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最終話 やっぱりこれからもシスコン

遂に迎えちゃった最終回。

バレッタの結末にはギリギリまで悩みました。

【ホマレ視点】


 星歴1254年1月11日。

 あの事件から4年が経過しようとしている。


「来たよ、おふくろ、親父。あっちで仲良くやってるか?親父、おふくろを困らせたりしていないか?」


 あの事件から半年ほどしたある朝、親父は朝起きて来ずベッドの中で亡くなっているのが発見された。

 いや、ある意味リアルだけどさ、そこはもうちょっとドラマチックにしてくれよ。

 アンママ達や姉さんがパニックになって物凄く大変だったんだぞ?

 まあ、ある意味親父らしいけどさ。


 事件の後、メールはグレースと一緒にイリス王国へ帰っていった。

 別れ際に『ごめん』と何度も謝っていたが妹がした事だ。全面的に許す!

 旦那は結局離縁を認めず息子と共に待っていてくれたらしい。

 妹よ、いい人に出会えたな。


 両親に祈った後、俺はもうひとつの石碑に目をやり傍らに立つ娘の頭に手を置く。


「ほら、見てくれ。俺達の娘もこんなに大きくなったんだぞ?」


「……ここにママが眠ってるんですか?」


 分家の石碑には『レム・バレッタ 1217-1251』と刻まれていた。

 1年間だけ家族として同じ時間を過ごした女性。

 

 事件の後、名家ゴンドールは完全に没落した。

 瀕死の重傷を負っていた彼女は密かに我が家に『5人目』として迎えられることとなった。

 これに関しては俺の意見は完全に無視され、フリーダ達が半ば強引に決定して婚姻届が出されていた。女性の団結力が怖い。

 まあ、深層意識の中であの戦いを見ていたから実際の所、俺も反対する気は無かったけどな。

 むしろナダ女性からすればカッコ悪いのも承知の上でこちらから懇願させてもらったくらいだ。


 闘いの後遺症により彼女が永く生きられないという事は決まっていた。

 そんな彼女が望んだこと、それは『自分の子どもを腕に抱く事』だった。

 1年後、生まれて間もない娘を腕に抱き、その温もりに安らぎ家族に見守られながら彼女は静かに息を引き取った。 


「そうだぞ。レム・『バレッタ』・マチルダ。自分の命を懸けて皆を守るために戦った誰よりも勇敢な女性がお前の母親だ。誇りに思いなさい」


「何で急にフルネームを?いつもみたく『マリィ』でいいのに……難しい事はよくわかりません……でも、兄さんや姉さんもママを凄く褒めてますしママが凄い人だって事はわかりました」


 そうだ。今はそれでいい。

 お前の中にも光の力は受け継がれている。

 いつか助けを必要とする人が現れた時に手を差し伸べてやってくれ。


「帰ろうか、家へ。家族の所へ」



 帰りがけ、銀髪の少女とすれ違った。

 あの娘は見た事がある。

 確かクリスと同じ孤児院出身で最近冒険者になった……リン……とかいったか。

 危なっかしいところがあるとクリスが随分と気にしていたな。


「パパ、どうしました?」


「あーいや、何でも無い」


 何処か寂し気な少女の背中を見送りながら娘の手を引き歩き出した。


□□


「マリィちゃん、お帰りなり!」


「ベル姉さん、ただいま」


「寒かったでしょ?手を洗ったら暖かいとこで遊ぼう!」


「はい!」


 家に帰るとベルがマリィの手を引き他の子ども達の所へ連れて行く。

 すっかりお姉さんになったな。


 自分の行為でバレッタが深い傷を負った事をベルはずっと気にしていた。

 そんなベルに彼女は『生まれてくる妹をお願い』と優しくほほ笑んでいた。 

 

 その言葉に従いベルは彼女の忘れ形見である妹の事を誰よりも気にかけている。


「ほら、コーヒーを淹れてやったぞ」


 いつかの時の様にフリーダがコーヒーを淹れてくれた。


「ありがとう」


 家に転がり込んだ時は悪態をついたものだが今では素直に感謝の言葉が出る。


「ホマ、お昼は『スペーンフ・オムレツ』にするね」


「ナギ、わたしの聞き間違いをそのまま採用するのは止めてくれ。恥ずかしいだろ……」


「えー、いいネーミングじゃん」


 ナギが舌を出す。

 こいつとも色々あったよなぁ。未だに『はじめて』の時の事をチラっと言われて恥ずかしかったりする。


「はぁぁ、やっぱりこの季節は最高ですね!この澄んだ空気、目がしっかり覚める冷気、そしてあたしは超元気!」


「セシル、それ毎年言ってますよね?それで夏になったら『溶けるぅぅ』ってだれるんだから……」


 寒空の中、洗濯物を干しに行ってテンションが爆上がりしているセシルとそれに呆れるクリス。

 セシルの明るさにはいつも助けられる。相変わらず『3』に執着はするけど俺のせいだしなぁ。

 クリス、俺が助けた時のあの悲痛な表情をして沈んでいた少女がここまで明るくなってくれて、本当に良かった。男の子と勘違いしててごめんな。


 壁に飾られている『写真』に目をやる。俺達の、絆。

 ベッドから身を起こす状態で俺、フリーダ、ナギ、セシル、クリスと共に微笑むバレッタの姿が収められていた。

 短い間しか一緒に居られなかったが今の俺達があるのはお前のおかげだよ。


「あのさ、お前達と出会えて本当に良かったよ」

 

 俺の言葉に4人は動きを止め微笑む。


「ガキの頃は親父達や姉さん達、妹達以外は必要ないと思っていた。でもお前達が居てくれたから俺は変われた。俺の人生はこの世界でしっかりとやり直すことが出来た。本当に幸せになれたんだ」


 本当に感謝しかない。


「ありがとう。俺は本当にお前達の事を愛し………」


 その時、素晴らしくかぐわかしい匂いが鼻腔に飛び込んで来た。

 言葉を途中で切り上げ立ち上がる。


「これは……リリィ姉さんがこっちに向かっている!姉さん、今弟が迎えに行くからね!!」


 姉さんを迎えるべく足早に玄関へ向かう。

 そんな俺の足をフリーダが踏みつけ、ナギが脳を揺らし、セシルがでこチョップをし、クリスが尻を叩いた。


「「「「このシスコンッッッ!!!」」」」


-Fin-

ご愛読ありがとうございました。

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