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第128話 亡き祖母からのクリスマスプレゼント

実は今章ではほとんど役に立っていないホマレだったりします。


【ホマレ視点】


 家族みんなで楽しいクリスマス昼食……なはずなんだが今回はちょっと違っていた。

 何せ子ども達は俺達から離れて祖母や祖父の傍でごはんを食べている。

 一方で……


「みんなごめんなさい。私、その……」


「大丈夫ですよ。クリスが悪くないのはわかってます」


 ルールを破ってクリスに夜這いをかましてしまった俺の周囲には妻達が揃っていた。

 申し訳ないと頭を下げるクリスに対し皆の追及は無い。


「そうだな。こいつは以前から夜這いをかける癖があったからな」


「だからクリスが頼まれたら断れないのも容易に想像がつきます」


 幸か不幸か矛先はしっかりと俺に向いていた。

 まあ確かにクリスが来る前にも時々やらかして怒られるという前科があったからなぁ。


「まったく、あんたは子どもが成長してもこれなんだから………」


「シスコンの部分とそこはあんま変わらないねー。ナギのトコ来てくれたらよかったのになー」


「「それも違う!!」」


 こんな感じで仲がいいから助かっている。

 これでバチバチに仲が悪かったら目も当てられないからな。

 まあ、そういう場合はそもそもこの関係が成立しないんだけどな。


「とりあえず子どもが大きくなってくるんだからその辺は気をつけろよな」


 猛省します。


「どーしても我慢できなくなったらナギのトコおいでねー」


「だからナギ、ジェス君を甘やかさないでください!この人絶対喜んで行きますよ?」


 あ、うん。俺も行くと思う。


「えー」


 やれやれ、何とか収まりそうだな。


「あ、そうだ。ちょうど揃ってるし相談したいことがあるんだが……」


「ホマレさん。ちょっ、そういう刺激的なプレイについての提案は流石にこういう場で話をするのは……」


「いや、えーとユズカの事なんだが……」


「えっ……」


 自分の勘違いに気づいたクリスは顔をボッと真っ赤にして顔を覆ってしまった。


「わ、私ったらなんてはしたない想像を……」


「リスティ、大丈夫。そーゆーこともあるから、ね?」


「基本的にホマレが全ての元凶だ。気にするな」


「そうですよ。本当にこの人は……」


 何ですかその団結力は。


「ところでジェス君。ユズカがどうしたんですか?」


「あいつさ、今まで家族にべったり過ぎて友達とか居なかっただろ?どうもレム家の子どもって小さい頃は特に家の中で完結しちゃって友達を作るのが苦手な気質なんだ」


 割と社交的と言われるケイト姉さんでさえ初めての友達って確か10歳とかそんなレベルだったからな。


「それで……」


 ジョセリンちゃんの横で食事をするユズカに目をやる。

 一緒に2階から降りてきたり、隣同士だが見た感じまだ距離はかなりある。

 ジョセリンちゃんの方がどうも引いている感じだ。


「同じ一族だけど、あの子と友達になれないかなって。今まではアル達にべったりでいとこにすら興味を抱かない状態だったけど今は違うみたいだし。いい機会かなと思うんだが」


「ユズカは押しが強い子ですからね。ジョセリンちゃんは大人しい子だからやっぱり怖がらせないですか?」


 まあ、タイガを可愛がり過ぎて高所恐怖症にさせちゃってるからなぁ。


「あ、でも意外といいかも」


 ナギがポンッと手を打つ。


「あの子って自分の力が強すぎ友達を傷つけちゃうのが怖いんだよね?だけどユズカなら……」


 そう、ユズカの頑丈さがあれば問題はない。


「でも、友達になるってどうするんだよ?そんな事、親であるわたし達が指示する事か?」


「そうなんだけどこうきっかけをさ……」


「あ、でもそれ……意外と大丈夫かもしれませんよ。ほら」


 クリスが指さした先ではユズカがジョセリンちゃんに何か話しかけている。

 ジョセリンちゃんは少し戸惑った様子を見せるも二人して庭へと出ていった。

 

 俺達は窓からその様子を見守る。

 ナギが居るので家の中からでも会話はわかる。


「あー、ユズカさ。ジョセリンちゃんに勝負を挑んでるね」


「ちょっ、勝負ってまさか格闘戦を!?止めないと怪我させちゃうじゃないですか!」


 俺は慌てるセシルをなだめる。


「まあ待て。どうやら俺達がおぜん立てする必要は無かったみたいだ」


「え?」


「姉さん達もやってた事だ。『拳でぶつかって分かり合え』だよ」

 

「わかりあうってそげな事あっとね!?」


 訛りが出てるぞ?

