「俺の好きな人は、夢羽でーーーす!!!」
「ねえ、いいから教えて!お願い!ね?絶対誰にも言わないからっ」
夢羽はずいずいっと晴斗にせまる。
「いやだね。俺様は言わない!はっはっはっ」
「何よ!佐々木っち、いつもそんな風にごまかして!」
「だって好きな人教えてって言われて、そんな簡単に教えるやつがどこにいんだよ」
キーンコーン・・・
「あ、残念でした。また、時間切れかよ」
「あんたが教えてくれなかったのが悪いんじゃないっ!」
夢羽は叫んだ。晴斗は笑いながら去っていく。
加藤夢羽ははあっとため息をついた。
加藤夢羽、彼女は情報通。クラスの好きな人を、晴斗以外全員知っている。
だから晴斗の好きな人がどうしても気になるのだ。・・・それ以外にも、理由はあって。
「夢羽!きーけた?」
「ごめん栞奈!今日もまたダメだったー・・・」
栞奈、三好栞奈。栞奈は、晴斗のことが好きなのだ。明るく元気。怖いもの知らず。
ちなみにさっきから出てきている晴斗とは、佐々木晴斗のこと。
佐々木晴斗、あだ名は「佐々木っち」。みんなからそう呼ばれている。
一言で性格を言うなら・・・「チビでパリピ」。
顔も大してかっこよくない。
足も速くない。
頭もどちらかと言えば悪い方だ。
おまけにモテたくてモテたくて、いつもかっこつけてる。
だから、栞奈には悪いけど、夢羽は初めて聞いたとき、正直、ありえないって思ってしまった。
「でも・・・明るいとことか、周りを元気にしてくれるとことか!私、そーいうとこが好きなのかな」
栞奈はそう言って、佐々木っちの好きな人を知りたがった。
だから、夢羽は聞いているのだ。けど教えてくれない・・・と、考えていたその時。
「おーい、加藤」
「佐々木っち!何よ、やっと教える気になった?」
「・・・言うよ?いいのね?」
「おう、どんとこいや!」
夢羽はそう言った。
やった教えてくれる・・・!これで全員制覇だし、栞奈の恋も・・・!
ものっすごいでかい声で言った。
『俺の好きな人は・・・・・夢羽でーーーす!!!』
「・・・はぁぁぁぁぁっ!?!?!?」