六日目:城から外へ
「さてと、王女に会いに行くか。」
俺はとりあえず王女に会って別れを告げに行こうと思った。
けど行こうとした矢先にこけた、良く考えてみたら俺左足無いんだったっけ……
「どーしよ……歩けねぇ……」
何とかならないかなぁと考えていると、そこには恐らく拷問に使うのであろう剣があった。
「この剣使えば行けるかな?」
と思い、杖の変わりに使うことにした。
記憶を辿って王女の部屋がある前まで行くと、部屋の前には兵士がいた。
「何者だ?貴様っ?」と聞かれたので、
「俺は王女に召喚された内の1人だ。王女に用事があるから入らせてくれ。」と答えた。
「そこで待て。……良し、入って良いぞ……ってお前その身体どうした?」
「ほっとけ…ただのケガだよ。とりあえず入らせてもらうぜ。」
俺はそう言って部屋の中へと入っていった。
「王女?いるのかー?ソラだ、ちょっと話したいんだが……」
「ソラ様っ? なぜここに? と言うかなぜそのようなお怪我を? と、とりあえずこちらへどうぞ‼」
王女は俺の身体を見て驚いていた。まぁそりゃそうだろう。だって数ヶ月前までは無傷だった人が右目、右腕、左足が無くなっていて、それに加えて髪の毛の色までも黒からほぼ白に変わっていたのだから。俺自身、鏡を見てびっくりした。髪の毛まで変わっているとは思っていなかったのだ。
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「それで、ソラ様?一体何があったのですか?私は貴方に会おうとしても会わせては頂けませんでしたから……」
「まぁ会わせなかったって言うのが正しいんだろうよ、俺が拷問されたって言ったら解放しちまうだろうからなぁ。」
「ご、拷問ですか?一体誰の命令で……」
「さぁな? 只言える事は命令した奴は王女のことを消そうとしているってことだけはわかる。ちなみに俺多分一回死んで霊だけ天界に行ってたんだ。 まぁそのお陰で蘇ったけどね。」
「一度……死んだ?」
「あぁ、拷問受けてた途中で拷問野郎が狂いやがってな、それで俺の右目、右腕と左足がねえのさ。」
「そ、そうでしたか…で、ですが、どうやってそこからこちらまで?」
「拷問野郎は魔法で消した。それでだ、俺はここまで来れたんだ。」
正直俺の言っている事は信じられないだろう、目の前にいる人が一回死んでまた蘇ってその死ぬ原因となった相手を魔法で消したなんて普通はあ、そーですかと流せる訳がない。正直もうここで俺は城を去る覚悟は出来ていた。しかし、
「そ、そうでしたか……では怪我の治療をさせていただきますので少しお待ちを。」と言ったのだ。
「お、王女?治療?何で?」
「私はムト様達に約束しました。貴方を守ると、ならば怪我をされたのなら治療するのは当たり前です。」
「いや、べつにそこまでは……」
「いいのです!お願いですからさせて下さい。私と同じ境遇の方をみすみす見殺しにさせるわけばありません‼」
「王女……」
王女は少しだが目に涙がうっすら浮かんでいた。 王女は俺の事をやや気にかけてくれているようだ。俺も王女も忌み嫌われているスキル持ちだからだろう。とりあえず俺は王女に従うことにした。
「悪いけど……寝て無いんだ……少し……ね、させ……」
ここで俺の意識は飛んだ。ただ王女が俺をベッドへと移してくれたと言うことだけはわかった。
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俺は夢を見た。 クラスメイト達が冒険している所のようだ。
「ふぅ……これで全部倒したかな?」
「うん、そうみたいだよ? ……ムト君?どうかした?」
「いや、ちょっとあいつの事を考えてね…」
「ソラ君の事?」
「あぁ、あいつなら俺達の事を考えずに敵に突っ走って行くだろうなぁって思ってさ。あいつもいたらなぁ……」
「ムト君…… 私だってソラ君がいた方が良かったよ?でもソラ君は私たちを巻き込まない為にあんなことを言ってくれたんだから……今はとりあえずソラ君を助ける為の宝を取る事だけを考えよう?ね?」
「あぁ、そうだな。すまないなミウ。心配させて。」
「おーい、二人とも、なにやってるんだー? 依頼終わったからさっさとギルド戻って報告行くぞー?」
「あぁ!すぐ行く!」
どうやらあいつらはギルドに行って冒険者となりクエストをこなしているようだ。俺の事なんて別にどうでも良いのに…さっさと宝を見つけて帰れば良いのに……と思っていたら夢から目覚めた。
「ここは……?」
「起きられましたか、ソラ様。ここは私の部屋でございます。」
「あぁ、そっか俺倒れたんだった。ありがとな王女、助かったわ。」
「いえいえ、私は何も……」
俺は自分の身体を見た。すると何故か無くなったはずの左足があった。
「どゆこと?何で足が?」
「私が治しました。 私は治癒魔法は得意なのですよ?」
「そっか…色々と迷惑ばっかりかけてるな、俺。」
「いえいえ、ですが申し訳無いのですが……目と腕は再生不可でした……」
「謝らなくて良いよ、足があるだけ十分さ。」
正直俺はもう歩けなくなるのではと思っていたのだがまさか王女が治癒魔法使えるとは…思っていなかった。
「それで……ソラ様はこれからどうなさるおつもりですか?」
「うーん……多分あいつらと同じで冒険者になるつもりだけど?」
「……やはりそうでしたか。でしたらお願いがあるのです。」
「お願い……?」
何だろう?何か危ない橋を渡る的な奴?それとも危険な実験?うーむ……よくわからぬ……
「私を一緒に連れて行って欲しいのです‼」
「……………はい?」
ナンテイッタイマ?一緒に行く?俺と?二人で?冒険に?
