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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第二章 勇者と父

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第40話 第一王子、チョロい

 七割。

 その言葉をそのまま受け止めれば、クロアに七割まで力を認められたということ。

 逆を言えば、今のコルトには七割で十分だということ。

 コルトの心内は……後者に傾いた。



「チッ──!!」



 クロアの言葉は、コルトの心の逆鱗(プライド)に触れた。

 心を燃やし、だが頭はクールに。

 剣を八相に構え、超高速でクロアへ接近する。

 だがもうクロアに同じ手は通じない。

 動体視力と反射神経のギアを上げたクロアは、難なくコルトの手を掴んで止めた。



「フッ!」

「ッ!?」



 腕を捻りあげる。

 即座に曲げられた方に回転し、クロアの手を蹴り上げて無理やり引き剥がした。

 直ぐに距離を取り、腕を確認する。

 折れてはない。ちゃんと曲がるし、手も握れる。



「いい判断力だ。あと五センチ遅かったら折れていたな」

「本当に折れてたらどうするんだよ……」

「それは心配していない。お前の実力を信じてるからな」

「ぅ……もう、兄ちゃんったら……」

「照れてる場合か?」

「ッ……!?」



 今度はコルトが、クロアの姿を見失った。

 決して油断してるつもりはない。瞬きもしていない。視点をクロアだけに集中せず、遠山(えんざん)の目付けで周囲にも気を配っていた。

 それに加えてあの巨体。まさか見失うとは思わなかった。

 気配探知で周囲を確認するが、あれだけ濃密な気配と圧が完全に消えている。


 だがコルトも、いくつもの死線を乗り越えた歴戦の戦士。

 全神経を集中する。

 クロアと言えど、攻撃の際には闘気が漏れ出るはず。

 捉えるなら、チャンスはその一瞬。

 集中することしばし。

 チリッ──後頭部が僅かにチリついた。



「そこッ!!」



 振り返ると同時に剣を斬り上げる。

 いた、クロアだ。拳を振り上げているクロアがいる。

 だが寸止めなんてことはしない。クロアが相手なら、殺す気で……!


 遠慮することなく、全力で振り抜くと──ザクッ!!



「……ぇ……?」



 手から伝わる慣れた感覚。

 肉を斬り、骨を断つ。

 舞い散る鮮血。断ち切れる胴体。

 あまりの事態にコルトの思考と体は硬直した。


 が、次の瞬間クロアの体が空気に溶けるように消えた。



「……は?」

「こっちだぞ」

「んにゃっ!?」



 突如、脳天から伝わる人生初の衝撃。

 一瞬にして意識が飛び、騎士の命である剣を落として地面に沈んだ。



「ふむ。濃密な気配を応用した質量のある残像(、、、、、、、)を出す相手とは初めてか。まだまだだなぁ、コルト」

大人気(おとなげ)なさすぎるだろ、クロア」

「いや、これ陛下から倣ったんですが」

「む? そうだったか?」



 人外の会話を交わすクロアとアーシュタル。

 ミオンは極力無視し、水に濡らしたタオルを手にコルトに駆け寄る。

 膝枕で頭を支え、タンコブが出来ている脳天を冷やす。



「コルト様、大丈夫ですか?」

「……ぅ……ぅぅ……? ……あれ、君は……?」



 かなり強めに殴ったつもりだったのに、もう目が覚めたみたいだ。



「あ、クロア様とウィエル様の弟子、ミオンです」

「そう、か。二人のお弟子さん……ん? ……んッ!?」



 今の自分の体勢に気付いたのか、コルトは顔を真っ赤にして飛び起きた。



「すっ、すっ、すまないっ! 淑女(レディー)の脚に頭を乗せるなどしてしまい……!」

「いえ、私は気にしないのですが……ふふ。コルト様って純情なのですね。あれだけ強いのですから、女性にも強いのかと思っていました」

「う……まあ、その……兄ちゃんの強さを求めすぎて修行にのめり込むあまり、女性との縁がなくてね……」



 クロアと最後に会ったのは二十年前。

 それからというもの、強さを思い、強さを願い、強さを追い求め、強さのための人生を送ってきた。

 その為、女性との関わりが極端に少ない人生だったのだ。



「ふむ……アルカも問題だが、コルトも問題だな。その歳で女性経験がないとは……」

「じょじょじょじょ女性経験がないとは言ってないからなぁ! 言ってませんからなぁ!!」

「えっ、コルト君って童て──」

「ちげーますぅ!! ちげぇますぅ〜!!」



 クロアとウィエルからの生暖かい目を向けられ、顔面が真っ赤になるコルト。

 この時代、十五歳で一児の親になることは珍しくない。結婚までは行かなくとも、遅くとも二十までには経験の一つや二つは済んでいる。

 コルトの年齢は二十五。しかも王子となれば、結婚していてもおかしくない。



「陛下、コルトの婚約者はいらっしゃるのですか?」

「いるにはいるが、この鍛錬馬鹿は放置しすぎていてな。更に仕事で国中を飛び回っていて、まだ会ったことすらない。最近は嫌気がさしたのか、婚約破棄されそうになっている」

「アホすぎる……」

「グサッ」



 コルトの胸にクリティカルヒット。

 脳天パンチとは別の痛みが全身を貫いた。



「うぅ……でも頑張らないと、兄ちゃんみたいに強くなれないじゃないかぁ……!」



 涙を流すコルト。

 流石に見かねたのか、ウィエルがそんなコルトの肩に手を置いた。



「コルト君。鍛錬や仕事も確かに大事です。ですが、それで本当に旦那みたいになれるとでも?」

「ぇ……? それって、どういう……?」






「旦那は強い上に、妻である私をこの上なく大事にしていますよ」

「俺、婚約者に会ってくる!!」

((((チョロ))))






 図らずも、この場にいた全員の気持ちが一致した。

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― 新着の感想 ―
[一言] この会話を見てると陛下もかなり人外よりなんじゃ( ̄▽ ̄;)
[一言] >濃密な気配を応用した質量のある残像 このおっさん、生身でガンダムF91みたいなことを・・・ >いや、これ陛下から倣ったんですが ・・・ま、まあF91はあれでも量産型MSですしね
[良い点] 楽しく拝読させていただいています。 昨日見つけて一気に最新話まで読んでしまいました。 [気になる点] 腕関節を捻りあげるという表現が気になりました。 腕を捻りあげるだとわかるのですが、 関…
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