表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/146

第10話 子カルガモの如く

【フリーダ視点】


 しかし参ったな。

 流石、国の中心都市なだけあって……見事に迷ってしまった。

 冒険者ギルドの時はよくよく考えればリムさんについて来てもらってたからなぁ。


「ねぇ、そこの君。もしかして田舎から出てきたおのぼりさん?」


 そんなわたしに声をかけてきたのは少し遊んでいる感じの若い男。


「何だよ。そうだけど、それが悪いのか?」


「いやいや。そうじゃないよ。俺、都会に出て来て迷ってる女の子に色々と教えてあげるっていう慈善活動をしてるんだ。良かったら案内してあげるよ?」


「別にいいよ。わたしは自分の力で目的地に行きたいんだ。気持ちだけありがたく受け取っておくよ」


 何より、この男があまり信用出来なさそうに見えた。

 村の母さんも『知らない男について行くと痛い目を見る』って教えてくれた。

 ちなみに母さんが若い頃に森で出会った知らない男について行った結果生まれたのがわたしなのでちょっとした皮肉でもある。


「おいおい、人の善意は受け取るもんだよ?親について行く子カルガモみたいに、俺に付いてきなよ。そしたら色々都会の楽しい事とかも教えてあげるよ」


「だからいいってば!!」


「遠慮しないでよ。子カルガモみたいに付いてきなってば」


 しつこいやつだなぁ。

 男の手がわたしに届きかけた瞬間だった。

 頭上から多量の水が降り注ぎ男がずぶ濡れになってしまった。


「ああっ、すいませーん。掃除してたけらバケツ倒しちゃってぇ」


 バルコニーで掃除をしていた男性が申し訳なさそうにこちらを見下ろしていた。

 うわ、運が悪い人だなぁ。日頃の行いが悪いのかな?

 でも何か、さっき一瞬、男の人の身体に『黒い糸』がふわっとくっついて消えていった気がしたんだけど……気のせいかな?


「いや、あはは。事故、だから別に構わないさ……ねぇ、俺こんな感じでずぶ濡れになっちゃってさ。服を買いに行こうと思うんだ。それで、おしゃれなお店知ってるし一緒に見に行かない?子カルガモみたいについておいでって」


 まだ諦めないってある意味凄いな!?


「あはは、いや遠慮するから。それより早く着替えないと風邪ひきますよ?」


「ああっ、風邪ひいたかも。ねぇ、病院まで付き添ってよ。子カルガモみたいについていくからさ」


 尚も諦めずこちらに向かってくる男。

 ここまで来るとその姿勢に尊敬の念を抱かずにはいられないけど迷惑だなあ。

 

 そんな風に思っているとおばさんが持っていた買い物袋の底がほつれて穴が開き、中から小さなにんじんが転がって男の足元に。


「うわっ!?ととと!!」


 男は足を取られバランスを崩すと近くに居たおじさんに倒れかかっていく。

 そして伸ばした腕がおじさんの頬を直撃した。


「あぁん?お前いきなり殴ってきてどういうつもりだ!?」


「え?いや、その……」


「ちょっとあっちで話を聞かせてもらおうか!!」


 男は情けない悲鳴を上げながら強面おじさんに引きずられていってしまった。

 あれ、何かよくわからないけど助かった?

 

 ちょっとかわいそうな感じになったけど、まあ仕方ないとして……


「それじゃあ詰め所を探すとしようかね」


 歩き出したわたしだったが不意に視界を『白い糸』が横切る。

 何だろうかと視線で追うとその先には道に座り込んでいる小柄なお婆さんが目に入った。

 『白い糸』はまたも掻き消えていた。


「おばあちゃん。どうしたんだい?」


「ちょと腰が痛くなってしまってねぇ」


 そりゃ大変だ。

 これは放ってはおけないな。


 わたしはおばあさんの前にかがむ。


「ほら、おぶって行ってやるよ」


「すまないねぇ………」


 こうして道に迷っていたわたしだったが更に迷う覚悟をしておばあさんをおぶっていく事に。

 おばあさんに指示された通り歩いて行き、家まで送っていく。

 家族におばあさんを託し、別れを告げ通りに出る。


 良いことはしたけどこりゃますます目的地がわからなくなったな。

 仕方ない。こういう時は『人に聞く』だ。

 とりあえずさっきみたいなナンパを受けるのはごめんなので女性に聞こう。

 

 近くにあった花屋に入り、店員の女性に警備隊の詰め所は何処か尋ねる。

 すると店員は少し困った顔をしてわたしの背後を指さす。


「え?」


 女性の指さす先にある建物。

 それは紛れもなく目的地としていた『警備隊詰め所』だった。

 

「えー。こんな事あるんだ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