どーゆーこと?何?新手の詐欺か何か?
「ですから…私は貴方に同行したいと言っているのですっ!」
「えーっと……貴方王女ですよね?この国からいなくなるかも知れないんですよ?それでも良いと?危険ですよ?」
「ええ、存じ上げておりますとも。当然危険でしょう、けどもソラ様一人で行かせる訳には参りません。回復担当が必要でしょう?それに私もううんざりですの。ここに縛られるのはもうイヤなのです。」
「は、はぁ……ま、まぁ別に俺は構いませんが…良いんですか?ここから出るともう王女では無くなりますよ?住みかすらももしかしたら無い野宿っていうこともありますよ?服もそんな立派なものでは無くなりますよ?それでも良いんですか?」
「ええ、覚悟は出来ておりますわ。私にとっては城にいるよりは外に出た方が楽なのです。」
「なら準備をしてください。俺は何も持っていませんので。」
「……実は昨晩から準備しておりました。お金とギルドカードと最低限の服のみです。」
俺は正直はやっ!と思ってしまった。これじゃあまるで既に城を出る用意をしていたみたい…待てよ? まさか最初からそれを考えていた……?
「では行きますが……何か思い残したことはありませんか?」
「ありませんわ。早く行きましょう。」
「では……さすがに正面突破は無理なので魔法を使いますね。」
「魔法……ですの?」
「ええ、《移動の呪文『ワープ!』》」
すると、城だった回りが城下町に変わっていた。
「ソラ様……いつの間に魔法を……」
「死んで蘇った後です。俺のステータス見ればわかりますよ?」
「ならば失礼して………ってこれはっ?」
王女は驚いていた。まぁそうだよねー、だって数ヶ月前まではほとんど市民と同じだった俺が急に変化してるんだもん。自分でも驚いたよ?
「一体どうなっているのですか…これは…」
「まぁそう思うでしょうね…俺も驚きましたから、と言うより王女のステータスってどうなっているんです?」
「私はこうですね。」
と、ステータスを俺に見せてくれた。
《王女:レベル99、体力5800、攻撃力4200、魔力3万8000、スキル、治癒魔法S、能力把握A、癒しの力A、完全回復A、再生B、ジョブ:セイントヒーラー》
因みにこの世界だとレベルは無限にあるみたいだが、現段階での最高は380だとか……俺ってどうなんだろうね?と思っていると、ジョブがなにやら単なるヒーラーでは無いようなので、
「セイントヒーラーって何?上位職か何か?」
「はい、実はジョブには三段階ありまして、ヒーラーならばヒーラー、→セイントヒーラー、→ホーリーヒーラーとなっています。良ければソラ様のステータスを更新しましょうか?もしかしたらジョブも変わっているかもしれません。」
「おぉ、面白そうだな、やるやる!」
「では失礼して……………ふぅ、終わりましたよー」
どれどれ?という思いで見てみると…
《ソラ:レベル∞、体力4万2500、攻撃力20万5000、魔力120万5000、スキル、言語理解SS、隠蔽S、神と魔王の加護S、対神&魔王S、自動回復S、根性A、魔法&呪い無効化A、ジョブ:該当なし(バーサク)》
「うぉう…さらに化け物染みて行くなぁ俺……」
以前よりもまた数値が上がっていた。しかもジョブのところにカッコしてバーサクて書いてあるし。バーサクて何よ?
「王女ー?バーサクて何?」
「私にも……わかりません。と言うよりも聞いたことが無いのです、あと私はもう王女ではありませんよ?」
「じゃあ、何て呼べば……?」
俺はまぁそっかと思った。もう王女という役目に縛られなくても良いんだからもうそう呼ぶのはやめてあげようと思ったのだ。
しかし……
「私の名は……ありません…………」
「へ?無い?何それ?」
「実は私産まれて直ぐに王女と呼ばれたもので…名前が無いのですよ。なのでソラ様につけて頂こうかと……」
ちょっとまて、名前が無い?しかもおれにつけろと?
訳がわからん……俺バカなのに…………こんなに頭使っちゃうとそろそろパンクするよ?俺の頭?まぁ良いや、適当に考えよう……。
読んで頂きありがとうございます。