第13話 ぴたごらバイコーン
今回、ややギャグテイストが強めです。
いや……いつもかな?
【フリーダ視点】
QUEST2
ボイルじゃくし15匹の討伐。
ランクE
報酬:2300ゴルト
「はあっ!!」
小型モンスター『ボイルじゃくし』をボーンサーベルで斬りつけ、倒す。
今回、わたしが受けたのはミラの森にてボイルじゃくしを15匹討伐するというもの。
急に数が増えて生態系に影響が出る恐れがあるという事だったのだけど……結構きついなこれ。
身の危険を感じると泡を吐いてくるんだが、これが着弾した個所から湯気が上がってる。
直撃なんかしたら火傷ものじゃないのかこれ!?
そんなやつを15匹も討伐。しかも、討伐の証拠には腹を裂いて『魔石』を取り出さないといけない。
村に居た時から野生生物の狩りをしていたし解体もしたけど……選ぶクエストを間違えた感が半端ないよ。
両生類は何というか地味にグロイ……
しかもこいつ、高温の泡を吐くから『魔石』も最初は高温。
熱された状態なので冷えないと採取できず思った以上に時間がかかる。
「はぁ、ホマレが居ればその辺もアドバイスしてもらえてたんだろうけどなぁ……」
迷惑がられてるからなぁ。
あいつと冒険するために鍛えてきたけど自分の才能の無さに嫌気がさすよ。
この間は槍を壊してしまって今やサブ武器の剣を使っているし。
しかもあいつは力を失って冒険者を引退している始末。
何か踏んだり蹴ったりだなぁ……
そう言えば2回に渡ってわたしの前に姿を現した変な奴。
確か『デュランダル』とかいう名前だっけ。
一体、あいつは何なんだろう……
とりあえず討伐は終わったから帰って何か家事でも手伝わせてもらうと……
『警戒して。『手繰り寄せられている』から』
「!?」
また、『幽霊』の声だ。
やっぱり完璧に憑かれてるじゃん!!
でも『手繰り寄せられている』て一体どういう……
「あれ?」
そう言えば何かさっきから……『森が静か』だ。
こういう時って大抵ヤバいんじゃないのか?
凶暴な獣とかが近くにいるとかそういう時だ。
そして、わたしが視線を向けた先。十数メートルの位置に真っ黒な体表をした馬が立っていた。
頭には大きな湾曲した2本の角。どう考えても魔獣だけど……こんな街に近い森に出てくる様なやつじゃないぞこれ!?
何で最近のわたしはこういうヤバそうなのにばかり出会うんだ!?
「大丈夫。彼の事も『手繰り寄せたみたい』だから」
「彼!?」
「フリーダ!大丈夫……っ!?」
駆けつけた相手はホマレだった。
彼は黒い馬魔獣を見て息を呑んだ。
「馬鹿な『バイコーン』だと!?」
「やっぱりこいつヤバい奴!?」
「本来はもっと北に住んでいる様な、この辺じゃまず見ないモンスターだ。フリーダ、ゆっくりと下がって来い。なるべく刺激するな」
なるほど。ヤバイ奴というのが十分に伝わって来たわ。
とりあえず今の所気づかれていない様だからゆっくりと後退を……
とした瞬間、小枝を踏んでしまいペキッと音が……したもののその程度ではバイコーンとやらは反応しなかった。
ただ、その時近くに隠れていた驚いて小鳥が飛び立ち更にそれに驚いて枝から飛びだった小鳥がバイコーンの頭上にある枝にぶつかった。
そしてその枝になっていた『バクレツの実』がバイコーンの頭に落ち炸裂した。
「ブルァァァァァァァ!!!」
怒りの咆哮を挙げるバイコーン。
「いや、そうはならんだろ!!何だよ今のぴたごらは!!?」
背後でホマレが叫ぶ。
バカ、そんな大声上げたら……
「あ……」
バクレツの実による炸裂とホマレの叫びによりバイコーンがこちらに気づき怒りを向けてくる。
「おいおいおいおいおい、気づかれちゃったぞ!!?」
「ああ、クソ。こうなったら奥の手だ!!」
叫ぶとホマレは何を考えたのか、湖目掛け飛び込んだ。
「…………いや、何で!?えぇっ!?何で飛び込んだの!?」
その直後、湖面が光りあの変な奴もとい『デュランダル』が飛びだしてきた。
「え?」
ホマレが飛び込んで、そこからデュランダルが出てきた!?
そういえばこの間もそうだったし、初めて出てきたときも確かホマレが崖下に……
「んんっ!?」
「待たせたな!!」
え?これって………
---------モンスター名鑑---------
ボイルじゃくし
種族:両生獣類系
体長:50cm
危険度初級Lv4
ミラの森で大繁殖したおたまじゃくし型の魔獣。
口から高温の泡を吐いて身を守る。
双角馬獣バイコーン
種族:奇蹄獣系
体長:3m80cm
危険度:中級Lv4
本来は寒冷地帯に住む魔獣。
気性が荒く、怒るとその角で相手を突き砕く。