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第122話 キャッチボール

割と父親らしい事をしているホマレです。

【ホマレ視点】

 

 夜勤明けのこの日。

 俺は一度眠り3時ごろに目を覚ました。

 

 フリーダとナギは夕食の支度をしていた。

 アルとユズカがその手伝いをしている。

 ユズカはともかく、多分アルはあれ、罰だ。

 

 ヒイナちゃん事件はどうなったか気になるけど後で聞くとしよう。

 カノンは『タコヤキとは何か』の考察に集中しておりこの状態になると周囲が見えなくなる。

 ベルとタイガはお昼寝中だった。


 そしてひとり暇そうにしているのがホクトだった。


「ホクト、外でちょっと遊ぶか?」


「うん……」


 ここは暇な男同士、庭で遊ぶとしよう。

 おふくろがこの家を紹介してくれた時、庭が広い事に驚いたが思えば実家もそうだった。

 そしてウチのきょうだいは皆結構やんちゃだったので庭で遊びまくっていたよな。

 その辺も考慮してくれてたんだろう。


 男の親子がする事といえばやはりキャッチボールだよな。知らんけど。

 別に前世から野球好きなわけでは無いし、この国ではまだ野球に該当するスポーツは発展していない。

 杭を立ててその間にボールを通すようなスポーツは一応あるんだがな。

 まあ、あれだよ。キャッチボールでこう親子の会話のキャッチボール的なやつかな?

 ちなみに親父はノーコンだったのでキャッチボールの記憶はほぼない。


「どうしたんだホクト。何だか落ち込んでるみたいだぞ?」


 ボールを投げ合いながら気になっていた事を息子に投げかけてみた。


「俺が?そ、そんな事ねぇよ。母ちゃんに何か言われたの?」


「いーや。起きてから母さんとはまだ会話してない。単にお前が何だかムスッとした表情をしてたから気になっただけだ」


「別にそんな……事無いし」


 うん。やっぱり何かありそうだな。

 そうだな……こいつの場合だとやっぱり……


「ヒイナちゃんか?」


「!?」


 俺の言葉にびっくりした次男はボールを取りこぼしてしまうが素早く持っていた小石とボールをスキルで入れ替えてキャッチしてた。

 ほう、抜け目ない奴だ。


「な、何でそこでヒイナちゃんが出てくるんだよ。そんなの関係ねぇじゃん」


「え?だってお前、ヒイナちゃん好きだろ?」


「!!!?」


 わかりやすい動揺を見せ、顔を真っ赤にした次男はボールを落としてしまった。


「べ、別に好きじゃねーし。頭は良いし、いいにおいするし、優しいけどそんな別に」


 うん。無茶苦茶好きだな。

 ホクトはうつむいて黙り込んでしまっていた。


「…………ヒイナちゃんは、兄貴の事が好きなんだろ?兄貴と結婚するっていつも言ってるし」


 肝心のアルは嫌がってるんだけどな。


「兄貴の方がイケメンだし賢いし、お似合いだと思うし、別にそんな……」


 やべぇ。息子が可愛すぎる!!

 俺、息子の初恋の悩み相談に立ち会ってるってことだよな?

 あぁ、こんな日が来るとはなぁ。


「俺は母ちゃんに似て馬鹿だし、やっぱりヒイナちゃんには釣り合わないだろうし」


 む、自分を卑下しはじめたな。

 これはいかん傾向だ。

 ついでにさり気なく母親をディスってるな。ダメだぞ?


 いや、別にフリーダは馬鹿ってわけじゃ無いんだ。

 ただ、機会が無かったがためにどうしても他のメンバーと比べれば学力が劣るだけなんだよ。


 ナギは高校中退ではあるが成績自体は良かったらしい。

 セシルも聖女宮で勉強する機会が与えられた。

 クリスもリーゼ商会の孤児院に入った事で結果的に教育を受ける機会があったからな。

 そう、フリーダは純粋に教育を受ける機会が殆ど無かっただけなんだよ。

 まともな教育を受けたのも何やかんやでウチに転がり込んで来てからだからな。

 最初はマジで読み書きに不自由していたんだよ。結構気にしてるんだよなぁ。

 


「確かにヒイナちゃんはアルが大好きでたまらないからな。なかなか難しい所はあるかもしれない」


 俺の言葉にホクトが口を尖らせ始めた。


「だけど、無理ではないと思う」


「え?」


「だってお前達はまだ子どもだろ?どうなるかわからない。それに、アルとお前は1歳しか違わないわけだしな。そもそも年齢差で言うなら父ちゃんとクリスなんか10歳も違うわけだし」


