無題11
真っ白い壁が彼を四方取り囲んでいた。上を見上げると、壁が宇宙まで続いていることがわかった。四角く切り取られた黒は彼をもの悲しくさせるのに十分だった。
さあて、一体どうしたものか。この壁から抜け出す手段はなさそうだが。壁は固くて壊せない、地面を掘るのも現実的ではなかろう。さあて、一体どうしたものか。いや、どうこうできる話ではない、何もできないということに他ならない。
彼はどのくらいの時を過ごしたのかわからなかった。最初こそ何かとりとめもないことを考えていたが、なにも考えることはなくなった。壁にもたれて座っていた彼は、自分の血が上空の宇宙へと蒸発されていくような気がした。その感覚は彼を穏やかな心持ちにさせた。彼は何を考えることもできなくなっていた。
いつの間にか彼は、石像になってしまって、もう動かなくなっていた。