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第139話 バレッタ

何となくお判りでしょうが1名死亡フラグ立ってるなぁ……

【フリーダ視点】


 建物の奥へ入ると衝撃的な光景が広がっていた。

 胸に短剣を指され何か床に描かれた模様の中心に倒れるホマレがそこには居た。


「ホマレッ!?何だよこの模様は」


 セシルが悲鳴を上げてユズカの目を隠す。

 確かにこれはショッキングな光景だ。


「えーと、一般的には『魔法陣』って呼ばれてるやつだよ。ホマを中心に何かの術式を展開してみるみたいだね」

 

 ナギ、解説ありがとう!!


「とりあえず助けないと!」


「どうやら、招かざる客が来たようだな」


 わたし達の行動を遮るように奥の暗がりからガマガエルの様な貌をした醜い男性が姿を見せた。


「父上、これはどういうことですか?何で彼がこんな事に?私に彼との子を産ませる予定だったのでは無いのですか?」


 バレッタ隊長が男を非難する。

 ちょっと待て!こいつとんでもない事言いだしたぞ!?

 それってタイガの更に弟か妹って事じゃ無いか!!


「確かに当初の予定ではそうだった。だが出来損ないのお前の事だ。優秀な男子を生まない可能性もあるし生まれたとしても立派な軍人として仕込むには時間がかかる。それならば、と考えたのだよ。彼の力を使って『抑止力』を作ればいい、とな」


 魔法陣の線は奥にある黒い結晶体に繋がっていた。


「あれは……」


「これぞこの国を守る新たな『抑止力』。長距離破壊兵器『ゼット』。この国へ災厄を振りまかんとするあらゆる敵から国を守る力だ!!」


「その動力源として弟君を使うわけね。やれやれ、そういう顔のやつが考えそうなことよね。でもわかっている?そんな『過ぎた力』が招くのは大抵は『自滅』の道って相場が決まってるんだけど?」


 アスカさんの言葉に男は嘲笑する。

 流石転生者は違うなぁ。ホマレといいナギといい色んな事を知ってる


「正しい者が使えばそれは問題ではない。まあ、自滅してしまうというのなら『それも構わない』のだがな」


 何?

 今この人、変な事を言わなかったか?


「なぁ、母さん。何かあのおじさん変だよ」


 アルが不安げな表情でナギの袖を引きながら言った。


「うん。そーだよね。アルもわかるんだね」


「どうしたんだ?」


 ナギが珍しく額に汗を浮かべ緊張した表情で言った。


「あいつ、中に『もうひとり』いる」


「えっ!?」


 その言葉に男は不敵な笑みを浮かべる。


「なるほど、『音』で気づいたか。その通り、確かに『我』はこの男と肉体を共有している。この男の歪んだ支配欲は我にとって住み心地が良くてな。力をかしてやっていたわけだ」


 男から黒い『気』があふれ出しその姿が変わっていく。 

 それは漆黒の鎧を見に纏う悪魔の様な姿をしている怪物であった。


「「何か本格的にラスボスっぽいの出てきた!?」」


 ナギのお母さんとアスカさんが顔を見合わせて叫んだ。

 何かよくわからないが『ラスボス』というのは凄い奴っぽい。

 確かに邪悪そのものって感じだよな。


「我の名はダークアグラデル。闇より生まれし魔の王。愚かなる生命共の時間を止め、『永遠の楽園』を築くのが我が願い」


「何だよこいつ、言ってることはよくわからないけどとんでもなく悪い奴じゃないか!!」


 ダークアグラデルは黒い結晶体を眺めて言った。


「もう間もなく『ゼット』から放たれたエネルギーはイリス王国へ降り注ぐ」


「何ですって!?」


 グレース陛下が声をあげる。


「それにより人々は憎しみあい戦争が起きる。その先に待つものこそが時間の停止。都合のいい事にイリス王国の王が攻めて来てくれたからな。攻撃を打ち込む大義名分も出来た。大義の元であれば人というものはどれほど残酷な行為も行える。闇の時代の到来だ」


「くっ!そんな事!させるわけにはいかない!大断炎(だいだんえん)ッッ!!」


 全身に炎を纏ったグレース陛下が剣を構えて突撃するがダークアグラデルが振るった剣に弾かれ背後の壁に叩きつけられてしまった。


「ふんっ、他愛ない」


 嘘だろ。何だよこの強さ。

 これってもしかして最悪の状況!?


