第41話 伝記にない真実
”闇の石”と”勇者”の繋がりによって注目を浴びた勇者は、いつもと違い憮然としていた。
あまり触れられたくない事だったのだろうか。
マリンが気をかけると、勇者は重い口を開いた。
「裏伝説を現実に出来るかなんて、僕にも判らない。封印出来た事は、今迄にないから。」
勇者は歩を止めず、皆に背を向けたまま続けた。
「ルナシーンは封印に失敗してるんだよ。だから今、ここに闇の石があるんだ。」
皆には何を言っているのか、すぐには理解出来なかった。
勇者の起こす様々な奇跡を目のあたりにしてきたからこそ、不可能があるとは思えなかった。
それが伝説の勇者・ルナシーンの話であれば尚更だ。
「ルナシーンが出来たのは”浄化”だけなんだ・・・。浄化はただの時間稼ぎだ。
だから300年の時を経て、また”闇の石”と”勇者”がここに在るんだ。」
伝記にも、どこにもない真実を語る勇者。
勇者はずっと前から知っていて、誰にも話さなかったのだろう。
「伝説の勇者ルナシーンが・・・失敗・・・?」
一番驚愕したのは、戦士(男)だった。
憧れていた伝説の勇者が、世界の英雄が失敗した事を、この目の前の少年が「世界」の為に挑戦しようとしている。
”闇の石”の”封印”は、どれ程困難な事なのか、計り知れなかった。
(続く)




