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第140話 力持つ者かくあるべき

【フリーダ視点】


 わたし達を助けに来てくれた助っ人たちにより次々と叩き込まれる強力な攻撃がダークアグラデルに決まっていく。


「これは………やったのか?」


 だがホマレの治療をしながらナギが首を横に振った。


「ダメ。まだ生きてる!」


 爆炎の中から悠然と姿を現したダークアグラデルの身体には先ほど激突した結晶体の破片が刺さってこそいるがダメージは全くない様子だった。


「こんなものか……返すぞ!!」


 ダークアグラデルの身体からエネルギーが放出される。

 ナギのお母さんがまともに直撃を受け変身解除され倒れた。

 接近し放たれた裏拳をアスカさんが剣で防御したもの剣を破壊されそのまま壁に叩きつけられてしまう。

 グレース陛下に対しては振り下ろされた剣の一撃で鎧が破壊されそのままダウン。


「まだまだぁ!!」


 組み付こうとしてメール義姉さんに対しては素早く後ろに回り自身の両腕を身体の前でクロスする形にロックされる。


「お前が一番厄介だ」


 そのまま義姉さんと一緒に後方へジャンプするとそのまま先ほど自分が叩きつけられた結晶体の残骸に叩きつける。


「うっ……」


「お前の一族はじぶといからな。だから念を入れて……」


 ぐったりしている義姉さんを抱えると飛び上がり逆さに向けると両脚を脇に抱えさらに両腕も後ろにねじり上げ後ろでロック。更には自身の脚で頭を踏みつけるような形で顎から床に叩きつけた。

 全てのホールドを解除した離れた後、義姉さんの身体の下から血だまりが広がる。


「身体を硬化させて致命傷を避けたか。だがこれで、戦闘不能は避けられん」


 ダークアグラデルの言う通り義姉さんはピクリとも動かず戦闘不能は必至となった。


「これで残るは出来損ないただひとりというわけだ」


 悪魔がにやりと笑う。

 絶望的な状況とは正にこの事だった。

 立ち尽くすデュランダル=バレッタ隊長にダークアグラデルは語り掛ける。


「どうだ、今からでも我の側につかんか?」


「え?」


「お前の根性には正直驚かされた。お前に対する認識を改め、有能な娘であると認めてやろう。我の中に居るお前の父もそう言っている」


「父が……私を?」


 震えていた。

 今まで散々蔑まれてきた彼女に対する初めての賛辞なのだろう。


「親というのは子の成長を喜ぶものだ。我と父親、そしてお前で協力してこの国を守っていこうではないか」


 客観的に見ればそれは悪魔のささやきだ。

 だけど彼女にとっては……


「ひとつ条件がある。そこに居る羽虫どもをお前の手で殺せ。そいつらはこの国に害をなす禍となる。つまり、我らの『敵』だ」


 その言葉に彼女が無言でこちらを向く。

 

「私達の敵……」


 ダメだ。このまま敵に取り込まれてしまう。

 わたし達は慌てて治療する手を止め子ども達を抱き寄せる。


「この人達を殺せば……私は認められる?」


「そうだ。お前は自慢の娘だ。さぁ、我と共に未来を守っていこうではないか!さぁ!」


 彼女は拳を強く握りしめ、言った。


「舐めるな」


「何ッ!?」


 再び悪魔の方へ向き直ると彼女は駆け出し握りしめた拳を顔面へ叩き込んだ。

 無茶苦茶に拳を振るう彼女に対しダークアグラデルも拳で反撃するが彼女は倒れず光の力を剣にして具現化。

 ダークアグラデルの剣と激しく切り結んだ。


「大局を見ろ!たかが一家族、数人の犠牲でこの国を守れるというのだ。それを……」


「貴様の言うその『たかが』だって私達が守るべき人達である事に変わりはない!私を舐めるなッッ!!」


「本当にお前は、何処まで物分かりが悪い……」


「悪くて結構!私は、自身の責務を果たすッッ!!」


 彼女の身体が金色に輝くような光を放つ。

 叩きつけられる剣は勢いを増して段々と悪魔を圧倒していく。


「凄い……隊長さん……何て美しい……」


 クリスが呟いていた。


「ユズカ、瞼に焼き付けなさい」


 セシルが娘の肩に手を置きながら言った。


「あれがお父様をはじめとして力を持つ者のあるべき姿。弱き人の為に力を振るうあの背中こそが真に強い人の姿です!!」


 そのアルやホクト、怯えていたカノンやベルも真剣な表情で戦いを見守っていた。

 クリスに預けられずっと泣いていたタイガさえも泣き止み戦いを見つめていた。


 やがて、アルが喉から声を振り絞り叫ぶ。


「頑張れ……」


 それをきっかけとして子ども達が口々に声援を送り始めた。


「頑張れ、隊長の姉ちゃん」

「頑張って!」

「負けないで!」

「頑張るなり!!」


 わたし達もホマレの治療を再開しつつ声援を送りはじめた。


「馬鹿な!こんなちっぽけな声援で力が増すだと!?何だというのだお前の力は!?何だこの理不尽な力は!?」


「理不尽でも何でもないッッ!この声援が、人の想いが力になる!」


 隊長の攻撃がダークアグラデルへ当たる様になってきた。

 そんな時、ベルが他の子達よりさらに前へ出て大声を張り上げた。


「頑張って、デュランダルッッ!!」


「ふざけるなッ!!」


 攻撃を弾き体勢を崩させるとダークアグラデルが彼女の脇をすり抜けベル目掛け走り出す。


「こんなちっぽけな子虫がぁぁぁっ!!」 


「ベルッッ!!?」


 クリスが悲鳴を上げる中、ダークアグラデルが突きを放つ。

 しまった!間に合わないッ!!


