1-1 戦いから闘いへ
新参者ですが、よろしくおねがいします!
多い説明、文章のミスがあると思います。ご了承ください。
「君は、英雄に憧れたことはないかい?すごい力を持っていて、国や世界を悪い奴らから守る。そんな人物」
ふと、どこからともなく問いかけられる。
もちろん考えたことはある。人から慕われて、尊敬され、認められる そんな人になりたい、誰もが一度は考えたと思う。
確かにそれは魅力的で、考えるだけでも楽しくってしかたがない。
だけど、そんな英雄になれるはずはない。考えたもののすぐに諦めてしまう。
諦める。というよりは ありもしない架空の出来事を考えている自分に呆れてしまう。
「あるはずだ、絶対の力を持つ英雄に憧れたことが。」
「でも、無理だと悟っただろう。そんなすごい人物になれるわけない。ははっ 確かにそうだね。」
まるで自分の考えていることが分かっているような口ぶりで誰かが 笑う。
「でもね、僕にはそれができてしまうんだよ。」
「他人に絶対の力を与えることがね。」
何を言っているんだろうか、そんな事ありえない。ましてや人に与えるなんて、ばかばかしい
だけど、『見てみたい』そう思った。絶対の力を持った時、世界はどんな風に見えるのだろうかと。
「でも、君にはまだあげられない。あと少し時がたてば もしかしたら・・・」
それを言うと不思議とその声の主が離れていくのがわかった。
感覚があるわけではないが、もっと聞いていたいと思い手を伸ばす。
その瞬間、目が覚めた。
「んぁ......あれ。」
目覚めると、仰向けに寝た状態で腕を突き上げていた。
「今、誰かと話して....ってうぁ!」
そこで、ベットから転げ落ちて、床に叩きつけられる。
「いってて....あれ、朝か」
窓からはカーテンが掛かっているものの光が薄っすらと差し込んでいる。
「なんだか今日は変な夢を見てしまったな。」
そう一言呟き、起き上がる。すると朝の和やかな空気を裂くように警報が鳴る。
「緊急警報、緊急警報。北区C市街にB級ラークシャス出現。市民の皆さんは直ちにブラックボックスへ避難してください。繰り返します。緊急....」
ナレーターと思わしき人がでかいスピーカーから市民へ避難の警報を送る。
聞きなれたこの音で焦るでもなく、落ち着いた動きで服を着替え身なりを整える。
そして窓を開ける。
「朝から迷惑なやからだな。」」
すると近くにあった、鞘に納められた刀を持ち。
「今日もよろしくたのむよ、幻騎」
そう一言うと窓から隣の家の屋根へと跳び、警報で知らされた場所へと向かった。
・・・
霧矢 裕
性別:男 年齢:17 好きなもの:小動物 嫌いなもの:ラークシャス 能力:覚醒 武器:幻騎『アマテラス』
「おい、起きてるか?」
霧矢裕は刀に話しかける。すると刀の辺りから声が聞こえる。
「なんじゃ、朝早くから。私は眠いのじゃ、静かにせんか。」
不機嫌そうな声色で返事を返してきた。
「そんなこと言うなよ、今はそれどころじゃないんだ、出番ですよ 出番」
「出番じゃと?毎回毎回雑に扱いをって、私は神じゃぞ?もっと敬意を込めて扱わんか、主よ」
「これでも敬意を持って、扱ってるつもりだよ。実際幻騎が依代になってくれなかったら今こうして戦えてないわけだし。」
幻騎の機嫌をとりつつ目的地に向かう。屋根や電柱を足場に跳びまわる、いつものことだった。
昔から、この世界ではラークシャスという怪物に人類は脅かされていた。
ラークシャスはマナの量と筋力でランク付けされている(弱い方;C級、B級、A級、S級、未知数;強い)
いつ生まれたのか、どこにいるのか、どうして人や動物を襲うのか、未だに不明。
なにより、出現の仕方が空間を割るようにして出てくる。しかも不規則に、いつ襲ってくるかもわからない。
それでも人類は対抗すべく色々な作を練ってきた。
魔法、魔術、武器、幻騎、それぞれの能力。これらを扱う人たちの事をディスパレーターと呼ぶ。
しかし、ディスパレーター(魔法や幻騎といった物を扱う人)は限られていた。
魔法が扱えるほどのマナを持っているのか、幻騎を扱える程の忍耐力があるのか、武器を扱いこなせるのか。
ディスパレーターが増えず被害が収まらないでいるし、、ラークシャスの住処もわからないでいる。