 そんな中、バレッタ隊長がいつの間にかホマレの傍に立ち彼を見下ろしていた。


「父上……ひとつお聞きします。どのような経緯があったかは知りません。ですがその悪魔に魂を売ってまでしたかったのは本当に『こんな事』だったのですか?」


 その質問にダークアグラデルは嘲笑で答える。


「その通り。圧倒的な力で支配する事こそ名門家の男として生まれてきたものの本懐。この男の望みだ!!」


 バレッタ隊長は無言で屈みこんだ。


「厳しい人だった。ゴンドール家の伝統にのっとり私を出来損ないと蔑み虐げた。それでもこの国を守ろうとする父の志は尊敬していた。だけどッッ!!」


 隊長はホマレの胸に突き刺さっている短剣に手をかける。 

 激しい火花が散り、隊長の身体が焼かれ苦悶の表情に変わった。

 最終兵器とやらにエネルギーを供給しているんだ。それを無理やり引き抜こうなんてどう考えてもヤバイ。


「何をやってるんですか!隊長さん、そんな事したらあなたが……」


 叫ぶクリスだが隊長は手を緩めず短剣を引き続ける。


「構いませんッッ!そんな歪んだ欲望の為にたくさんの命が犠牲になるのも、奥さんや子ども達から大切な夫を、父親を奪うのも、許されていいわけないッッ!!」


 力任せに短剣を引き抜くとバレッタ隊長は全身から血を流しながら変貌した父親を睨みつけた。


「何をやっている?幾ら出来損ないのお前でもこれだけのエネルギーを浴びて身体が無事では済まない事くらい……」


「理解はしています。だとしてもッ!あなたの暴挙を許すわけにはいかない!この身にかけても国の人達を守る剣となり盾となる、それが士官学校で最初に教わった事です!」


 バレッタ隊長が短剣を突き出す。

 短剣から光が溢れだし隊長を包み込んでいった。

 光が晴れて現れたのは仮面と鎧を纏ったヒーロー。


「嘘、デュランダルッッ!?」


「馬鹿な、お前如きが光の力を!?」


 仮面や鎧の一部が赤くなっているという変更点はあるものの紛れもなく私たちが知るヒーロー。

 ホマレが変身していた『デュランダル』だった。

 

「私の命に懸けて、お前を止めるッッ!!!」

  

 新たなデュランダル、デュランダルBが闇の化身目掛け飛び込んでいった。

 

「フィリー、セシル!今の内にホマを!」


 そうだ。ホマレを治療しないと!!

 ホマレの首根っこを掴み皆で戦いの場から引きはがす。

 呼吸はしているがかなり弱くなっている。

 胸からの出血も酷い。


「ユズカ、あなたも来なさい!」


「うんっ!!」


 わたしの『治癒光糸(ヒーリングライト)』、ナギとセシル、そしてユズカの持つ『聖女の力』でホマレを癒していく。


「それじゃあ、私達はあのカッコいいお嬢さんの加勢をするとしようかな?」


「転生してオークと結婚して主婦してたけど魔王と戦えるなんてそれっぽい感じになってきたじゃない!!」


 ナギのお母さんが能力で人馬型モンスターに変身、アスカさんが剣を抜いてデュランダルの加勢に入る。


「我が名はイリス王国女王、イリシア・ランパディス・グレーシズ!この名において、悪の根源であるあなたを滅するわ!!」


 戦線復帰したグレース陛下も炎を纏い参戦した。

 いや、個人的にはそっちの『聖女の力』も回復に回して欲しいんだけど……

 そして……


「絶対に戦争なんて起こさせない。もう何も奪わせない!それが兄ちゃんを殺そうとしたあたしに出来るせめてもの罪滅ぼしだッッ!!」


 床をぶち破り飛び出してきたメール義姉さんはわたし目掛け彫像型魔道具を投げつけた。


「フリーダちゃん、これを使って!あたしの力。兄ちゃんに渡せなかったあたしの想い!!」


「メール義姉さん!確かに受け取りました!!」

 

 次々へとダークアグラデルへ攻撃が叩きつけられる。


「主婦の嗜み、逝華・嘆き雨ッッ!!」


「スレイプニルバーストッッ!!」


 アスカさんが雨のように降り注ぐ斬撃を、そしてナギのお母さんはボウガンと一体化した腕から強烈なエネルギー弾を叩き込む。


「今だっ!!」

 

 攻撃を捌くダークアグラデルのスキを突き義姉さんがフライングヘッドシザースで空中へ投げる。

 そして空中で背後から組み付き四肢をねじり上げた。


「キララちゃん、あなたの技を借りるよ。ドラゴニック・フープシュラオバーッッ!!!」


 そのまま物理法則やらを無視した横移動を行い結晶体目掛けダークアグラデルを叩きつけ離れる。

 

「今ッ!!」

 

 結晶体にめり込んだダークアグラデル目掛けデュランダルBが胸からエネルギーを、グレース陛下が炎の鯨を発射した。


「ブレイクギガブラスターッッ!!!」


炎壊鯨(えんかいげい)ッッ!!」

 

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