第2章
─新たな登場人物─
豊穣 計土
新聞の部長を務めている。
絆名新聞を守ろうとしている人でもある。
──
キーンコーンカーンコーン!
「はい、これで講義終了。皆お疲れさん。あと僕はいつも通り研究室に引きこもるから、何かあったらおいでね~」
とだけ言って、素早く教室から出て行くこの科目の担当教師。
「はぁー・・・。とりあえず単位を落とす事は無くなった」
謎の安心感に浸りながら、帰宅の準備をする。
「さて夜まで沢山の時間もあるし、白紙の本の謎と無期の回廊についての調査に行くか」
よっこいしょと地味に重いリュックサックを背負い、ガラッと教室から出て廊下を歩く。
「はぁ・・・それより今日はやけに暑いなぁー。」
中に空気を入れる為に、服を摘まみながらぱたぱたと動かす。
「なんか涼しくなるような事あれば良いのだけどなぁ・・・・・。うん?てかあれは・・・何だ?」
校内の部活や研究、アルバイトなどの広告や学校からのお知らせなどが、掲示板全体を埋め尽くしていた。
「・・・さすがに量多くないか?」
「この時期は色々イベントがあるから、どうしても多くなってしまうんだよ」
「教授っ!?」
通りすがりの先生に、独り言を聞かれてしまった。
「これを気に君も何か始めてみるのはどうかな?新しい事を始める事で、今まで同じに見えた世界が、また違った世界を映す・・・・かもしれないよ?」
そう私に言いスタスタと、教授は自らの研究室に戻って行った。
「新しい事かぁー。まだ一年生だし大丈夫な気もするが・・・・・・・・あっ、これとか良さそうだな」
複数枚束ねられている張り紙に手を伸し、その一枚の紙を綺麗に切り取った。
書かれていた内容は
─新聞部─
絆名新聞に興味ある方を募集しています。
活動場所 一階の空き倉庫
一言
広い内容の新聞を皆で、作りましょう!
詳しくは、部長 豊穣 計度まで
──────
とのこと。
ちなみに絆名新聞というのは、この海状学園内限定の新聞の事。
たまに見るが書いている事は、非現実の事や学内の行事や、地域のイベントや伝統など意外と話題の範囲が広いから、暇つぶしになる。
ちょいちょい、これ絶対嘘だろと思うこともあるが・・・まぁ、きっとそこが絆名新聞の魅力の一つなんだろう。
「特に時間とか書いてないけど・・・今見学に行くとか大丈夫なのだろうか・・・・まぁ、いいか」
なんて思ったが、書いてないから別にいつでも行って良いということなんだろう。
もう少し先の廊下の端にある階段から、一階へ向かう。
(空き倉庫よく借りれたな・・・。なーんか倉庫と聞くとホコリが舞ってそうなイメージなんだけど)
コツコツと段差を下りていく。
(新聞部って意外と情報持ってそうだしもしかしたら、なにかヒントとなるものがあるかもしれない)
と思いながら3段目からピョンと飛び、スタッと地面に着地した。そして現在1階の廊下。
この廊下をまっすぐ行けば、一階の空き倉庫に辿り着く。
別にそんな緊張する事でもないのに、どこか落ち着かない気持ちで私は歩を進める。
─空き倉庫前─
見た目は、体育館倉庫に似ている。中は知らないが
「ここが・・・空き倉庫か。なんか実際に見てみると・・・・こんな所で記事書けるのか?」
コン コン コン ガラッ
「失礼しまーす。見学に来ました」
「おぉー、いらっしゃい。いやー嬉しいよ新たな仲間が増えるのは。なんたって最近部員全員が、退部しちゃったからさー。一人で寂しかったんだよねー」
背もたれ付きの椅子に座り、カメラをいじるのに夢中になっているのか顔も合わせずに淡々と言う男。
「いや、私見学に来ただ・・・・」
「いーじゃん、意外とおもしろいよ?この部活。それに絆名新聞制作に携われるなんて、光栄な事だよ?」
「個人的にはまだ、その事が光栄なのかは分かりません」
ハッと軽く鼻で笑って、やっと手を止め顔を上げた。
「それもそうだ。じゃあ今から実際の現場を体験して貰う。今回の狙うスクープは・・・・・君だよ。睡蓮司遊科君」
「・・・・・部長とは初対面だと思っていたけど、何処かで合いましたっけ?てか、現場初見学での最初のスクープが私とか!」
地味に目が引きつりながら、そう答えた。
「君にとっては初対面、俺にとっては前々からあそこはスクープの塊だったから。色々調べてたんだよ」
「・・・?。よく分からないが、要するに前から私をストーカーしていたって事なんだな!?」
はぁーーと長いため息をつき、そして面倒くさそうな顔をしながら、またカメラを触り始める。
「人聞きの悪い事を言う。というか、君本当に何も知らないのかい??水恋神社の巫女さんの癖にか?」
「・・・何が言いたい?」
「ハッ、・・・・赤い月の日には必ず一人だけ失踪する未解決事件。その事件で失踪した犠牲者は・・・・全て名字に睡蓮司とついていたんだ」
「これが何を表すと思う?」
「・・・・・・・」
何故か嫌な汗が出てくる。これが冷や汗なのかは分からない。
「正解は、君がこの新聞部に正式に入部すること。これが事件の紐を解きほぐす為の手段・・・・じゃあないかな?」
不気味なぐらい楽しそうにしながら、彼はそう言った。
「相手に乗せられるのは、あまり好きじゃねぇけど・・・・今回はその話に乗った」
「あはは!君なら分かってくれると信じていたよ。改めてこれから、ヨロシクお願いするね」
「勘違いしないでくださいよ。ずっとよろしくは無いかもしれませんよ?」
要件が終わったらすぐ退部する・・・そんな意味を込めてね。
「手厳しいねー」
ニヤニヤしながらわざとらしく言い放つ。
そしてフラフラと部室の中にある小さな窓の近くまで行き、部長はこう言った。
「では始めに君は 12不思議怪奇 というこの町のオカルト話を知ってるかい?」
小さな窓から差し込んでいた光が急に影を作り、部長は不気味に笑いかけた。