そういった理由でラークシャスを完全に狩りつくせないでいる。しかし被害を最小限に抑えるためにディスパレーターはいる。
霧矢裕はそのうちの一人だ。霧矢裕は幻騎を所持しているが、そもそも幻騎は並大抵の人間が持つことはできない。
手にした瞬間幻騎が、力を蓄えるためにマナを吸い取ろうとする。人間はマナが無くなるとその時点で脳や、内臓のすべての機能が停止する。
幻騎はマナを吸い取る速度、量が 魔法や魔術を使うよりも圧倒的に多い。しかし、それは幻騎を扱うには必須なのだ。莫大なマナを蓄えると同時に
他の魔法や魔術とは比べ物にならないぐらいの力を出すことができる。
霧矢裕はマナの量が多かったのと、ラークシャスに母を殺された理由で幻騎を手に持ち、ラークシャスと闘っている。
そして、霧矢裕は目的地に着く。目の前には全長4m程あり、全身が体毛に覆われ、ゴリラのような体格にでかい口に鼻。目は体毛に隠れて見えない。
そんなラークシャスが息を荒くしてこちらを向いていた。
「アマテラス、準備はいいか?一気に仕留めるぞ。」
「わかっておる」
そんな二人の戦いなれたであろう会話が一瞬あったあと、B級ラークシャスが口を開けてこちらに突進してくる。
そんな姿に恐怖するでもなく、ただラークシャスをゴミのような目でみながら鞘から刀を抜く。
「うるせぇよ、豚野郎。」
一瞬にして霧矢裕はラークシャスの背後にまわったかとおもうと、ラークシャスは既に真っ二つだった。
「B級は斬れやすくていい。斬れにくいと、どんどん気が狂いそうになってしまうから...。」
霧矢裕は先ほどとは別人のような雰囲気を漂わせたかとおもうとアマテラスの「ほれ、学校にいくぞ」という一言で我に返る。
そして、いつものように何もなかった風に家に戻ろうとする。
しかし、それは阻まれた。目の前には黒いローブで全身をかくした霧矢裕より少し背が高く、男の様ながたいの人がこちらを向いて立っていた。
少し、気味悪く思ったが市民が逃げ遅れたのかとおもい霧矢裕は話しかける。
「もう、大丈夫だ。ラークシャスは今討伐した。」
しかし、黒フードの男は黙ったままだった。霧矢裕もしばらく待ったが痺れを切らしてもう一度話しかけようとした時
黒フードの男がこちらに手を向け呪文らしきものを唱える。
霧矢裕は危険を察知してアマテラスで妨害しようとしたが遅かった。
詠唱が終わると霧矢裕の周りが一瞬にして真っ白な虚無の世界に変わった。
少しひるんでしまったが、すぐにこの空間からの脱出を試みたがマナが使えなかった。
アマテラスで壁を斬ってみたが空気を切り裂く音のみが伝わってきた。少しの焦りと不安が現れたその時
「やぁ、そろそろだと思ったよ。」
後ろに子供のような人が立っていた。
「おい、これはなんだ?いたずらならさっさとこの空間を解け。」
「それはできないよ、今は空間転移中だから虚空を解除したらキミが死んじゃうよ」
「ふざけるな」
そういい、子供を掴もうとした時
「あ、着いたみたいだね。ようこそ我が世界へ、いきなりで悪いんだけどこの世界を救ってほしいんだ」
そう言い残すと子供は徐々に消え、虚無の空間が解除されて、辺りを見回すと、さっきまでの家で囲まれた狭い道ではなく
目の前に数十メートルはある壁と枯れた大地に霧矢裕は立っていた。
「一体何が起こったんだ?」
裕は呆気にとられていた。数分のうちに見たことのない景色に変わっていたのだから。
裕はすぐに冷静になろうと深呼吸をする。まず状況の整理から始める。
周りを確認してみたが、辺り一面平らな大地が広がり1本の長い道が続いている。所々にサボテンに似た植物が生えている。それに数えられるほどの枯れた木々。
サバンナを想像させるような場所だった。しかし、サバンナ程緑はない、砂漠に近いが気温は熱くない。
春先の暖かい気温のようだった。そして正面には大きな壁があった。
一枚の大きく平らな壁は門から左右へ500m程続くと直角に曲がり、今度は奥へと壁が続いていた。
自分の住んでいた世界でこんな建物と場所を見たことがない。それにさっき子供が
『ようこそ我が世界へ』と言っていた。それともう一つ『この世界を救ってほしい』
いきなりの白く何もない空間、子供の言葉、数分のうちに変わる景色。
裕は思った。どこか知らない世界にきてしまった、いや 連れてこられてしまった。
