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居眠り戦争  作者: 毬禰
2/5

1戦目 人間嫌いな少女と親友ちゃんその1

「はぁ……」


いったい今日何度目の溜め息だろうか。


まだ何も始まってはいないというのに全てがすぐに終われば、とそればかりが沙紀の頭に浮かんでいた。


「さっきー、おっはよー!」


そんな沙紀の気持ちを知ってた知らずか明るく元気な声がかけられる。


「おはよう。こんな日でも元気ね。」


さっきー、鈴鹿沙紀は声をかけてきた柊兎に憂鬱な気分で返事を返した。


「元気がないのはさっきーくらいだよ?今日は私達一年は初の居眠り戦争だからね、皆やる気満々だよ。」


居眠り戦争。


王林魔法高校の伝統行事の1つだが、そのルーツはなかなか変わったものだった。


50数年前、授業中に居眠りをする生徒が多かったことから教師達が居眠りしている生徒達に戦場でも同じことが出来るならやってみろ、と言い放ったことが始まりだとも、無防備な人間を守ることの難しさを教えるためだとも言われている。


ルールは事態は簡単なもので、居眠りをする生徒が10人選出されそれを教師達が全て起こしきるか、生徒が守りきるかそれだけだ。


教師の起こす手段は問われず、また守る生徒達がどのような魔法を使っても良い。


兎の言うな通り数少ない実践の機会でもあり、ほとんどの生徒が緊張を含んだ表情を浮かべながらもやる気に溢れていた。


1年は自らの実力を測るために。2・3年は去年破れた雪辱は果たすため、去年からの自分の力の変化を知るために。


だが、1年の沙紀には自らの力を示したいとも何か強い思いがあるわけでもなく無駄に会いたくもない大勢の人と会わなければならないというデメリットしかない。


ただ人間が嫌いな沙紀にとっては明確な理由があるそっちの方が大事なことであった。


「私は何処かの木陰でのんびりしてるから兎、がんばれー」


「いやいや、私達持ち場決められてるから。1日目は第3戦場で連携しながら撃破って言われたでしょ。」


呆れたように兎がそういうのを聞きながら沙紀はもう一度溜め息をついた。


それから一悶着があったものの沙紀を戦場まで連れ出すことに兎はなんとか成功し開始の時間を待っていた。


『開始10分前になりました。双方指定位置で待機して下さい。』


「ほんとにやらないと駄目?そろそろ限界なんだけど」


沙紀にとって外にいること自体は何一つ問題がない。むしろ外の方が人の気配を感じないだけまだましなのだが、それが戦場でなくあまつさえ回りに人がいなければの話なのだが。