 わたし達が最悪の展開を想像する中、その切っ先はベルに届くことは無く間に割り込んだ隊長の身体に吸い込まれていった。


「あああっ!!」


 鳩尾を貫かれ苦痛に呻いた隊長の身体から光が消える。

 立ち尽くすクリスの代わりにわたしがベルに駆け寄って後ろに引き戻すと同時に目を覆う。


「フンッ、そんなちっぽけな子どもを庇って致命傷を負うとは。やはりお前は出来損ないだな」


 そんな、ここまで来たのに。

 敵を追い詰めたっていうのに、わたし達がちゃんと子ども達を見れていなかったせいでこんな……


「ククク、やはり『たかが』を見限れなかったことがお前の敗因となったわけだ」


「いや………これでいいッッ!!」


「何ッ!?」


「ようやく……捕まえたッ!」


 彼女は剣を握るダークアグラデルの腕に自身の腕を絡めてロックした。

 もう片方の腕をダークアグラデルの胸に当てる。

 明らかな動揺がこちらにまで伝わってきた。

 そして……再び全身が輝き全身全霊の力で放たれる零距離のエネルギー派がダークアグラデルへ叩き込まれる。


「なぁぁぁぁぁぁぁ!?バカが!この出来損ないがっ!出来損ないの分際で!!」


 それは敵が初めて放つ『恐怖』の言葉だった。


「クソッ、クソォォ、離せエェェェェェッ!!」


「離さないッ!この命に代えても絶対に!私が負ければ、私に力をくれた小さな子どもを一生泣かせることになる。そんな真似、絶対にさせるものかッッ!!」


 わたしの腕の中でベルが泣きじゃくっていた。


「ここに来てまだそんなちっぽけなことを!理解できん!離せ、離せぇぇぇぇ!!」


 理解不能な恐怖のあまり叫び拳で何度もデュランダルBの顔面を殴りつける。

 それでも攻撃は止まず更にダークアグラデルはめちゃくちゃに暴れた。

 やがてデュランダルBの仮面が砕け、血まみれになったバレッタ隊長の顔が覗くとダークアグラデルの動きが止まる。完全に気圧されていた。


「確かにお前から見たらちっぽけかもしれないな……」


 背後で声がした。

 この声は……


【ホマレ視点】


 出会い、別れて行った人たちの映画館。

 スクリーンに映る戦いを見ていた俺は立ち上がると言葉を紡いだ。


「おふくろ、俺は行くよ」


「そうだね。いつまでも寝てるなんてカッコ悪いことしちゃダメだよ。君を待ってるコ達が居る。そろそろ叱ろうかと思ってたところだったんだ」


 おふくろも立ち上がるとこちらを向き微笑んだ。

 はは、叱られてみるのも良かったかもしれないな。


「ホマレ、ボクは一度は仲間を裏切り道を踏み外しかけた。だけどこんなボクを家族として受け入れてくれたお父さん達のおかげで救われたんだ。そして君みたいに強く優しい子の親になれて本当に良かった。ボクの息子として生まれてくれてありがとう」


 理解していた。

 二度目の別れが近い。

 おそらく今度こそおふくろと話が出来るのは最後だ。 

 だから……


「俺の方こそ、あなたに産んで貰えて、愛して貰えて本当に良かった」


 おふくろは俺の事をぎゅっと力強く抱きしめるとゆっくりと離れ、言った。


「行っておいで、ボクの自慢の坊や。そして……今まで本当に、ありがとう」


 その言葉と共に辺りが光に包まれていき、おふくろの姿も消えていった


□□


「確かにお前から見たらちっぽけかもしれないな……」


 起き上がった俺は構えを取った。

 妻達が息をのんで俺を見ていた。

 抱きしめてやりたいところだが今すべきこと、それは……


「だからこそ、守らなきゃいけないんだろうがっ!」


 握りしめているのはメールがフリーダに託した彫像。

 今ここで俺は血を分けた姉妹すべての力を継承した。


「行くぞ、変・身ッッッ!!」


 金色に輝く最終フォーム、『アルティメットデュランダル』に変身した俺はバレッタ隊長が変身したデュランダルBに駆け寄ると共に腕をダークアグラデルの身体に押し当てる。

 

「アルティメットブラスタァァァァッッ!!」


 彼女と共にダークアグラデルに最強のエネルギーを叩き込む。

 ダークアグラデルの身体にひびが入り始める。

 何だよこのタフさは。あと一息、あともう少しだ。

 不意に俺とバレッタ隊長の身体に『糸』が絡まっている事に気づく。

 振り向く暇は無いがわかる。フリーダの『糸』だ。

 そしてその『糸』を通じてナギ、セシル、クリス、そして子ども達の力も流れ込んでくるのを感じた。

 行ける!家族と共にこのまま、一気に押し通す!!


「クソッ、止めろ!バレッタ、止めてくれ!!!」


 語り掛ける声が変わった。

 隊長の父親、ランゴバルトの声だ。


「何をしているのかわかっているのかッ!?このままではいずれ平和ボケしかけたこの国は他国に侵略されるぞ!?今ここで脅威を排除しなければ国が滅ぶことになるかもしれない。バレッタ!わかってくれ!私はこの国の為に、敢えて犠牲を……」


 だが彼女はその言葉を遮った。


「言ったはずだ!この身に代えても人々を守る!それが私の本懐だッッ!!」


「こ、このクソ女がぁぁぁぁぁッ!!」


 その叫びを最後に、ダークアグラデルの身体はバラバラに崩壊し消滅した。

最終話は本日お昼過ぎに更新予定

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