第114話 ほのぼのした朝
何かほのぼのした朝の風景を書きつつフリーダとホクトについて補足の説明を。
うん、ほのぼの……かな?
【ホマレ視点】
何やかんやで『兄貴』が出来た翌朝。
昨日はフリーダと共に家へ戻り家族と一緒に『キウス』を食べた。
フリーダからは『よく覚えていたな』と褒められたがそりゃそうだろ。
肉やらを詰める為に野菜をくり貫く時に怪我したし。
「あの、ホマレさん……えーとコーヒーです……」
「ありがとう、クリス」
礼を言うがクリスはトレイで顔を隠しながらそそくさと俺から離れて行ってしまう。
その様子を見ていたフリーダとセシルが顔を見合わせ……
「ジェス君、クリスに何をやらかしたんですか?」
「いや、何ってそれ聞くかぁ?」
昨日は夕食を終えて団欒していたらクリスが俺の袖を引っ張ってこう耳元でもにょもにょ言ってだな。
まあ、そのあれだよ。色々決心がついたって事で……な?
「ナギ、昨夜はあんたがサポートについていながらホマレを暴走させたのか?」
「いやお前、暴走って人をケダモノみたいに言うの止めてくれないか?」
「……時々ケダモノじゃん」
くっ……反論したいがボロが出そうなので止めておく。
あれなんだよ、お前達が魅力的過ぎるんだって。
「それで、ナギ。ジェス君は昨夜どんな感じだったんですか?」
「至って普通だよ。リスティのあれは『乙女心』だから」
ナギが苦笑していた。
もうさ、ウチの悪い所ってこれなんだよ。
妻達がこういうのを情報共有しちゃうの。割と普通に。
「要するにあれですね。昨夜の事を思い出してしまい目が合わせられない状態ってわけですか。クリスったらかわいいなぁ」
「あぅ……」
クリスがトレイで顔を隠して更に縮こまっていた。
子ども達もいるんだしそれくらいにしてやってくれ。
離乳食をホクトの口に運んでやりながら小さくため息。
ちなみに内容は『ふわふわキャロットのリゾット風』ナギ作だ。
「美味いかぁホクト。リムおばさんが開発した野菜で出来てるんだぞ?好き嫌いしない立派な男に育てよ」
ひと口ごとに見せる喜びのリアクションが堪らない。
やべぇ、これだけで白飯4杯はいけるぞ。
「やっぱりこれがわたしらの旦那だよな?」
フリーダの言葉に他の3人が同意する。
「そういやお前達、アオイが俺のフリして帰って来た時、すぐに俺じゃ無いって気づいたんだよな。やっぱり身長?」
「うーん、並んだらわかるのかもしれないけどナギは『音』が違うって感じたね」
「私は『細かい仕草』があなたのものじゃないって感じました」
ほう、それぞれ自分の得意分野で俺を見分けたか。
クリスは何というか俺をよく見てるんだなぁ。
「セシルは?」
「帰ってきた偽物、というか今はお兄さんですよね。あたしはあっちの方が何かキレイな『気』を感じました」
「……ごめんな、お前に話を振ったのが間違いだったわ」
「ち、違いますよ!あれです。いつもなら色々と欲望全開なジェス君なのにお兄さんの方は何だかそう言うものを感じないというか」
それだと俺が帰って来るなり妻達を求める様なケダモノに聞こえるんで止めて欲しい。
「セティはさ、ホマって『家族大好きオーラ』がだだ漏れしてて帰ってくると子ども達とじゃれあいまくったりするのにそれが無いって言いたいんだよね?」
「そうです、それです!あたしの旦那はもっと家族に対して深い愛情を見せてくれる人って言いたかったんです!!」
そういうことか。納得はしたが何か照れくさいな。
「あの、今聞いててちょっと気になったんですけど、フリーダって……」
クリスは昨日の出来事を機にこれまで先輩妻達に『さん』とつけて呼んでいたのを改めて呼び捨てにするようになっていた。
「ん?わたしがどうかしたのか?」
「えーと、このお皿ってサイズどれくらいかわかります?」
「ん?22cmだろ?正確には22.2cmだけどさ」
あれ、妙に細かく言うな。
「じゃあ、私の身長は?」
「151.3cm。少し成長したよな」
「あー、やっぱり」
ん?どういうことだ?
「フリーダって見ただけで正確な長さとかを測ることが出来るみたいなんです」
「そっか、だから一目見た瞬間から違和感を感じてたんだ。いつものホマよりも『背が高い』って」
マジか。それって凄い能力じゃないのか!?
「そんな凄い事か?ほら、村に住んでた時は狩りとかしてたからその関係もあるんじゃないのか?」
「それにしたって正確すぎます。ひとつの『スキル』だと思うんです。それで、その事を踏まえるとホクトのスキルって……」
確か『女性のスリーサイズを即座に理解する』ような能力だったよな。
「え?まさかホクトのスキルの源流って……わたし!?」
「まあ、『女性限定』とかエロいあたりはホマレさんからの遺伝だとは思いますけど」
あれ?クリスちゃん。
さり気なく俺の事ディスってない?
「アルの『声』もユズカの『気』もそれぞれナギやセティからの遺伝だったもんね。きっとそうだよ」
「私からの遺伝……ホクトぉ、嬉しいやら恥ずかしいやら母さん複雑だぞぉ」
言いながらも母となった年下妻は笑顔で息子の頭をわしゃわしゃ撫でていた。
「そうなるとクリスに子どもが出来たらどういう系統になるんだろうな。はは、楽しみだなぁ」
「私!?えーと……」
考えながらクリスはまた顔を紅くしてスケッチブックにペンを走らせ自分の顔を隠してしまった。
『すいません。色々考えたらまた昨夜の事を……情報は後程まとめて提示します』
真面目か!!
「ジェス君、セクハラです」
「さり気なくクリスに子作りを要求しているよな。うん、セクハラだ」
え、これってセクハラになるのか!?
いや、まだ俺にはナギという強い味方がいる。
さあ、年上の威厳を見せてくれ!!
「パパったらセクハラだね。困ったねー、アル?」
うん、わかってた。
そしてホクトはというと『やるな親父』と言わんばかりの表情で俺を見ていた。
本当にこいつ転生者じゃないよな?