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【Web版】どうも、勇者の父です。~この度は愚息がご迷惑を掛けて、申し訳ありません。〜  作者: 赤金武蔵
第二章 勇者と父

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第38話 国王、告げる

 久しぶりに会ったクロアとウィエルを見て、ずっとテンションが上がりっぱなしのコルト。

 流石に話が進まないと思ったのか、アーシュタルはこほんと咳払いした。



「よいか?」

「あっ……! す、すみません、陛下」



 テンションが上がったのが恥ずかしかったのか、コルトの顔は真っ赤だ。

 アーシュタルも苦笑いだが、直ぐに緩んだ顔を引き締めた。



「今日の要件は二つ。まず勇者アルカ殿のことだ」

「……勇者殿の?」



 コルトも顔を引き締め、四人をソファーに勧めた。

 待機している騎士がお茶を入れている間、アーシュタルが現状のアルカについて説明する。

 最初は真顔で聞いていたコルトも、話を聞くにつれて顔色が青ざめていく。


 アーシュタルの説明が終わり、場に重い空気が流れた。

 コルトも、アルカがクロアの息子だということは聞いていた。

 だからこそ自分が面倒を見たかったのだが、如何せん騎士団長として激務に追われる日々。だからこそ信頼する副団長、ベレッタに任せたのだが。



「まさかあいつが、淫魔の魔法に操られるとは……」



 誇り高き騎士道に身を置く者として、そんなことはあってはならない。

 いくら相手が魔王軍幹部と言えど、絶対に。



「兄ちゃん、姉さん……いや、クロアさん、ウィエルさん。この度は本当に申し訳ありません」



 なら自分に出来ることは、精一杯の土下座だった。

 流石に一国の王子が土下座なんて許されない。クロアとウィエルは慌てて立ち上がり、コルトの肩を掴んで頭を上げさせた。



「や、やめてくれコルト。王子たるお前が、一介の村人にそんな簡単に頭を下げるな……!」

「そうですよ。コルト君が気にすることありません」

「しかし、勇者殿は人類の希望。更には昔お世話になった恩人のご子息。それを預かる身でありながら、このような不始末。どのように詫びれば……!」



 コルトの胸の中は羞恥と申し訳なさでいっぱいだ。

 もし自分の身がもっと自由であれば、自分がアルカの面倒を見ていただろう。

 嘆いても嘆ききれない。悔いても悔やみきれない。

 そんなコルトの前に、アーシュタルが跪いた。



「コルトよ、顔を上げよ」

「陛下……この度の非は、全て私のせいです。責任を取って……」

「いや、いい。過ぎたことをどれだけ悔いてもキリがない。時が戻らない以上、過去を振り返っても過去は変わらん。だが現状を少し変えれば、自ずと未来は変わる」

「……ハッ」



 アーシュタルの言う通り、今更過去は変えられない。

 なら、次はどうするか、だ。



「アルカ殿は既に罰を受けている。クロアの恐怖も再確認したようだし、同じような間違いは起きないだろう。騎士団はそれを全力でサポートするのだ。よいな?」

「ハッ!」



 頭の中で訓練内容や管理方法をシミュレートしていると、アーシュタルが「ところで」と話を変えた。



「要件の二つ目だが、私は近々引退する」

「はぁ、いんたい……え?」



 いんたい、インタイ、いんたい……?

 言葉の意味がわからずフリーズしてしまった。

 呆然としたまま、コルトはアーシュタルの言葉を聞く。



「文字通り王位を退く、という意味だ」

「そんな! まだお元気ではないですか!」

「私も歳には勝てん。それに元気なうちに、次の王を育てなければならんからな」



 コルトを立たせ、アーシュタルの目が真っ直ぐに向けられる。

 何となく察しはついている。

 だが、どうしても受け入れ難い。



「そしてその座には、コルトに継いでもらおうと考えている」

「……そう、ですか……」

「何を惚けている。この国の王位継承権第一位はお前だ。わかっていたことだろう」

「そ、そうですが、私は剣を振るうことしか能のない男ですよ?」

「私も昔はそうだった。地位は人を作るというだろう。それに最初は私も付いている。安心しろ」

「安心しろって……」



 いくらなんでも唐突すぎる。覚悟も何も出来ていないし、今は魔王軍との戦闘も各地で激化している。

 あまりにも時間がないのに、この状況で王位に就いていいものなのだろうか。



「何、今すぐという訳ではない。お前も次期騎士団長への引き継ぎ等があるだろうからな。私もまだ動ける。一、二年を目処と考えて欲しい」

「……承知しました、陛下」



 いつまでも子供みたいにうだうだ言っていられない。

 いつかは来るとわかっていた。なら後は覚悟を決めるだけだ。

 内心鼻息荒く息巻いていると、クロアがコルトの頭を撫でた。



「コルト、何かあれば俺らを頼ってくれていいからな。荒事だけは得意だ」

「自信満々に言うことじゃありませんよ、あなた。まあ、可愛い弟分の頼みでは、やぶさかでもないです」

「……はは。うん、ありがとう兄ちゃん、姉さん」



 そんな三人を、アーシュタルは微笑ましく見つめる。

 が、ミオンだけが戦慄していた。



(気付いているのでしょうか……今コルト様は、最強の懐刀を手にしたことを)



 アルカと話していたことが聞こえていたが、クロアは魔王を一度殺したことのある村人。

 ウィエルも魔法の腕にかけては世界最強だろう。

 そしてコルト本人も、王国最強と呼ばれる騎士。



(更生したアルカさんもいるし、今は魔王という人類共通の敵がいるとはいえ、もし将来的に国家間の戦争が起こったら……この国に手出しするのは、命取りでしょうねぇ……)



 だが、ミオンも気付いてはいなかった。

 そんな化け物の弟子として育てられている、自分のことを。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 種族というアドバンテージがあるとはいえほぼ努力で強くなるミオンちゃんには好感持てる [気になる点] ベレッタも王子が代わりに土下座するような失態しといてよく勇者へのビンタ制裁に加わる事がで…
2021/12/22 11:50 退会済み
管理
[一言] そのうちミオンも 「あれ?私何かやっちゃいました?」とか言い出すんですね 俺にはわかる、俺は詳しいんだ
[良い点] 化け物の弟子、ミオンちゃんはどう改造されてしまうのか?
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