 あの辺の訛りはよくわからんなぁ。

 セシルが焦る中、ユズカがジョセリンちゃんに飛びかかり拳を突き出す。

 普通の家庭ならここで親が止めに入らないといけない所だがやはりというか何というか。

 ジョセリンちゃんは態勢を維持しながらユズカのパンチを確実に避けていた。

 避けられないと思った攻撃は腕を使ってガードしている。


「ジョセリンちゃん、ユズカの攻撃をしっかりと『視て』防御してるな」


「あー、やっぱりあの子ったら才能はあるわね」


 ケイト姉さんが炭酸ジュースを飲みながら娘の動きを見ていた。


「姉さん、ジョセリンちゃんに格闘術は?」


「まだ教えてない。その状態であれだけ動けるとは驚きだわ。ただ、まだジョセリン自身が守りに徹してるわね」


「そうだな。でもさ、『そろそろ』じゃないか?」


 言っている中、ユズカが飛び上がりトリプルアクセルを決めながらジョセリンちゃんに迫っていく。


「ちょっ、あれってわたしの月禍美刃(げっかびじん)のムーブじゃないですか!?」


 多分何処かで母親の技を見てたんだろうな。

 全身刃化は出来ないがユズカの才能が有れば動きはマネできる。

 そしておそらくあの状態からパンチでも放つと見た。

 思わぬ攻撃にジョセリンちゃんは思わず拳を突き出して、それを喰らったユズカが逆回転しながら吹っ飛ばされた。


【ユズカ視点】


 叩き込まれた強烈な衝撃。

 景色が逆回転しながらあたしおは地面を転がるも地面を殴って体を起こし態勢を立て直す。


「ユ、ユズカちゃん!」


 ジョセリンちゃんが顔を真っ青にして震えていた。

 目には涙を浮かべてまでいる。


「あの……私……その……」


「すごい……」


「え?」


「すっごいよ!今のすっごく強烈!『闘気』でガードしたのにびびっと来た!!」


「えぇぇっ!?」


 年下のいとこはあたしの言葉に叫んでいた

 

「くぅぅーーーっ!何この高揚感。最高じゃん!お兄様達はあんま相手になってくれないし、近所の子ども達は格闘とか興味なさげだしさ」


「えーと」


「ジョセリンちゃん、凄く強いよね!ねぇ、もっと仲良くしようよ。それでさ、あたしと戦おう!あなたの本気を見せて!!」


「でも……」


「勿体ないじゃん!自分らしさをずっと抑えておかないといけないなんてさ。だからさ!」


「自分らしさ……」


 ジョセリンちゃんしばらく黙っていたがやがて腰を落として構えを取った。


「本当にいいんだよね、ユズカちゃん」


「待ってました!それじゃあ、戦ろう!!」


□□


 それからあたしはジョセリンちゃんと本気で戦った。

 一撃一撃が重い彼女に対してあたしは技や能力で対抗。

 最後はジョセリンちゃんのジャンピング・ネックブリーカー・ドロップでダウンして負けちゃったけど……


「あははは、すっごく楽しかったぁ!!」


 二人して庭に転んで空を見上げ笑っていた。


「私、こんなに楽しかったの初めて。ねぇ、ユズカちゃん。その、私とお友達に……」


「もちろん!あたし達は友達であり、そして家族だよね!!」


 見上げた2階の窓からこちらを見下ろし微笑んでいる女の人が見えた。

 あれは……そうだ。『写真』で見たリゼット御祖母様。


「ありがとう、御祖母様。あたし、友達出来たよ」


 もう話すことも触れ合う事も出来ないけど、御祖母様はあたしをちゃんと見守ってくれている。

 だから、もう寂しくなんかないんだ。本当にありがとう!!


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