表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼夜行 ー 双子鬼 ー  作者: 昼咲月見草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/24

残された子ども

 5000年に1度、星々から光の力が()ってくる。


 その力の中には星々からの贈り物が入っていて、地球と約束が結ばれる。


 失敗しても、失敗しても、繰り返し諦めることなく。


 そしてまた5000年目がやってくる。








 いきなり1人になった。

 それは雨の日の事故だった。



 (まい)の家族が事故で死んでしまって、みんなで住んでいたこの大きな古い家に1人残されてから、女の子1人では不用心だからと親戚の一家がやってきた。


 父の従兄弟にあたるその家族は、最初は自分たちの家で一緒に住もうと言ってきた。

 舞がそれを拒むと、環境が変わるのは良くないだろうから、と、1人でいいという舞の言葉も聞かず押しかけてきてそのまま住んでいる。


 舞が住んでいる町は古くからの住人が多い。

 昔からの繋がりで強い立場にある一族もあり、その親戚一家も町で一目置かれて権力を持っていた。


 運が強く、商売がうまく、押しの強さで多くの住人に貸しを作っていたからだ。


 そんな彼らが舞の後見人となることに誰も意義を唱えられなかった。



 父の書斎も、家族の部屋も、何もかもその親戚たちが使うようになって。

 朝、目を覚まして1階へ降りていくと、舞の家族ではない彼らがそこにいるようになって。

 舞は朝起きるのが嫌になった。


 まだ8才だが、両親から土地と建物を相続したのは舞だ。


 だが舞の祖父母はとうに亡く、父にも兄弟はおらず、母は海を隔てて遠く真珠列島から嫁いできていたため、頼れる相手が他になかった。

 遠方から駆けつけた母の親族も、おじに『土地の人間でもないのに財産狙いなのか』と言われれば強く訴えられない。


 誰か一緒に住む後見人が必要だと大人たちが話し合い、全ては舞の知らないところで決まった。

 親族の中で1番裕福なのが、距離は遠いが同じ町内の畠中地区に住む彼ら川先家だったからだ。

 そうしてなし崩しに彼らは舞の家に入り込んできたのだった。


 それから4年。


 その一家は今も舞の家に住み続けている。








「やぁーーだ、可愛くなーーい」



 きゃはは、と笑いながらそう言って、楽しげに舞の制服を広げたのは瑠花(るか)だ。


 母親がクォーターで、曾祖母の血が強く出たのか全体的に色素が薄めで、白い肌と茶色いふわふわの髪、そしてややきつめだが明るい大きな茶色の瞳をしている。

 自分が春から通うことになっている私立の女子校の制服を着ていて、その上から舞の学校の、地味な紺の制服を当てていた。


 瑠花の制服は白のワンピースで、襟や袖口などに紺でラインが入っている。上から羽織るジャケットはボレロのように小さめで、瑠花の女の子らしい美少女然とした見た目にとても似合っている。


 ひるがえって舞の制服はといえば、古くからある山の中の公立の中学で、制服の変更も創立以来1度も行われていない。布や細部のデザインの変更はあったらしいが微々たるもので、セーラーの胸のリボンが白で小さくて可愛らしい以外に少女たちの目を惹く部分はない。


 学生服だということを思えば、可愛らしさも色っぽさもないのが1番なのだろうが時代の流れには合っておらず、『可愛くない』という瑠花の言葉に舞も同意見だ。

 だがやはり彼女に言われると腹が立つ。


 それでも何か言えば散々に言い返される事は分かっていたため、舞はただ彼女に近づいて「返して」と震える声で手を伸ばした。



「あたしの制服だから、返して」


「いいじゃない、ちょっと当ててみるぐらい。こんな地味な制服、あたし着る機会なんてないもの」


「自分の制服があるでしょ」


「えーー、じゃあ舞ちゃんも着てみればいいでしょ。貸したげるよ? この制服」



 言外に似合わないけど、と言われているような気がして、舞は唇を噛んでうつむく。


 瑠花はクスクス、と笑って舞に制服を押し付けた。



「かわいそーー、舞ちゃん。あんな山の中にある中学に行くなんて」



 そこへおばの怒鳴り声がする。



「瑠花! いつまでそうしてるの。舞、あなたも1度くらい瑠花の制服を着てみたらいいじゃないの!」


「じゃああたし、舞ちゃんの制服着るーー」



 舞は瑠花に最後まで言わせず、自分の制服を抱きしめると急いで2階にある自室へ走って行き鍵をかけた。


 強く握りしめたため、制服は少しシワになっている。

 それを手で撫でて整えると、ハンガーで壁にかけた。

 涙が滲んでくる。


 あともう少し、と舞はベッドの上でうずくまった。


 おじは仕事の関係でこの家にいない時間が多い。

 どうかすると、数日家を空ける事もあった。


 そして来年になれば、瑠花の兄の朗司(ろうじ)は大学へ進学してこの家を出て行くだろう。

 そうすれば、今よりちょっとは気が楽になるはずだ。



 大人になったらあんな連中、追い出してやる。



 家族を事故で亡くして以来、舞はおかしくなったと周りに思われている。


 惨めで、悔しくて、それでもどうすればいいのか思いつかない。

 分かるのはたった1つだけ。


『大人になれば』。


 大人になりさえすれば、あいつらを追い出す事ができる。


 声を殺して泣きながら、舞は布団の中で丸くなった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