴーレム。剣を武器に戦う。

実は雷属性が弱点。



剣棘纏うアイアンゴーレム

種族:魔法生物系

体長:7.8m

危険度:中級Lv10


キュレネが登場し操るアイアンゴーレムの特殊個体。

4体のゴーレムによる変形合体機構という男の夢を搭載している。


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