第4話 魔女
山間の小さな村に、人の心を読む「魔女」の異名を持つ乙女がいる。
乙女の両親は既に亡く、村の人々からは忌み嫌われ、孤独な日々を送っていた。
最近村の近くで魔物が増えた。犠牲者も出ている。
これが噂に聞く”闇”の影響か・・・。
自警団はいつも以上に罠を張り巡らせていた。
「痛った・・・。」
深い落とし穴に折り重なるようにして、自称”勇者”と武闘家(男)が落ちていた。
見れば村の周囲はあちこち滅茶苦茶で、自警団が苦労して設置した罠に二人は悉く嵌ってくれたようだった。
二人が落ちてる穴を取り囲み、自警団が槍を突き立てる。
罠を使い物にならなくしてくれた怒りと、事によったら二人が魔物の変化かも知れない恐怖で、串刺しにされそうな勢いだ。
「待って!その人達は人間です。殺さないで!」
魔女の異名を持つ乙女が自警団を止めた。
彼女にはオーラのようなものを見る力があり、人間と魔物では全く違うものなのだ。
自警団は渋々、この問題児二人を乙女に預けた。
乙女の家で手当てを受ける。
あれだけの罠にかかっておきながら、大した傷を負ってないのが不思議だった。
「だから危ないって言っただろう!?何で罠にかかるんだよ!しかも全部!!」
武闘家(男)にしてみれば納得がいかない。
対盗賊で見せた、自称”勇者”のあの見事な回避が嘘のようだ。
確かにドジっ子なのは判っていた事だが、全部というのは・・・。
「・・・もしかして、わざと?」
何の為に?怪我までして。
自称”勇者”は苦笑するばかりで何も話さなかった。
(続く)