第3話 魔法
後悔する間もなく男達は刀を振りかざして襲って来た。
流石にこの大人数相手に、このスットンキョウな少年まで守り切れる気がしない。
すると先刻までいた場所に、少年がいない。
何時の間にか、盗賊の党首と思われる男の近くにいた。
「返して貰うよ。」
党首が少年に気付いた時、その手に持っていた筈のお宝は、既に少年の手の中だった。
少年は襲い来る男達をうまくかわしながら、距離を取って行く。
微かに聞こえる何かの詠唱。
魔法陣が発動し、土が盛り上がり盗賊団を捕らえていった。
粘土のような土に囲われ、男達は全員身動き取れない。
「あ・・・あんた、一体・・・。」
今、目の前で少年が見せたのは、伝承にしか聞く事のない「魔法」に違いなかった。
呆然とする武闘家(男)に、少年は盗賊から取り戻した美しい竪琴を抱えて"勇者"だと名乗った。
建物の外へ出ると、既に朝になっていた。
"勇者"を名乗る少年は、建物へ向かって先程の竪琴で美しい音色を響かせる。
「一緒に行くよ。」
曲が終わると同時に、少年の後ろから声が聞こえた。
武闘家(男)だ。
「"勇者"なんだろ?信じるよ。でもこんな盗賊団なんかに捕まるようじゃ、安心して"世界"を任せられない。だから一緒に行く。あんたを守るよ。」
暫く困惑していた自称"勇者"だったが、武闘家(男)の気さくさに負けたのか、一緒に旅をする事になった。
(続く)