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第127話 クリスマスのブレス攻撃

今回は短めです

【ユズカ視点】


 あたしには御祖母様が居ない。

 お父様の方もお母様の方も、二人共天に還ってしまっている。

 アル兄様やホクト兄様にはいるのに……


 ベルもあたしと同じだけどお父様の実家にいる他の御祖母様達を慕っている。

 そういうものだって理解はしている。

 アンジェラ御祖母様もメイシー御祖母様も優しいしあたし達を可愛がってくれる。

 だけど、血が繋がっているわけではない。それが寂しくて仕方が無い。


「御祖母様……」


 あたし達、きょうだい共通の御祖母様、お父様の母親であるレム・リゼット。

 その人が寝起きし、最後の時を迎えた部屋にあたしは立っている。

 

 彼女が亡くなった時、あたしはまだ本当に小さかった。

 顔もほとんど覚えていない。御祖母様が遺してくれた『写真』があるのみだ。

 

 天井を見上げる。

 そうだ。あたしはここの天井に登っていた。

 そんなあたしに御祖母様は微笑みかけてくれて……


 何だろう。世界の中で自分だけが独りぼっちみたいな、そんな感覚……


「あの……」


 背後から声がした。

 振り返るとそこに立っていたのはこの家の子、いとこのジョセリンちゃんであった。

 少しだけ年下。妹達と、カノンやベルと同い年の子。


 何度か顔を合わせた事があったがすぐにケイトおばさまの後ろの引っ込んでしまっていた。

 あたしもお兄様達にべったりだったし、こうやって向き合うのは初めてになる。


「そこ、リゼットおばあちゃんの……」


「うん。知ってる……ここに来たら、会えるかなって思って……会えなかったけど」


「そっか……」


 会話が続かない!

 いとこだけど何だかジョセリンちゃんは大人しくて調子が狂う。


「えーと……」


 どうしたものか困っているとふと、あたしの肩に誰かの手が置かれた感触が。


「え?」


 振り向くけど誰もいない。

 これは一体……


『踏み出してごらん。勇気を持って、手を差し出して』


 優しい声が耳に入ってきた。

 遠くから声が飛んでくるのは我が家では当たり前の事。

 だけど今のは……ナギママやアルお兄様とは違う。

 じゃあこの声は……


 下からあたし達を呼ぶ声が聞こえる。

 お昼ご飯が出来たみたい。


「えーと、それじゃあ、行こっか」


 あたしはそっとジョセリンちゃんに手を差し出した。


【ホマレ視点】


 ユズカはジョセリンちゃんと手をつなぎながら降りてきた。

 上で何かあって仲良くなったのだろうか?


 ナギに目配せをすると苦い顔をして首を横に振る。

 どうやら聞き耳は立てていが『よくわからない』らしい。

 子どもって難しいなぁ。


「ねぇ、ママ。ベル聞きたいことあるなり」


 俺の背後でベルがクリスに質問をしていた。

 カノンほどでは無いけどベルも色々な事を知りたがる年頃なんだろうなぁ。

 俺は水を飲みながら娘の成長を温かく見守っていた。


「ふふっ、何かなベル?」


「あのね、前の前の夜ね、おトイレ行った時に見たんだけど……何でママはパパの上でおねんねしてたの?」


「ぶーーーっ!!!」


 周囲の空気が凍り付き、クリスが顔を真っ赤にし、俺は思わず水を噴出していた。

 ちなみにこの世界ではこの行為を『ブレス攻撃』とマイルドに表現している。


「ベル!お願いだからこれ以上は止めてぇぇぇ!そうだよね、ママ気を付けるからね!?だからこのお話はもう……」


 子どもの純粋さ、恐ろしいなぁ。

 ちなみにホクトはさっきから耳がピクピク動いている。


「ジェスくーん、ちょっと話があるんですけど」


「ふふっ、セシルったら奇遇だな。実はわたしもだ。なあホマレさぁ、一昨日ってそういう日じゃないよな?」


 背後から圧を感じた!

 やべぇ、フリーダとセシルが睨んでる!!

 いや、あれなんだよ。あの日はなんか寝られないなぁって水を飲みに行ったらトイレ帰りのクリスとばったり出くわしてさ。

 しばらく想い出話とかしてたらそういう意雰囲気になっちゃってさ、丁度ベルも子供部屋で寝る様になったからそれで……

 

「まーまー、ホマだって男の子だしさ。そういうこともあるって」


 おお、流石はナギ!

 やっぱりお前はいつだって俺の味方だなぁ。


「でもそれならそれで何でナギのトコに来なかったんだろーなー?やっぱり若いコがいいのかなー」


 あ、終わった。

 ナギも敵に回った。何か笑顔だけど笑ってない。


「そ、それについては後程ゆっくり話し合おう。あははは……」


 そんな俺を見ながら親父は苦笑して言った。


「そろそろ妻を大勢貰う大変さが解ったみたいで何よりだ」


「あら、ナナシさん、あたし達との結婚生活大変だったの?」


「これはこちらも話し合いをする必要がありますね」


「いや、そ、それはだな……」


 アンママとメイママが親父に詰め寄っていた。

 流石は俺の親父。見事なブーメランだ。芸術点が高いぞ。


「ねーねー、ママー」


 首を傾げながら『教えて』とねだるベル。

 真っ赤な顔であたふたするクリス。

 それを見かねてナギの母親が近づいて行きベルを抱き上げる。


「ふふっ、ベルちゃんにはまだ早いよ。いつかもっと大きくなったらもう一回聞いてごらん」


「えー、秘密なり?」


「そ、秘密なり。さぁ、みんなでお昼ご飯食べよう」


 けらけら笑いながらベルを連れてテーブルの方へ。

 ありがとうございますッッ!!

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