「さっきーはほんとに人間嫌いだね。そんなに思い詰めなくてもいいのに。」


そんな風に嫌がる沙紀を見ながら、兎は長い付き合いからか慣れたように適当に聞き流し、適当に宥めていた。


「もう知らない。どうにでも成ればいい。全て滅びればいい……」


目が段々と虚ろになり、沙紀が呪詛を吐きながら、杖で地面になにやら悪魔的な絵を仕上げていった。


「さっきーが嫌過ぎて壊れてきた!3日だけだから、もっと言うと9時間だけだから。お姉さんがついてるから安心しなさい。」


本格的に壊れ始めた沙紀に兎は自らの薄い胸をドンと叩き安心させようとするが


沙紀は虚ろになった目を兎へと向けぼそりと、


「……安心出来ないでしょ。」


唯一沙紀が頼りに出来る相手であるのは確かに違いないが、安心ということにはあまり信用できそうもないことをよく知っていた。


「今のさっきーよりはまだましだしー。」


少し膨れた兎を見つめながら取り合えず早く終わることを沙紀は心のなかで静かに祈っていた。


それからほどなくたった頃。


『3、2、1、戦闘を開始します。』


開始の合図が辺りに鳴り響き、合図と共に回りの緊張が一層高まったのを感じるのだが兎も沙紀も特に気にした様子はなく相変わらずのままだった。


「……ほんとに始まったよ。早く終われ、2秒で終われ。」


「無茶苦茶だよ、さっきー。そんなに嫌ならいっそのこと突撃して早くこの試合からリタイアしたら?」


「人の前に立って見られて突撃とか私に精神的に死ねと?」


大勢の前で真っ先に突撃、連携もとれないまともに考えて動けない、そんな印象で誰かの脳内の留まるなど冗談ではない。


「なら遠距離魔法出来ない撃たれるのを祈るとか?」


それならばと違う方法を兎が提示するもそれは一つの報告によって不可能となった。


「敵影確認、中央より数学科三浦、魔法構造学浦部。東側より体育科笹本。西側より事務員蔵屋、国語科出水。」


沙紀達が配備された第3戦場は裏に大きな岩壁がそびえており、岩壁を背に中央に居眠り生徒を、その周辺を防衛の生徒が取り囲む形となっていた。


沙紀達は防衛の東側に配備されており、十数名の生徒に混じって参加していた。


「体育科の笹本って確か……」


「近接戦闘大好きな筋肉達磨だね。というかすぐそばまで来たのかもね。他の皆の姿がちらほら近くに見えるし。」


体育教師の笹本は自らの肉体を魔法媒体とした根っから近接戦闘術者であり、その攻撃は地面を割、その肉体を包む魔力装甲を貫くのは至難とされた。


「嫌がらせかしら。ふふっ……」


「さっきーがほんとに壊れてきた!」


人に近づかれるなどもっての他、と更に目が虚ろになる沙紀に兎は諦めを含んだため息を吐いていた。


二人がそんなことを話している内に笹本が防衛場所に現れたのか前方では戦闘が始まっていた。


「……雷刃!」


岩影から男子生徒が放った魔法が一直線に笹本もとへと飛来する。


「それで死角を取ったつもりか?」


しかし、笹本は余裕を感じさせる声とともに男子生徒の魔法が放った魔法を魔力装甲で覆われた腕で振り払い退けると、その男子生徒に近き魔法を放つ体勢に入った。


だが、その笹本の行動を見越していたのか更に魔法が編まれていた。


「……我が身を覆い隠せ、白き煙幕!」


「ほぅ、これは。」


煙幕に笹本も巻き込まれ視界を塞がれるれ嘆息する中、


「今だ。撃て!」


1人の生徒の号令とともに隠れていた生徒、2・3年と思われるの五人生徒から一斉に魔法が放たれ笹本を襲った。


「……万物全てを飲み込め、大海の大鯨!」


水の魔法で編まれた大鯨が全てを飲み込まんと大きく口を開け襲いかかり、


「……刺し貫き引き裂け、千の風刃!」


風の魔法で編まれ千の刃がその魔力装甲を切り裂かんと迫り、


「……我道を明るく照らせ、暁光!」


高温の光はレーザーとなってその身を焼かんと迫り、


「……私は全ての音を支配する、楽団指揮!」


魔力で編まれた音でその脳を潰さんとし、


「……人の思考を食べちゃえ、想像の中に潜む怪物!」


更に思考さえも潰さんと魔法が編まれ襲いかかった。


「いいぞ、お前達。楽しくなってきたじゃないか。」


笹本は不適な笑みを口元に浮かべ豪胆に笑い飛ばすと全ての魔法に真っ向から対峙し全てを潰しにかかった。


そんな激闘ともとれる戦いの幕開けを二人は知ってた知らずかのんびりと戦場を眺めていた。


「戦闘が始まったみたいだよ、さっきー。」


参加しないのか、そう目で問いかける兎に対し、沙紀は虚ろな目のままゆっくりと答えた。


「皆やられたら参戦するわ。」


「さっきーはブレないね。」


兎は苦笑を浮かべながらも今回は沙紀の我が儘に付き合ってみようかとなにかあれば参戦すれば良いと考え始めていた。



魔法が上手く作れてはいないかもしれませんがそこはご愛嬌だと思って頂けると幸いです。


ご意見、ご感想を頂けると発狂する勢いで喜びます。どうかよろしくお願いいたします。

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