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第104話 ミッションインポッシブル ※挿絵あり

【ホマレ視点】


 クリスが正式に家族となって1節。

 セシルが我が家で初めての女の子を出産した。

挿絵(By みてみん) 



 歓喜したセシルは早速『3』にちなんだ名前をつけようとして他の3人からしっかり止められていた。

 まあ、そもそも『3』にちなんだ名前の難易度が高いので思いつかなかったのだがな。

 

 すったもんだの末、長女の名前は『ユズカ』になった。

 『3』を諦めたセシルが『それなら何か異世界風の冬っぽい素敵な名前無いですか?』と聞いてきた結果だ。

 同じく異世界出身の親父を巻き込んで話し合いを重ねこの名前が出てきた。


 レム・ユズカ

 生年月日:星歴1244年12月12日

 肩書:レム分家長女・第三世代

 母親:セシル


 ベビーベッドですやすや眠る娘にかけられている毛布にはセシルが施した『3』の刺繡。

 しかも何がすごいって数字の他に『イリス語』、『漢字』、『英語』、『ドイツ語』で『3』を表す単語が刺繍されているのだ。

 ちなみに『ドイツ語』は親父がかつて大学で学んでいたらしい。

 もうこの『3』への執着は俺の影響とかでは説明つかないぞ?


 そして新たな年を迎えたある日。


 兄となった男児ふたりもまた、元気に育っていた。


「アル!遊ぶならご飯食べてからにしろよ!ていうかホクトもお兄ちゃんについて行くな!」


 無茶茶元気だった。

 動き回る様になった長男。それを追うようにハイハイでついて行く次男。しかもかなり素早い。


 追いかけるフリーダは苦戦していた。

 俺の子どもは異世界転生者のハーフになるので普通の子よりも運動能力も高めだ。

 成長速度もアルの時から感じていたが普通の子より早いだろう。

 ということで中々のやんちゃぶりだ。うん、引っ越して正解。


「ああ、すばしっこい。ナギ、あんたからも言ってくれ!!」


 一方のナギは洗濯物を畳みながら穏やかな表情で子ども達を見守っている。

 

「うんうん。アルもホクトも凄いなぁ。すくすく育ってるよねー。頑張れー」


 ダメだこりゃ。

 無茶苦茶甘やかしている。

 完全にみんなのお母さん化しているぞ。

 

「はいはい。アル、ご飯食べてから遊びましょうね。ほら、ホクトも。ママが怒ってるよ?」


 クリスがアルを抱き上げこちらに連れてくる。中々のナイスアシストだ。

 ホクトはフリーダに最終手段となった糸で捕縛されそのまま食卓へ連行。


「ユズカ遊ぶ!」


 妹を指さす遊び隊盛りのアルを見てセシルが微笑む。


「ごめんね。ユズカはまだ赤ちゃんだから一緒には遊べないんです。大きくなったら遊んであげてくださいね」


「うん!」


 うむ、素直でいい子だ。


『ホマさ、手伝ってあげないそろそろフィリーが怒るよ?』


 密かに『声』が飛んで来た。了解だ。

 俺はイヤイヤする息子たちをなだめながらご飯を食べさせる。

 そんな中、ふとある『匂い』がした。


「この『匂い』は……アリス姉さんが街に戻って来てる!」


 俺の反応にクリスが呆れていた。


「ホマレさんって本当に鼻が良いんですね……」


「ジェス君の場合、お姉さんや妹さん限定なんですけどね」


「3児の父親になってもこれだよな……というか探知できる範囲が広がっていないか?」


「ふふっ、家族が増えた結果だ。俺も日々レベルアップしているのさ!」 


 絆が強くなることでレベルが上がる。

 この世界ではよくある事だ。

 今回はクリスが4人目になったのとユズカが生まれた。

 それにより何と俺の嗅覚は半径1km以内なら姉や妹の匂いがわかるようになったのだ。

 1節前はせいぜい300mが限界だったので凄い進化だろう。


「更に『シスターサーチ』という特技もあるぞ?これをすることによって直近数日の体調やら様々な『鑑定』が出来るんだ」


「あの、ホマレさん。それってやっぱり……」


「うむ。姉さんや妹限定だ」


「そうですか……」


 新妻が呆れかえっていた。


「普通さ、わたし達に関する何かがレベルアップするもんだろ?」


「だねー。でも、そういうちょっとズレたとこがホマらしいね」

 

