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こうして俺はクランを追い出された。

書き溜めは少々心許ないですがこれ以上待たせるのもなので始めて行きたいと思います。

 正直な話、唐突に、とは思わなかった。


「アッシュ。君にはパーティーを抜けてもらう」


 王都の宿屋にて、自分が所属する冒険者クラン『赤光』のリーダー『トール』は厳しい表情で俺にそう告げた。


「理由は、役立たずだからであっているか?」


 事実確認というより再度確認の意味を込めて問うと、「当たり前だろうが」と横から吐き捨てるように声が飛んできた。


「レベル30にもなってステータスオール1の雑魚なんか、栄えある勇者一行に居られちゃ迷惑なんだよ」


 誰のせいだという言葉を飲み込み、詰りの言葉を投げつけて来た幼馴染に視線を向ける。


「止めてくれカールマン」


 宿の中にも関わらず力を誇示するように傷だらけのフルプレートを着込むカールマンをトールは諌める。

 しかしカールマンはトールの諌めに呆れた様子で肩を竦めた。


「ハッ、王国指定の勇者の称号を得た途端にキザったらしくなってまぁ。

 アレか? 第3王女様に釣り合うようキャラづくりか?」

「あんたねぇ!!」


 品の無い野次に斥候担当の少女が噛み付く。


「何だメリッサ?

 …ああ、大好きな勇者様がお姫様に寝取られてご機嫌斜めなのか。

 なんなら俺が相手してやるぜ?」

「ブチ殺されたいみたいね野良犬野郎」

「ああ!? 雌猫風情がイキがってんじゃねえぞ!」


 魔導湯沸かし器かと疑うほどの速さで沸騰した二人の出鼻を挫くように静かだがよく通る声が場を鎮める、


「二人共主旨から外れないでください」


 この場にいる最後の一人、神官服の女性が二人を制するのを見計らっていたようにトールが再度口を開く。


「アンジェリカの言う通りだ。

 アッシュ。君がスキル『貸与』の力で俺達を補佐し、雑務を引き受け続けてくれた事は感謝している。

 だが、俺達『赤光』は勇者指名と共に魔王討伐の任務を下された。

 正直、君を守りながら魔王討伐の任務を続ける余裕は無いと思っている。

 だから、」

「いや、十分だ」


 耳に心地良い勧告を遮り、俺は腹の奥に渦巻く感情に蓋をして顔を上げる。


「私財管理と物資管理の後任はちゃんとしているんだよな?」

「ああ。王立騎士団の方から人員を寄越すと言質を貰っている」

「ならいい」


 正直な話、俺にとってこのクランは居心地がいい場所では無かった。

 俺に宿ったスキル『貸与』を目当てにしたカールマンに引き連られて故郷の村を出てから8年。

 同じくスキルを微塵も楽しいとは思えない雑用から開放されるというのだから個人的にはそこまで悪い話ではない。

 ただ、


「できればトール達に『貸与』で渡した俺のステータスを返して欲しい」


 無理だろうと思いながらも一縷の可能性をと口にするも、帰ってきた答えは予想通りの反応だった。


「ハァ? アンタさぁ、これから魔王退治に行くって人間に何言ってるの?」

「アッシュさん。

 いつの間に知性まで私達に『貸与』なされていたのですか?」


 本気で見下した声で吐き捨てるメリッサと丁寧な物言いで俺を嘲るアンジェリカ。


「アッシュには悪いが、メリッサの言うとおり1ポイントでもステータスの低下は避けたいんだ。

 だからステータスの返却は魔王討伐の任務を終えるまで待っていてくれ」


 更にトールからのダメ押しによりこちらの要望が通る目は無くなった。


「今まで俺たちに尽くしてくれた礼だ。

 退職金と村までの馬車は用意してやるから、故郷で俺達の凱旋を心待ちにしていてくれや」

「……ああ」


 理も力も敵わない俺にはそう答える以外無い。


 こうして、俺の8年間は冒険者としての生活は端金という成果のみで終わりを告げた。


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