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勇者物語  作者: 野川真実
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第11話 再会

山を越えると、大きな街が見えた。

遠くからでも判る程栄え、護りがしっかりしているのか、魔物に怯え暮らしているようには見えなかった。


久し振りの平和な街に、3人は少し浮かれ気味に喜ぶ。

「まずは食料の買出しだな。」

戦士(男)は一行の先頭に立ち、街を散策し始めた。


周りを振り回すだけで、リーダーとしては足りない部分の方が多い勇者。

戦士(男)は持ち前の統率力を発揮して、そんな勇者を補うようにパーティを纏めていた。

元々単独行動だった武闘家(男)や、長い間、人との交流が失われていたマリンにとって、この存在はありがたかった。


立ち並ぶ店先で、楽しく買い物に興じる一行。

しかし勇者だけが暗い顔をして、ただ付いて来るだけだった。

「どうしたの?」

マリンが勇者の顔を覗き込んだその時、聞きなれぬ声が勇者の名を呼んだ。


一行の正面には、背の高い身なりの良い男性が道を塞ぐように立っていた。

後ろに二人の従者をつけている。

「久し振りだな。」

不敵に笑うその男を見て、勇者は顔を強張らせた。


男は、再会を祝して勇者一行を家に招待する事を即座に決めると、有無を言わさず勇者を連行した。

馴れ馴れしく肩を抱き、勇者に高圧的に接している。

対する勇者は、迷い怯えた目をしていた。

知り合いのようだったが、とても友好的な関係には見えない。

しかし勇者は、敵ではないと告げていた。



「ふん・・・敵ではない、か。相変わらず馬鹿だな、お前・・・。」

男に連れられ屋敷内に入ると、男は突然、勇者を斬り付けた。

腕を斬られ、よろける勇者。


あまりにも突然の出来事に、焦り3人は勇者を守るように囲った。

その隙に男は距離をとり、慌てる3人を見て笑みを浮かべる。

「無駄だな・・・。雑魚がいくら集まろうと、意味はない。」


男が指を鳴らすと、従者の一人が男の横に現れ、美しい竪琴を男に手渡した。

勇者が斬られた瞬間に、奪われていたのだ。

「悪いな・・・この屋敷内ではお前の魔法も発動しない。竪琴もない今、お前は無力だ。

・・・死ね。」






(続く)

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