「まあ、ジェス君のシスコンは今に始まったわけじゃないですからね。慣れました」


 妻達が苦笑する。

 だってなぁ……


「あれ?アリス姉さんだけじゃ無いな、リリィ姉さんが合流してリムも……ウチへ向かってきている?」


 そして……


 ふたりの姉と妹ひとりを出迎え、リビングへ案内する。


「うわぁ、ホントに奥さん増えてる……」


 アリス姉さんが呆れていた。


「割と手が早いとは思っていたけどまさかここまでとは思いませんでした」


 額に手を当て、妹が嘆く。


「まぁ、当人達が幸せならそれでいいんじゃない?そもそも実家がそのパターンなわけだし」


 流石はリリィ姉さんだ。

 理解が早いし、実に器の大きな人だ。


「まあ、旦那が同じことしようとしたら鍋で煮込むけど」


 怖っ!

 姉さん怖いぞ!?

 でもそんな姉さんも素敵だ。


「それで、今日は3人揃ってどうしたんだ?」


 俺の言葉に3人は顔を見合わせため息。

 リリィ姉さんが話を始めた。


「実はケイトの事なんだけどね。あの、今も独身でしょ?」


 姉さんはあらゆる合コンに敗北し、想いを寄せる男性数名のアプローチを無意識に避け続け挫折させた。

 リムの旦那であるイザヨイもそのひとりだ。

 正直、打つ手がないのではと思ってしまう程だ。


「それで、どうしたものかと思ってたら最近、結構仲良くしている男の人がいるのよね。ほら、売店で働いている……」


 前世の弟、アトムの事か。


「ああ。知っているよ」


「それでさ、どう思う?」


 そうだな……


「なぁ、クリス。姉さんとアトムってどんな感じだ?」


 恐らくこの家の中で一番傍に居るであろうクリスに話を振ってみる。

 セシルの手伝いをしていたクリスはしばらく考え……


「彼の方は言わずもがなでボスを慕っていますね。ボスも彼の事を結構信頼している感じです。お昼とかは大体一緒ですし、外へ出る時も割と一緒です」


 なるほどな。

 これはやはり……今までで一番手ごたえがある状況なのではなかろうか?


「やはりこれってお姉さまにとってかなりの大チャンスなのでは無いでしょうか?」 

 

 妹の言葉にアリス姉さんも頷く。


「うんうん。今までに無いくらいいい感じだよね。これはいけるかも」


「あんた達は甘いわね」


 リリィ姉さんは腕組みをして唸っていた。


「何だかんだ近くで見てきた私が思うにね……これはケイトにとって最後のチャンスよ!これを逃したらもうケイトは一生独身だわ!!」


 いや、いくらなんでもそれは言い過ぎ…………じゃないかぁ。

 そうだな。俺もアトムが挫折したらケイト姉さんはもう一生独身な気がする。

 

「というわけで、アリスがたまたま戻ってきたこのタイミングで私達にとっての最大のミッションにとりかかるわよ。ホマレ、あんたも勿論協力するわよね?」


「それはつまり、ケイト姉さんとアトムをくっつける作戦ってことだよな?」


 姉さん達が頷く。

 もはやこれまでの様に『姉さんが結婚するなんて嫌だ―』とか駄々をこねていられない。

 このミッション、失敗するわけにはいかない!!


高難度QUEST

目的:ケイト姉さんとアトムをくっつけろ 


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