ありえないが、裕はこれが一番腑に落ちた。
「なんだかよくわからんが、ここは俺たちの世界とは違うみたいだが...まるで異世界だ。」
「異世界とは主よ、ラノベとやらの読み過ぎではないのか?」
「自分でも確かにそう思ったが、そう考えざるをえないだろう」
「確かにの、ここはいつもの世界とは違う。」
落ち着いた様子で二人は会話をしているうちに色々やりたいことが見えてくる。
するとアマテラスが
「ここはマナの量が少ない、人の姿になろうかの」
そういうと刀が光り宙に浮く。形状が変化し、百五十センチほどの背丈。膝まで綺麗に伸びた黒髪ロング、
生地の色は秋を思わせるような穏やかな赤に、紅葉の模様の和服。
後ろは脹脛まで生地が垂れているが前は膝のあたりで切れているため、動きやすそうである。
「人間の姿になるのは久しぶりじゃ~」
と、外見ロリっ子が言いながら現れる。
裕は驚く素振りもなく見慣れたかのように幻騎を見つめる。
「武器のままじゃとマナを吸うものの何もしていないと勝手にマナが抜けてしまうからのぅ、不便じゃ」
と悪態をつくと、「さて、やるかの」と裕を見つめながら軽く言った。
とりあえず、マナが存在するのであれば魔術を使用してみることにした。
魔法では魔術の2倍ほどのマナ消費をするものが多く、マナの量が少ないここでは特に使えない。
「【凍てつく氷の槍よ、無数に集まりて、敵を射抜け!】」
「アイスランスショット!」
すると裕の周りに氷の槍が10本ほど現れると、20m離れた岩へ一斉に発射され命中し、岩を砕いた。
「魔術は使えるのか、この威力ならば元の世界と変わらないから魔法も使えるな。」
「しかし、先程も言ったが気を付けるんじゃぞ主よ、空気中のマナの量が元の世界に比べて極めて少ないぞ。」
「単純に考えればマナ供給が少なくなって、一日に打てる魔法や魔術、わらはの使用回数が減ってしまう。」
「わかっているよ、緊急時以外は使わない。だけど、そうなると幻騎以外の普通の武器が必要になるな。」
そして、他の魔術を使って一段落着こうとした時、遠くから何かが近づく音が聴こえてくる。
例えるなら足場の悪い砂利道を低速で走る車のような音だ。
その音が近づくにつれ、音の正体も見えてきた。
馬車のようだ、1匹の馬が先頭で歩いており、その後ろに馬を操る御者。その後ろには木箱がぎっしりと詰まれていた。
御者はこちらに気づくと驚いた様子で近づき、停止する。
「よぉ、人種みたいだが見たことない顔だな」
顎に短い髭を生やした、筋肉質の30代後半の男性が気さくに話しかけてきた。
「たった今ここについたばかりで、これからどうするか2人で話していたところなんだ。」
まぁ、嘘はついていないし、本当のことを話したとこでこちらの話を全て信用するとは思えなかったので無難に返す。
「そうか、見た感じここらの国のやつらじゃなさそうだが、よく人がここまでこれたもんだ。」
「どういうことだ?」
「どういうことってお前さん、昔から人は何の取り柄もなく、なにもできない劣化種族って呼ばれてるのを知らないのか?」
「そのせいで、差別を受けている俺たちは他国への入国すらできたもんじゃない。だが、ここは唯一人が住める国、荒廃した街エルードだ」
「どうやら、遠い国から来た世間知らずさんの様だな、荒廃した街なんて呼ぶがいい街だゆっくりしていけよ」
そう告げると、御者は荷馬車と共に門を潜り壁の中エルードへと入っていった。
世間知らずって、初対面の人間に対してかなり失礼じゃないのか?と不満をもった裕だが
それとは別にこの世界についてもっと知る必要があると確信した。
「なんだか、面倒な世界に来ちまったな。」
「そうじゃの、まぁ上手くやっていくしかないじゃろ」
「はぁ、とりあえず武器と図書館らしき建物を探すところからだな。」
「それに泊まる場所と食べ物の確保じゃ、これは武器よりも重要じゃ!」
「はいはい、じゃあエルードに入りますか」
元の世界に戻る方法だとか、子供が言っていた世界を救ってほしいだとか、これから先どうしていこうかという不安を抱きつつも
少し前向きに一歩を踏み出す裕であったが、これから劣化種族として苦労していくことはこの時の裕は知る由もなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!