第23話 双子の幼子
大型動物衝突による乗り物の損傷は激く、著しく速度が落ちていた。
幸運な事に、もうすぐ街に着く。
近くに川があるのを見止め、一行は街へ着く前に昼食をとる事にした。
マリンと武闘家(男)が水を汲みに行くと、そこで不思議な光景を目にする。
街から離れた川の畔に、幼い子供がふたり・・・。
髪の長さ位しか違いがない、双子の女の子。
通常なら、魔物の変化と疑うのが定石だ。
しかしマリンには、人間と魔物の違いがはっきりと判っていた。
怯える双子に、マリンは微笑んで手を差し伸べる。
双子は、髪の長い方がミキ、短い方をミクと名乗った。
ミキの方が大人びており、ミクはミキの陰に隠れるようにしていた。
双子は、旅の一団とはぐれたと言う。
幼い子供を置き去りには出来ず、マリンと武闘家(男)は仲間の元へ連れて行く事にした。
帰りが遅いマリン達を心配して、戦士(男)が迎えに行こうとしていた時、ふたりが戻ってきた。
マリンと手を繋いでいる双子の姿を見た瞬間、勇者は顔色を変える。
その変化を武闘家(男)は見逃さなかった。
しかしそれよりも早く、朔夜を見てミキが豹変した。
「お前が朔夜か。なら、隣にいるのは”勇者”だな!」
その瞬間、武闘家(男)が持っていた桶から水が飛び出し、水の縄で一行を捕らえていった。
目を疑った。
勇者以外に、こんな事が出来る者など見た事がなかった。
「・・・特殊能力者か。」
ふいを突かれ、水に囚われた朔夜が口惜しそうに吐き捨てた。
ミキは子供とは思えぬ邪悪な笑みを以って、それに答えた。
(続く)




