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調子に乗って俺は失敗した。

流れはテンプレ気味にしつつも明後日の方向を目指していきたいなと思っております。

 硬い車輪の振動を尻に感じながらこの先どうすれば良いか分からなかった。


『HiーーーHwoーーー!!』


 痩せ細った体躯からは到底想像もつかないほど素早く、まるで戦車を曳く軍馬のように地面を力強く蹴りながら物凄く甲高く嘶き爆走するロバに俺は久方ぶりの死の恐怖を感じていた。

 

「止まれぇっ!?」


 事の始まりは十分ほど遡る。


 変化したスキルが以前とどう違うのか確かめようと思った俺は、モノは試しと失敗する前提でロバに向けて『闇金』を使ってみた。

 『貸与』はステータスを貸し与える為には双方合意の上で相手にもステータスがある事が前提にあり、意思疎通が叶わずステータスを持たない動物に向けても効果は発揮しなかったからだ。

 結果、これは予想していた通りうまく行かなかった。

 次いで徴収された【レベル】はどうかと試してみた。

 【レベル】が『貸付』されたなら付随してステータスも獲るため他の付与も可能になるかもしれないと考えたからだ。

 結果、【レベル】は問題なく貸し付けることが出来た。


 今思えばここで一旦止めるべきだった。


 既に同意無しに【レベル】を『貸付』可能だと判ったのだから、ステータスについては後にするべきだった。

 しかしはっきり言えば調子に乗っていた俺にその選択は選べなかった。

 そうしてステータスの『貸付』を行った結果、ロバは唐突に爆走を始めた。

 ステータスが上がるに連れ昨日まで無理だったことが問題なくなる感覚を良く知っている。

 ロバからしたら必死に引いていた馬車の重みが消え、力が漲っているように感じたのだろう。

 そして、高揚感に任せるまま思いっきり駆けてみたいと走り始めたと。

 尤も、馬車に乗っている自分からしたら堪ったものではない。


「暴走してんじゃねえよ馬鹿ロバがぁっ!!??」


 手綱を引こうがお構いなしに駆けるロバ。

 どころか邪魔だと言わんばかりに鼻を振って振り解こうとする始末。

 正直不味いどころではない。

 さっきら馬車がガタガタと嫌な音を立てていて、変な衝撃を喰らえばバラバラに壊れてしまうかもしれない。


 ガタンッ!!


 一際大きな音と同時に自分の身体がふわりと浮いた。


「ひぁっ!?」


 間抜けに聞こえる悲鳴が自分の口から溢れたのを他人事のように石か何かを踏んだらしいと思った直後、馬車が壊れる音と激しい衝撃が全身を叩きつけ視界がグルグルと回った。


「いっっ…」


 倒れたまま骨が折れたり木片が刺さるなどの重篤な怪我は無いと確かめ、そのまま仰向けに転がると痛みと情けなさで暫く動けずそのまま空を眺める。


「何やってんだ俺は…」


 スキルを手に入れたばかりの子供でもあるまいに、はしゃいだ挙げ句に馬車を壊して使い物にならなくしてしまった。

 おまけにロバも何処かに行ってしまったし、こんな姿を誰かに見られたら恥ずかしくてどうしようもない。

 しかしいつまでも落ち込んで入られない。

 ロバに貸し付けたレベルとステータスも回収しなければならないし、『闇金』についてもまだまだ調べねばならないことは沢山ある。


『Hiーーーー!!』


 と、帰属意識があったのか遠くからロバの嘶きが近付いてくるのが聞こえた。


「意外と……って、ええ!?」


 嘶きが聞こえたほうを向くと、土煙を上げてこちらへ駆けてくるロバと、そしてその後ろに巨大な鱗に覆われた鳥が迫っていた。


「しゃ、シャンタク鳥…」


 シャンタク鳥は全長2メートル前後のCランクに類される肉食の魔物で、氷結魔法には似た氷塊を打ち出す攻撃をする個体もいる難敵である。

 余程ステータスが偏っていなければレベル10前後の冒険者ならどうにか出来なくもないが、弓やボウガンも無い状態のステータスオール1の俺ではどう頑張っても手に余る。


「…っ、マズイ!」


 ボケっとしていたらロバ諸共シャンタク鳥の餌になると俺は荷物を掴むと全力で走り出した。

 しかし空を飛ぶシャンタク鳥の速さに適う訳がなく距離はみるみる内に詰まっていく。


『HiーーーHwoーーー!!』

「こ、このクソロバがぁ!!??」


 走っているとロバが俺を追い抜きそのまま走り抜けていき、奴が自分が助かろうと俺にシャンタク鳥のヘイトを擦り付けたのだと理解して、余計にシャンタク鳥の関心が向いてしまうのも忘れてつい叫んでしまった。


『KiKiKiKi!!』


 硝子を擦るような鳴き声を上げ、鋭い鉤爪を開いて俺を掴もうを脚を伸ばしたシャンタク鳥に死を覚悟した刹那、風を切り裂いて飛来したボルトがシャンタク鳥の目玉を射抜いた。


「っ!!??」

『Kiーーーーー!?』


 痛みからか悲鳴らしき鳴き声を零すシャンタク鳥。

 更に一本のボルトが胴に突き刺さると若い声が勇ましく響いた。


「行けラクーン!!」

「承知の助で御座る!!」


 名前らしき呼び掛けに宙を舞いながら奇妙な返事を返したのは、これまた変な生き物だった。




 

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