五日目: 天界での話
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俺ことソラは今天界とやらにいる。
何故こうなったのかはわからない、だが城で拷問されて身体のあちこちを切られ抉られて意識を失ったらここにいたのだ。
いまいち良く分かっていないが、ヴァルキリーという女神的な奴がいるから天界だと思っているだけで実はここ地獄なんじゃない?と思ったりもしていた。ゲームとかだと、そう言った嘘などは良くあったからだ。
ヴァルキリーが建物の中に入ってからどれくらい時間が経っただろうか、俺はすることが無いからとりあえず辺りを見回してボケーッとしていた。
「天界ねぇ……何とも言えねえけどここにいるってことは俺は死んだのか?あの狂った拷問野郎が俺の身体を置いていくとは思えないんだけどなぁ…… あぁ、くそっ、頭いてぇ……」
俺は良く分からないが、たまに頭痛がするようだ。考えているからなのかとも思ったのだが、そうでもないらしい。こんなときはムト達を羨ましいと思った。あいつらならそこまで考えなくても判断力があるからな。と思っていたら、
「すまない、随分と待たせたようだ。 さぁ、中へ入ってくれ。」
と、ヴァルキリーが俺を中へと誘った。
入るのには若干不安があったが、入らないと殺されそうで怖いのでここは従うことにした。
「……おじゃましまーす。」
俺は恐る恐る中へと入った。 そこはどうやら普通の家のような感じで、日本で言う別荘と言ったような家だった。
「ここは……」
「ここは私の主の家だよ、まぁいつもは不在なのだがな。」
とヴァルキリーが戸惑っていた俺に説明してくれた。 どうやらヴァルキリーの主はいつもはいないようだ。 なら何で今日はここにいるんだろう?と思っていると、
「そなたが天界の住人では無いのにここにこれた者か。」
と何やら威圧感漂う声が奥からしてきた。 俺は、
「あぁ、そうだよ、俺は異世界から来た学生だよ。」
と、普通に答えると、ヴァルキリーがかなり俺に対して威圧してきた。 なので俺は小声でヴァルキリーに、
「おい、俺何かまずかったか?」と聞くと、
「当たり前だ、バカ者っ‼ 私の主はこの天界ではトップクラスの方だぞ! それに敬語無しとは……」と半ば呆れているような答えが返ってきた。
「ふむ……まぁわしの事を知らぬようじゃから許してやれ、ヴァルキリーや。」と主が言った。
「えーっと、ひょっとして……聞こえてました……?」
「無論。わしは神じゃぞ?聞こえぬとでも思ったか?」
「あー、そうでしたか。ところであなたの名前を聞いてもよろしいでしょうか?」と慣れない敬語っぽいのを使い聞くと、
「わしはゼウスじゃ。」と言って俺の目の前に現れた。
「………え、ゼウス? それって最高神じゃね⁉」
「ふむ……わしのことを知っとるか。」
「いや、当然でしょ?全知全能の神として君臨して、雷をも素手で掴めると言われた絶対神ですよね⁉」
俺は少しどころかかなりパニクっていた。 だってゼウスって言ったよね⁉ 絶対神だよね⁉ 逆らったら殺されるよね⁉ ヤバいヤバい、おれそんな神に敬語使ってなかったの? え、おれ死んじゃう? と使えない頭を頭痛がしようと構わずにフル回転させて考えていた。
「…えーっと、すいませんでしたぁっ!」
俺は全力で謝っていた。
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「落ち着いたかの?」とゼウスが俺に聞いてきた。
「は、はい……とりあえずは…………」と答えた。
ゼウスはどうやら俺の為にここに来たらしく、ヴァルキリーはゼウスを呼ぶために先に中へ入っていたようだ。
「…それでなんじゃがの、お主がここへ来れた理由はわからぬ。わしとてこのような事は初めてじゃ。主がここに来れた理由として考えられるのが、お主が異世界から来たからなのか何か主の身体に特殊な何かがあったかじゃよ。」
「はぁ……ですが俺は特に何も特殊な物は持ってませんし、あの国の人からしたら平凡なステータスですよ?……あ、隠蔽というスキルは持っていますが…………」
「ほう、隠蔽とな… …あの国では禁忌じゃろうに…… すまんがお主のステータスを見させてもらうぞ?」
とゼウスは俺の目の前に来て、全身をくまなく見た。
「お主……これは………………」
ゼウスが何やら驚いてこっちを見ていた。俺は正直自分のステータスがどうなっていようとあまり興味が無かったのだ。なので今さら何か変になっていても別に良いやと言う感じだったのだが、俺は自分のステータスをとりあえず確認したのだ。
《ソラ:レベル∞、体力38000、攻撃力12万、魔力853万、スキル、言語理解SS、隠蔽S、神の加護S、魔王の加護S、対神&悪魔S、自動回復A、根性A、状態異常無効化、レベル制限無し、ジョブ:該当無し》
「……マジか。」
軽いショックではすまなかった。
