第15話 ホマレは口をふさいだ!!
【ホマレ視点】
さて、これからどうしたものか。
今回のバイコーン襲撃で確定したが彼女はどうも様々な現象を引き寄せてしまう体質らしい。
隊長が言うにはかつて俺の後ろをついてきていた時には無かっらしい。
後天的に目覚めた何かだが俺が関わっている可能性は大いに高い。
「なぁ、ホマレ。あんた何であんな恰好をしてるんだ……」
「そんな事より、お前に聞きたい。この間や今日みたいにモンスターが急に乱入してくるとかいう事って俺と再会するまでであったか?」
「そ、そんな事って!いや、まあ無かったと思うけど……ていうかわたしも答えたんだからあんたもこっちの質問に答えてくれよ!!」
となるとやはり俺が何かしら影響を与えている?
だとすれば俺がこいつから離れれば……いや、既に覚醒しているなら俺が傍に居なくてもこの先も何かしら厄介ごとを引き寄せかねん。
「ちょっと聞いてるのか!?」
うるさいなぁ……今考え事をしているのに。
とりあえず俺が離れるのは責任放棄になってしまう可能性が高い。
それは正直人としてどうかって感じになるし妹達もそんな俺は嫌いだろう。
「おい、ホマレ!答えろって!!何を黙ってるんだ!!!」
今、軽く混乱してるんだ。
頼むから静かにしてくれ。
「おい!いい加減にしないとわたしだって堪忍袋の緒が……」
フリーダが俺の胸倉を掴んだ瞬間だった。
とりあえず静かにして欲しい、という想いから俺は唇で彼女の口を塞いだ。
「っ!? んっ……んむ……んんっ!!」
「……ぷはっ。ちょっと悪い、少し考えをまとめるから待ってくれたら俺としても助かる」
「ぁっ…………………はい」
ああ、良かった。
きゃんきゃんうるさいのが収まったな。『はい』という返事が随分と可愛らしい声だったが……
とりあえず考えをまとめよう。
彼女の能力がどの様なもので発現経緯がどうであれ俺が関わっている可能性があるなら放ってはおけない。
そんな真似をしていては愛する姉や妹達に顔向けが出来ない。
もし制御できるようになるならその方法を探そう。
そして傍に居て彼女に降りかかる火の粉を払ってあげなくてはいけない。
俺がデュランダルだということを認識出来ているのも何かの縁なのだろう、
「これはやはり『責任』を取らないといけないな」
「っ!!せ、責任を!?」
「そうだな、うん。やはり傍に居るのが一番だろう」
「そ、それって…………あ……えっと……確かに舌も少し入れられたし……やっぱり今のってそういう……」
「フリーダ、聞いて…………く……れ?」
あれ?
何でこいつの顔がこんなに赤いんだ?
まさか病気?既に新たな火の粉を引き寄せていたのか!?
でも何かもじもじしているな?妹達ほどではないがかわいい仕草だな。
「んんっ!?」
いや、待てよ。そう言えばさっき何かあったな。
そうだ。えーと確かこいつがあんまりにも横で吠えてて考えがまとまらなかったから口を塞いでしまおうと思って……………………
やべぇ、俺ってば今、こいつにキッスしたわ。しかも割と大人がするアレを。
あれだよ。昔モテまくって調子に乗ってた時やってたあれがつい出てしまった。
横でキャーキャー言ってる女の子とかの唇塞いで『ちょと静かにしててくれない?』とかさ。
あぁぁぁぁぁ!!今思い出しただけでも恥ずかしくて死にそうになる。
だって前世では全然モテなかったんだぞ!?それが急にモテまくったんで反動が酷かったんだよ!!
ちなみにあの頃は単純な『キス』だったのだが何やかんやあった結果、こいつには『大人のキス』をかましてしまった。
俺の『大人のキス』を教えた『あいつ』の顔が一瞬脳をよぎった。
いや、今重要なのはそこじゃない。
現実を客観的に見るんだ!俺は何だ?
17歳の少女の唇を無理やり奪って舌まで入れた23歳警備隊員。
うん。これは普通に犯罪だよ。
「あの……その……えっと……フリーダさん?」
「初めて……だったんだ」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
やっちまったぁぁぁぁぁぁぁ!!
こんなのどう言い訳したらいいんだよ!!
俺のバカ野郎がぁぁぁ!!!
□
その後、一緒に行動をして家に帰った俺達だが気まずさのあまり最低限以外の会話は無かった。
夕食の時、フリーダはほとんど言葉を発せず終始うつむいていた。
そして夕食を終えるとすぐに部屋に籠ってしまった。
うん、これはあれだよね。
傍から見ても怪しさ爆発だよね。
「ねぇ、ホマレ。帰って来てからフリーダちゃんの様子がおかしいんだけど何かあった?」
おふくろの質問に俺は心臓がバクバクと激しく脈打つのを感じていた。
「ええっ!?い、いやその……な、何で俺に聞くのかな?」
自分でも声が裏返っているのがわかる。
「だって、一緒に帰って来てたでしょ?窓から見えてたよ」
「へー、あー、そ、そうなんだぁ……へー」
何で一緒に帰って来ちゃったかなぁ。
もう色々とダメな方向に進んでいってるぞこれ。
「ホマレ、お母さんの顔をよく見て。視線をそらさないで。何か大事な事、隠してるよね?」
うっ……ヤバイ。
誤魔化し切れない。だけどあの事は……あれは……
「やっほー。ホマレ君。忘れて行ったお弁当箱、洗って持ってきてあげたよ」
そう言って玄関を開けて普通に入ってきたのは元殺人鬼の隊長だった。
「イシダ……何で君がこの子のお弁当箱を?ていうか鍵かけてたはずだけど……」
「あはは、私にかかれば鍵くらい簡単に開けられるよー」
普通に犯罪だからな、それ。
「実はさ。彼半休を使って飛び出していったんだけど、その時お弁当忘れていったんだよね。男の子ってそういうところあるよね―。それで届けてあげたの」
「半休?そうなの、ホマレ?」
更に話がややこしくなった。
「えーと、まあ、色々ありまして」
細心の注意を払うんだ。
言葉を選ぶんだ。そうすれば最悪の事態は避けられる。
「私が彼につけていた監視虫によるとフリーダちゃんを森まで追いかけて行ってそこでしちゃったんだよね?」
細心の注意が一撃で死んだ。
「うわぁぁぁ、ば、バカぁぁぁl!!」
「ホ、ホマレ…………!?え?森で……追いかけて行って………し、しちゃった!?」
「お、おふくろ!落ち着いて聞いてくれ。実は……」
「初めてだったんだよね、彼女。やるねぇ、ホマレ君」
「あんたは黙っててくれ!話がどんどんややこしくなる!!」
「うわぁぁぁ、息子がついにウチで預かってる他所の女の子に手を出したぁぁ!!」
叫んだおふくろは白目を剥いて倒れてしまった。
「おふくろ!?おふくろぉぉぉ!!?」
「あれれ?私、嘘はついてないんだけどなぁ」
「絶対こうなるってわかってやっただろぉぉ!!!」