 世間的には割とギリギリな年齢差なんだよな。

 貴族社会とかだとこういうのって割とあるんだけどさ。


「そうだけどさ……でも兄貴の方が出来はいいだろ?やっぱり……」


「お前が勝負すべきは兄貴じゃなくて自分自身だぞ?」


「自分自身……」


「絶対に叶うという保証は出来ない。それでも諦めない限り夢は傍にあるんだ」

 

 そう、諦めてしまわない限り可能性はゼロじゃない。

 まあ、ヒイナちゃんがもっと違う男に惹かれてそっちに行く可能性も考えられるけどさ。

 その時にはヒイナちゃん以外にも目を向けられているかもしれないな。

 例えばケイト姉さんのトコのジョセリンちゃんとかさ。あの子も絶対美人になると思う。

 まあ、あっちも親戚なんだけどさ。


「諦めない限り……か。わかったよ、父ちゃん。俺頑張ってみる」


「よし。その意気だ!あとな、母ちゃんをあんまり馬鹿にするなよ?」


「あ、うん。気を付ける……」


 おいおい、ちょっと俺父親らしいことやってるじゃん。

 自分で言うのもあれだが成長したなぁ。

 ホクトが俺に投げようと振りかぶった瞬間だった。


「あぁっ!お父様もお兄様もズルい!あたしもキャッチボール混ぜてよ!!!」


 家の中から長女が飛び出してきて俺の前に立つ。

 5か月違いなだけでほぼ同じ年齢なのだがユズカはホクトを兄としてしっかり認識している。

 それにしても流石セシルの娘。空気の読めなさは遺伝してるな。

 いや、セシルの方がまだ読めるているか。


「さあ、来い!キャッチボールしようよ、1000回!!」


 何だよその回数は。奇妙なキャッチボールでも始める気か?

 いい感じの空気を壊されたことに少しイラッとした表情になったホクトは大きく振る被るとユズカ目掛けてボールを投げた。


「よっしゃ、ど真ん中ストレート!!」


 いや、あの投げ方は……

 思っているとボールはキャッチ直前で落下し妹の腹に直撃した。

 別に教えてないけど見事なフォークボールだな。


「ぐほぉぉっ……と見せかけて何の、闘気硬化!!」


 普通なら叱らんといかんやつだがオーラマイスターであるユズカは『闘気硬化』が当然の如く出来るんだよな。

 ユズカを見ているとイリス王国に嫁いだ妹を思い出す。あいつ元気でやってるかな。


「へへっ、流石お兄様。やるじゃない。これはあたしも本気出さないとね!!」


 待て。お前が本気を出すと色々面倒くさい事になるぞ?

 そういうものはここぞという時にとっておこうな?


「うわぁ、うぜぇ……」


「行くよー、『幻惑の塩目(えんもく)』!!」

 

 ユズカが投げた球は空中でブレまくりいつの間にか4つに増殖。

 恐らくあれの内3つの正体は『塩』の塊だな。

 いきなり高難度かよ!!

  

「ひとつは『火薬』も混じってるよ!!」


 何やってんだぁぁぁぁ!?

 そうだ。こいつ『塩』の他に低品質だが『火薬』にも目覚めてたんだ。

 するとホクトの後ろから飛び出してきたセシルが腕を突き出した。


八方美刃(はっぽうびじん)!!」


 空中で3つのボールが斬り裂かれひとつは小さな爆発を起こした。

 本物であるひとつはセシルの手にしっかりとキャッチされていた。お見事!!


「ホクト、大丈夫ですか?」


「セ、セシルママ……ありがとう。えーと、おかえりなさい……」


 うん。ホクトはエロさで色々と親達を困らせているが基本的には礼儀正しい子なんだよな。

 一方のユズカは『やっべ』といった表情になっていた。


「ユズカぁ?あなた、『また』やりましたね?」


「ひぃぃぃぃっ、お母様ごめんなさぁぁぁい!!!」


「今日という今日は許しません。弟を高所恐怖症にしたり、お転婆が過ぎます!待ちなさい!!」


 ちなみに高所恐怖症なのは末っ子のタイガだ。

 可愛い弟の為にとユズカがタイガを掴んで天井まで上がっていった事があるがそれが余程怖かったらしい。

 勿論、セシルに無茶苦茶怒られていた。どうも我が家の上3人はよく母親に叱られる傾向にあるな。


「いやぁぁぁぁっ!」


 ボールをホクトに渡すとセシルは逃げる長女を追いかけはじめた。

 これも我が家では見慣れた光景だ。


「えーと……キャッチボール続けるか?」


「あー……うん。そうだね」



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