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「何よこのステータス!? あなた本当にただの人なの? 一体どうなってるの? 神と魔王の加護ってどう言うことよ……」
ヴァルキリーの反応は当たり前だ。俺のステータスは今はゼウスの能力とやらで全部見えるようになっているらしい、けども俺は正直信じたくは無かった。だってこれはもうチートとしか言えないようなとんでもないステータスだからだ。
「これ……どういう事なんだろな? 神と魔王って、神には今会ったばかりだけど魔王? こんなスキルあるの?」
俺は思ったことを口にしてみた。すると、
「わからぬ。」
ハッキリとそう言った。
「……はい?わからない? どういうことですか?」
「恐らくはぬしは異世界から来ておるからそれが原因としか言えぬのじゃ。 じゃが……神と魔王の加護を同時に持つとは普通はありえんのじゃよ。」
「何か悪いことでもあるのか……あるんですか?」
俺はまた質問をした。と言うか、今の現状だと俺質問しか出来ないわと思った。
「ふむ……悪いと言う訳では無いのじゃよ、むしろお前にとっては良いかもの。 天界にも魔界にもノーリスクで行けると言うことじゃ。恐らくはお主の言語理解が最高ランクと言うこともあってそれに付属してついてきたんじゃとわしは思うがの。詳細は分からんのじゃ。」
「へー、だったらまぁ良かった。ところで、俺って生きてるのかな? 死んでたらもうどうしようも無いですよね?」
「たぶんじゃが、お主は死んでおらん、と言うより肉体はあの国に残っておるはずじゃ。 お主は今意識のみしかここにおらぬからの。」
「なーんだ、そういうことでしたか。そしたらどうやったら身体に戻れるのですか俺は?」
「わしが戻してやるわい。けども悪いのじゃが……主の傷は戻らぬ、つまりケガをしたままの身体に戻るのじゃが…………それでも良いのか?」
「あぁ、良いさ、生き返れるのなら別に構わないさ、俺は戻ってすることがあるんでね。」と、敬語をやめてまで言った。
そうだ、俺は王女やクラスメイト達を助けないとダメなんだ。
こんなバカでも一緒に居てくれたクラスメイト達や同じ忌み嫌われているスキル持ちの王女には感謝している。だから助けて恩返ししないといけないのだ。
「ふむ、ならばよかろう、元の肉体へと戻してやろう、じゃが気を付けるのじゃよ?主を傷つけた奴は恐らくまだおるはずじゃ。自力で何とかせねばならぬのじゃよ。」
「尚更良いや、俺の身体を壊しやがった奴に仕返ししねえとな…ゼウスさん‼色々と助かりました!あとヴァルキリーさんも、信じてくれてありがとう。」
「うむ、わしも久々に楽しめたわぃ、こちらこそありがとよ。」
「わ、私はお前をゼウス様の元に連れてきただけだ、感謝されるようなことでは…」
なんと言うか、ゼウスは楽しんでいる様に見えて、ヴァルキリーは日本で言うツンデレ?か何かのような感じだった。
俺はとりあえず肉体に戻って奴に仕返しして、城から出て旅に出ようかと考えていた。王女には悪いけど…俺も冒険者としてやっていくかなぁ、と心の中で決心した。
すると俺は再び意識を失った。
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俺は目が覚めた。だが右目は開かない、と言うか無い。右腕も左足も無い。けども不思議と前みたいに恐怖心は無かった。すると目の前にはあの狂った拷問野郎がまだいた。
「よう、拷問野郎、もう終わりか?」
と、挑発してみると、
「まぁだぁ……壊れてなぁかったのぉかぁ……」「 壊す、壊す、壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す」「壊して壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊してぐちゃぐちゃにしてぇやるぅ。」
最早訳がわからなかった。俺は残った左目で奴を見て、左手で全力で殴った。
「グギャッ⁉なぜぇ……お前に殴られるぅ……」
「わりーがてめーみたいなクズ相手にしてる暇は無いんでな、消えてもらう。」
俺は良く分からないが、奴を消そうと考えていたら、脳内に急に出てきた呪文を唱えた。
《全ての悪は消えるべし、その身を消し去れ!『イビルパニッシャー!』》
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奴が黒い球体に吸い込まれて消えていった。どうやらブラックホールの要領らしい。とりあえず危険は消えたと見て良いだろう。俺は左足が無いので近くにあった杖のような物で身体を支えてこの監獄から出た。
「とりあえず……王女に会いに行くか……」
俺は王女に会って別れを告げにいくことに決めた。
監獄からはそこまで遠くない、監獄は城の地下にあったからそこから上に上がって行けば会えるだろうと思い俺は歩み始めた。
読んで頂き、感謝です。