第8話 襲撃の原因
戦闘に直接参加してない筈の勇者が何故、こんな大怪我を?
すると、勇者はひとつの種を手渡した。
魔物を呼び寄せる匂いを発するという、稀にしかない食虫植物だった。
度重なる魔物襲撃の原因は、この小さな種だったのだ。
「魔物化して襲って来たんだ・・・少し油断していた。」
「まさかと思ったが・・・、その手に持つ竪琴は、あの伝説の勇者の証か!」
戦士達のリーダー格の男が、驚愕の表情で叫んだ。
この砦に住む者が、誰一人気付かなかった原因に短時間で気付き、その離れた場所からあの魔物の大群を殲滅したのだ。
もはや疑う余地はなかった。
怪我が大方治った頃、再び勇者は旅に出る。
マリンはこの砦の人々に受け入れられていた。
僅かばかりの特殊能力よりも、明るく魅力的な人柄が尊重されていたのだ。
勇者は、マリンにこの砦に留まる事を勧める。
「いやよ。ついていく。あなた無茶しすぎよ。
私も一緒にいて、あなたと共に戦い、あなたを助けます。ずっと一緒よ。」
強固な意志を見せるマリンに戸惑っていると、見送る群衆の中から、あのリーダー格の戦士(男)が旅仕度を整えて現れた。
「砦は俺がいなくても大丈夫だ。戦力が足りないんだろう?役に立つぜ。」
戦士が威勢良く号令をかける。
「出発だ!」
(続く)