「今は二人きりがいい。・・・栞奈、ごめん」
校外学習当日。
「夢羽、お~はよ♡」
「おはよ。テンション高いね・・・これから何時間歩くかわからないってのに・・・」
夢羽は重たいリュックをよいしょ!と背負いなおした。
「そんなことなーい!だって俺には、夢羽がいるもんね~」
「いやいやいや、他の人もいるんじゃん?栞奈とか、リクっちもか」
「そういうことじゃなくて。今日は神社にも行くんでしょ?あそこね、恋愛の神様がいるらしいよー」
晴斗は夢羽の耳にぐっと口を近づけた。
「だから俺たち、永遠ねがっちゃお☆」
「は、恥ずかしいこと言うんじゃないバカッ!!」
夢羽が顔を真っ赤にしてそう返すと、晴斗はにやにや笑った。
「否定してないじゃん~」
「・・・あのねぇ・・・」
「はーい、班長集合!!」
先生の声がかかって、「じゃ、また後でな」と、晴斗はいってしまった。
栞奈が見ていたのを気が付いたのは、晴斗だけだったらしい。
「おぉ~、ここが恋愛の神様がいる神社ですね?」
「あら、リクっちくん、すごいじゃない。勉強してきたの?えらいわねぇ」
「自分の恋と、同じ班のカップルの恋と、あと先生の結婚を楽しみにしてるんでー」
「最後のいらないと思うけど」
先生は29歳。彼氏はいるんだけど、結婚してないのだ。
「そうかぁ、夢羽と佐々木っちの恋も、ここで願わなくちゃいけないのかー。神様は自分と佐々木っちの二つの恋をかなえてくれんのかなー?」
「欲張りすぎじゃないの、男子ったら。でもうちらは、二つ願うけどねーっ♡七海!」
「お願いします!!今年こそ、彼氏欲しいよぉぉぉ!!」
リクっちが目を光らせたところで、ちょうど夢羽の組の順番が来た。
「まずはいちれ―――――――」
「分かってますって、せんせ。夢羽、行こう♡」
晴斗が夢羽の手を握った、その時だった。
「・・・やだ。夢羽は、私と願い事するんだよ」
そう言ったのは、栞奈だった。
「邪魔すんなよな。俺らは、永遠を願うのー。そーゆーのは友情の神社でやれよな」
「そう・・・なの。今は二人きりがいい。・・・栞奈、ごめん
栞奈が不満げに去っていった。
「・・・チッ。なんで邪魔してくんだよあいつ」
晴斗は舌打ちしてから、ふと気が付いた。
(・・・もしかして)
栞奈と夢羽の関係がおかしくなっているのを、晴斗も気づいていた。それは、晴斗と夢羽が付き合うようになってからのことで。それから、ずーーーっと晴斗のことを幸せそうに見ていて、夢羽のことをにらんでいるのも、晴斗は気づいていて・・・。
(・・・俺のこと好きなの?)
ぱん、ぱん!
夢羽の手をたたく音が聞こえて、慌てて晴斗も、最初からやり始めた。
そして手をたたいて、目をつむって、
(夢羽とずっと一緒にいられますように。それから、三好が変なことを始めませんように・・・)
(晴斗とずっと一緒にいたいです。・・・あと、栞奈を元に戻してください、神様・・・・!)