第15話 番外編 -過去・勇者と朔夜―
今回は番外編として、勇者と朔夜の過去の話を書いてみました。
朔夜目線です。
気が付いた時には、彼はそこにいた。
この街の権力者の息子であった朔夜は、大人の汚い世界も幼くして見ていた為、何事にも妙に冷めていた。
自分はただの子供なのに、周囲は下心丸出しで近付いてくる。
そんな毎日に嫌気が差していた時だった。
少し不思議な格好をした、茶髪の男の子。
同じ学友なのに、言葉を交わした覚えがない。
むしろ、あんな奴いただろうか。
授業中でも時々姿を消す。
誰かと共にいた所を見たことがない。
何故こんなに気になるのだろう・・・。
街で奴をみかけた。
いつもの怠けた表情ではない。
憂いた目をしている・・・。
少し先には、親子の姿があった。
ある日、街の外れで奴をみた。
小さな本を片手に、何か呟いていた。
またある時は、高い木の上で美しい楽器を持っている姿を見た。
あんな鈍臭い奴が、あんな所へ昇れる方が不思議だった。
そしてその時が来た。
朔夜はひとり、街の外へ冒険へ行き、帰ったときからずっと彼を見なかった。
学友に尋ねると、そんな奴は最初からいないと言う。
街の誰に聞いても、彼の保護者だった筈の者に聞いても、知らないという。
・・・そんな馬鹿な。
何をしていても彼の姿を探してしまう自分に、朔夜は気がついた。
何故これ程までに、奴を求めるのだろうか。
「君だね?竪琴を持った少年を知ってるというのは。」
ふいに複数の大人に囲まれた。
朔夜は子供とは思えぬ鋭い眼光を付きつけた。
「・・・何だ、あんた達は。」
大人の一人が、子供の朔夜の目線に合わせ、座って笑顔で答えた。
「彼を一緒に探そう。協力して欲しい。」
(番外編・終)




