エピローグ、そして、プロローグ
盛大な拍手が鳴り響いた。
演目も無事終わり、ワインレッドの幕が舞台と現実に境目を生む。
闇の中、浮かび上がるように淡いライトが灯り、徐々に明るくなるにつれて夢からゆっくりと醒めた。
終わったのだ。
長いようで、短い物語が。
周囲の拍手が途切れかけたと同時に再び波のように盛大な拍手が部屋を満たした。
幕前に現れたのは道化師。
装飾の施された銀の仮面にピエロのような派手な服。
彼は拍手喝采を一身に受けた後、うやうやしく中央へ、右へ、左へ、そしてもう一度中央へ向かって深く一礼した。
「ひとたび終わりました演目。はてさてアナタは何を見、何を思い、何を考え舞台をご覧になられましたでしょうか」
朗々と拍手の中でもはっきりと聞こえる道化師の声。彼は言葉を続けた。
「しばしの休憩を挟んで新たな物語を上演いたします。この先もアナタは何を見、何を思い、何を考え、どんなユメの続きを創っていくのでしょうか? それではこれにて一旦閉幕」
幕の隙間へ滑り込むように道化師は姿を消した。
僅かな休憩。
先ほどの舞台―――誰かの物語を思い返す。
――一体何を見てきたのだろう。
――一体何を思っていただろう。
――一体何を考えていただろう。
毎日に埋もれ、自分の物語さえすべてを流してきていたかもしれない。
――見ているようで映さず。
――思っているようで閉ざし。
――考えているようで迷い。
結局なるがまま、流れるまま、自分は過ごしていたかもしれない。
明日にはどうにかなる。
いつかはどうにかなる。
そう思いながらその時たとえ苦しんでいたとしても、本当はぬるま湯の中に浸っていたような気がする。
やがて幕前に先程の道化師が舞台の中央に姿を現した。
「開幕いたします演目。これはこの場にいるアナタの物語か。それとも、他の誰かの物語か。その思い。その行動。その行く末。アナタの目にはどう映り、どう考え、アナタならばどうするでしょうか? それでは開幕いたしましょう。瞬きのような一瞬の物語を」
――これから、どうなるんだろう。
――これから、どうするんだろう。
――これから、どう在るんだろう。
道化師が一礼し去っていくとワインレッドの幕がゆっくりと上へと上がって行った。
同時に会場を淡く照らすライトが消えて舞台と現実の境目を、思考を曖昧にする。
今、また始まる。
長いようで短い夢の舞台が。
盛大な拍手が鳴り響いた。
はてさて。
今から始まる物語は、一体誰の物語か?