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第9話 俺の上司は元殺人鬼

今回から登場する『イシダ・シラベ』はシリーズ共通の宿敵ですがあまりにも自由人過ぎて時々、元殺人鬼であった事を皆が忘れているような人間です。頭のネジは大分ぶっ飛んでます。

【ホマレ視点】


 猛スピードで街中を駆け抜け、警備隊の詰め所へと滑り込む。


「ふぅ、危なかったぜ」


「3分の遅刻だね。ホマレ君」


 待っていたのは上司からの無慈悲な宣告だった。


「いや、その……大目に見てくたさいよ、隊長」


 彼女はウォーグレイヴ・クリスティン。

 俺が所属する警備隊第7部隊の隊長だ。


「うーん……ああ、ちょっと眠くて時計を見逃しちゃったなぁ。君、いつの間に来たんだっけ?」


 物凄くわざとらしく、あくびをしながら彼女は言った。


「……感謝します」


「ふふ、『ナナエダ』によろしくね、ホマレ君」


 『ナナエダ』とは転生者である親父の旧姓だ。

 彼女はそれを知っている数少ない人物のひとりだ

 ウォーグレイヴ・クリスティンという名は実の所、偽名である。


 本当の名前は『イシダ・シラベ』。

 俺が居た前世の日本では戦後最悪の大量殺人を行った凶悪犯。

 そして親父の元同僚にしてこの世界に転生するきっかけを作ってしまった張本人だ。 


 どうも親父というか我が家に執着しているらしく昔から事あるごとにちょっかいを出しておりモンスターに変身して庭先で爆発撤退したりと無茶苦茶な事をする『頭のおかしい女』だ。

 かつてリリィ姉さんが異世界に家出した原因を作ったのもこいつの策略らしい。

 まあ、あれのおかげであの人は結果として今の旦那と出会えたりしてて悪いことばかりではないので微妙な評価だ。


 そんな女が警備隊の上司になった時は度肝を抜かれたものだ。

 どうも今度は俺に執着してるらしい。

 

「……そう言えば、部下としてではなく一個人として聞きたいことがあったんだ。ミラ湖の件だが……あんた、本当に関わっていないのか?」 


 あのモンスターは何かしら人為的な手が加えられている。

 そんな風に見え、真っ先に疑いの目を向けたのはこの女だ。

 彼女は苦笑しながら答える。


「昔は改造とか色々やってたけど最近はそういうのやってないよ?だって私、市民の安全を守る警備隊の隊長だもの?」


 地球で殺人鬼をしてた女が警備隊隊長とか本当に笑える冗談だ。


「そうであって欲しいもんだね」


「私もどうやら市民を守るという正義感に目覚めたんだねぇ」


 うわぁ、嘘くさい。

 よくもまあ堂々と……


「ということで今回の件と私は関係が無い。それじゃあ、そろそろ上司と部下に戻ろうかなホマレ君」

 

 いや、ちょっと誤解を生む言い方だなそれ。

 まるで俺が不倫してるみたいじゃないか。


「今君は、『誤解を生み言い方だな』とか思ったよね。まるで『不倫してるみたい』とかさ」


「うっ……」


「ふふふ、顔に書いているからね。安心しなさい。私は君が生まれた時から知ってるからそんな風には見ることが出来ないよ。オムツだって替えてあげたことあるんだからね」


 ああ、覚えてるよ。転生者だからその頃から俺はしっかり周囲を把握できていた。

 見たことない女性が俺のおむつを替えていて最初はお手伝いさんかと思って身を任せていたらおふくろ達が血相変えて部屋に飛び込んで来て戦闘が始まり大騒ぎになったからなぁ。


「ふふ、酷いよね。私は善意でオムツ替えをしてあげただけなのに君の親達ってば凄く慌ててさ。あの時は右腕を飛ばされちゃったんだよね」


 そりゃ頭のおかしい女が家に忍び込んで息子のおむつを替えてたら卒倒したくなるわ。

 ついでに飛ばされた右腕は数分後には生えて来ていたのでこいつは人間を辞めていると思う。


「私は頭がおかしいわけじゃないんだけどね。いたって普通だよ?」


「普通という言葉の意味を辞書で引いてみろ。絶対にあんたは当てはまらない。というか、さっきから俺の心読んでるな?」


「いやいや、そんな能力は持ってないよ。言ったじゃない、顔に『書いてある』って」


「!?」


 慌てて鏡を見る。

 顔には……『何も書いてなかった』。


「ふふふ、君をからかうのは面白いな。それじゃあ、そろそろ朝のパトロール頑張って行っておいで」 


 チッ、こいつ苦手だな……今は遠くにいる『娘』共々にな。


【フリーダ視点】


 わたしは準備を整え、預かったホマレへの弁当を手に警備隊の詰め所とやらを目指すことに。

 貸してもらった街の地図を眺める。

 やはり、国の首都ともなれば地図があるんだな。

 わたしが育った村にはそんなもの無かったからな……ていうかあの小さな村には必要ないし。

 

 とりあえず、地図を見ながらなら何とかたどり着けるだろう。

 冒険者ギルドだって何とかたどり着けたわけだし。


 ふと、右の中指から『糸』の様なものが出ていることに気づく。

 その『糸』は指から離れるはらりと地図の上に落ち、掻き消えた。


「え?今の何?」


 もしかして掻き消えた様に見えて風に飛ばされただけとかかな?


『重要なのは『流れ』。『手繰り寄せる』事で、目的に到達出来るから……』


 また、あの声が響く。

 何か微妙に肩も重い。リムさんは『害が無い』って言ってたけど、これって『憑りつかれている』気がするんだけどなぁ……

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