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第105話 ガバガバな作戦

安定のセシルです。


【ホマレ視点】


「……というわけでケイト姉さんをアトムとくっつける作戦を行う事にした」


 姉さん達が帰った後、俺は妻達に作戦概要を説明する。

 尚、走り回って疲れ果てたアルはソファで、ユズカもベビーベッドでひたすら眠っている。

 残るホクトは俺の膝に乗って『ムーギーチャー』を飲んでいた。要するに異世界版『麦茶』だ。

 しかも少しずつちびちび飲みを長く楽しもうとしている。

 流石は我が息子、わびさびがあるなぁ。まあ、適当に言ってみただけだが。


「それで、どういう作戦なんですか?」


 セシルの質問に俺はホクトの頭を撫でながら答える。


「作戦はこうだ。姉さんに俺から歌劇のペアチケットを贈る。当日限定のやつをな。そしてアトムと一緒に歌劇に行かせるんだ。以上だ!」


 ちなみにチケットの入手については親のコネを使うことにした。

 割とすねをかじってるなぁ俺。いやまあ、今回は姉さんや妹も関わっているが。


「あのさ、何をするかわかったがちょっと水を差しちゃうぞ?そんな事で本当に二人がくっつくのか?」


「そもそもケイティが彼を誘って歌劇に行かない可能性もあるねんだよねー?」


「ジェス君、流石の私でもあまりに運任せな作戦だとわかりますよ?」


「…………お前達もそう思うよなぁ」


 俺は頭を抱えた。

 この作戦は先ほどの話し合いで姉さん達から出た案だ。

 『完璧だ!』って盛り上がっていて俺も同意はしたが……

 色々とガバガバじゃねぇか!!

 ウチの姉妹って実は全員恋愛偏差値低くないか!?

 

「これで上手くいくならリムの旦那はイザヨイじゃない別の男になってるはずだよなぁ」


 イザヨイは結構根気強くアプローチを続けたと思う。

 だがそんなあいつでも最終的にひざを折ってしまうのだ。

 ケイト姉さん攻略は並大抵の所業では無い。


「アトムさんがボスの事をどう思っているのかも念のために確認しておくべきでは?」


 クリスの言葉に全員が固まった。

 しまった!その可能性を考えていなかった。

 普段の様子からあいつがケイト姉さんを好きだと皆が認識していたがそもそも前提から違う可能性があるんだ。

 

 あいつは姉さんにボコボコにされ『わからされた』結果、尻尾を振る犬状態になってしまっている。

 つまり恋愛感情というより主従関係で終わっている可能性があるのだ。だとしたら最悪すぎる。


「ホマレ、本気で何が起こるかわからない。念のために確認しておいた方がいいぞ?」


「あ、ああ……」


 何という事だ。

 アトムの恋愛偏差値もまた、変な次元に突入していたのだ。

 かつてイケメン俳優としてお茶の間を沸かせ、アイドルやモデルなど様々な女性と熱愛報道などが騒がれたあいつはもういない。

 まあ、あの頃のあいつならケイト姉さんを攻略出来る可能性はゼロだったんだがな。


「んー、それじゃあナギはちょっと散歩でもしてこようかなー」


 急にナギが大きく背伸びをしながら立ち上がる。

 それに合わせてアルが目を覚ます。


「え?ナギさん、作戦会議は?」


 クリスが唖然とした表情で我が家の最年長元聖女妻を見る。


「うーん。ナギ、そーいうの苦手なんだよねー。アル、ママとお散歩しに行こうかー」


「ホクト!」


 アルが俺の膝に座っている弟を指さすとホクトも大きく手を挙げ喜ぶ。

 ちなみに挙げた手は俺の顎を直撃していた。


「それじゃあホクトも行こう。フィリーも行こっか?」


 ナギはアルを抱き上げながらフリーダを誘う。


「え?あ、ああ。そうだな。それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」


 フリーダはホクトを抱っこするとナギと共に出かけて行った。

 クリスは戸惑いながら口をへの字に曲げていた。


「あの、あれでいいんですか?」


「大丈夫ですよクリス。ナギなりに何か考えるところがあるんでしょう」


 流石付き合いが長いだけあるな。

 何か聖女時代は仲が悪かったらしいけどさ。


「ジェス君はとりあえず前世の弟さんと話をしてみてはどうでしょう?」


「ああ、そうだな。それがいいかもしれん」


「あたしはユズカと留守番してるんで……クリスを連れて行ってください。あんまり二人きりっていうのも無いからいい機会じゃないですか」


 ウインクするセシル。

 もしかしてナギがフリーダを連れ出したのってこの辺も計算に入れてたのか?

 そしてセシルがその辺の意向を汲むのを想定していた。

 参ったな。あいつはやっぱり年長者だけあるな。

 それにセシルも後輩妻が出来た事で人間性が成長したか。


「あっ、ついでに『カップル宿』で休憩して来てもいいかもしれませんね。子どもが居るから家出は昼間にそういうことできないですし」


 セシルの言葉にクリスが顔を真っ赤に染めた。

 今出た『カップル宿』とは近年流行っている男女が色々と仲良くするお宿だ。

 まあ、つまり…………そういう事だな。

 流石は『第3の女』。せっかく感心したっていうのに一瞬で色々と台無しだ。

 いや、確かに子どもが居ない時はそういう事も……ってそうじゃない!!

 

 とりあえずユズカを起こしてしまうとかわいそうなのででこチョップは止めておく。

 でこチョップをするとセシルは高確率で『酷い』と騒ぐからな。


「とりあえず出かけるとするか。行こうかクリス」


「あ、あの……えーと……『カップル宿』……ですか?あの、出来れば私初めてはそういうところでは……」


 消え入りそうな声で顔を真っ赤にしながら俺を見る。


「ち、違う!とりあえずいつもの冷静なクリスに戻れ!!」


「あぅ……す、すいません。『ポメちゃん』も『やっちゃえクリス、頑張るポメ』とか耳元で応援してたものでつい……」


 何やってんだよサポート能力!

 というかあれか?心のカタチが反映されたものだからクリスの本音的には……

 いや、深く考えるのは止めておこう。

 やれやれ、先が思いやられる。

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