二日目: クラスメイト達との差
「さて、何の話からしましょうか…」俺達は王女の言葉を理解出来るようになった。 まぁ俺は元々そうだったが…
「まず、皆様がここに来ることになった理由は私があなた達に助けて欲しいからです。」
「……はぁ?」と半ば呆れるように俺が聞き返した。
何故王女がこの国の人に助けを求めずにわざわざ異世界の俺達を呼んだのか全く理解が出来ない、と言うか意味不明だ。
「無理もありません、私は今ある意味孤立しているのです。この国に私の味方はほとんどおりません。」
そう王女が言った途端に夢吐達クラスメイトがまた、
「王女なのに味方がいない……?」「どういうこと?王女って国のトップよね?」
「訳がわかんねぇよ、マジで……」と、混乱していた。
だが俺はそんなことはどーでも良いので、
「まぁとりあえず助けを求めるは別に良いけどさ、でも何でよりによって異世界の俺達なの?」と聞いた。
すると王女は、「あら、貴方はあまり動揺しないのですね、珍しい人もいたものです。」と少し驚いた様子を見せた。 まぁそりゃぁそうだろう。普通なら、夢吐や他のクラスメイト達がしている反応が当たり前だろう、異世界に来て王女に会い助けを求められるなんて考えはしないだろうから。
だが俺はクラスメイト達と違う、異世界だろうと何だろうとやることは変わらないのだ。 一日一日目の前の事を最小限でこなせればそれで良いのだ。
………だって俺はバカなのだから。
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「んで、王女は何をお望みなんです?俺達は単なる学生でしか無い、それをわざわざ呼んだってことは何かあるんだろ? 俺達の中に誰か特殊な奴でもいたのか?」
ここで、俺は一区切り置いて、また、
「…………それともただ俺達を巻き込むつもりか?」と俺が言うと
「おい…………蒼、お前、そんなに話すタイプだったか?」と夢吐が若干驚きを見せながら聞いてきた。
まぁそりゃぁ驚くよな―と心の中で思った。 と言うより、俺自身が疑問に思っている。この世界に来てからと言うものの、俺は何やらおかしくなっているようだ。 たまに頭痛がするので、何かあったのかと思うが、別に頭痛何て大したことは無いだろうと思って放置しているが、何かあるのだろうか……?
「まぁ皆知ってるとは思うけど俺は皆とはちょっと違う、だから深く考えない。それに俺はこう言ったファンタジー&冒険系のバーチャルゲームはずっとやってたからね。だからこう言う考えに至っただけさ。まぁ皆の中にそんなゲームをしてる人はいないだろうしね……」と誤魔化すように言ってみた。
(あー、これ俺終わったなー)と考えていた所、夢吐の友達の悠が、
「お前、ゲームやってるなら教えろよなー、俺もそういうのやってたのに。」と意外なことを言ってきた。
「あ、そうなの? てっきり皆お金持ちだから一般市民向けのゲームとかやらないのかと思ってたよ?」と本心を言ってみたところ、なんと皆まあまあゲームをしてることが初めてわかった。
今こんなこと話してる場合じゃねえなと思いつつも皆を落ち着かせると言う意味では良かったのかも知れない。
俺は「王女、続きをどうぞ、脱線してすいません。」と王女に謝っておいた。
正直な所王女の話を聞いた所で、信じる奴は恐らく少ないと思う。クラスメイト達はこう言ったような非現実的な話はたぶん信じないだろう。クラスメイト達は恐らく早く元の世界へ帰りたいはずだ。
まぁヴァーチャル系ゲームをしているメンバーは大丈夫そうだった。 むしろ、異世界に来れていることに最初戸惑っていたけど、今は感動やら何やらでいっぱいのようだった。
え……俺?…………俺はまぁ……自分がゲームの内部にいるキャラだと考えているから大丈夫だろう……と言うよりは、現世に飽きていた俺にとっては、沸いて出たチャンスなのだ。異世界なら勉強しなくても、自由に出来るだろうと信じているから。
王女は、「いえいえ、そちらが解決なさったなら良かったです。では今私が置かれている現状をお話しましょう。」と言った。
「私は王女ですが、実際は権力など一切ありません、何故なら私は単なるお飾りに過ぎないからです。私は」
「そんなことは聞いてない‼」夢吐がぶった切った。
「どうでも良いんだよっっ! 俺が聞きたいのは何で俺達を呼んで、何をしたいのかだ‼ 俺達を巻き込んでまでしたいことか? なぁ、頼むから元の世界へ戻してくれ………」
夢吐が珍しく感情的になっていた。夢吐の目には涙が見えた気がした。
「夢吐……」俺は何も言えなかった、と言うより言う事が出来なかった。まず、夢吐ならこう言った新しいことがあったときは、自ら率先するタイプだった。学校行事なども、ほとんどがそうだったと思う。けども、今回は違った。率先しているとは言え、夢吐が感情をあらわにしていたのだ。そんなことは無かったと記憶している。
夢吐が言っている事はクラスメイト達が思っている事と同じだろう、いきなりあなた達は異世界へ呼ばれましたなんて言われて、あぁそうですかと思う人は俺を除いたらいないだろう。どうやら俺は簡単に物事を考えすぎているみたいだ。
そんな夢吐に対して王女は、「私はあなた達の中に私の希望となる方を見つけたのです、しかも一人では無かったのです。皆様がその適正だったのです、なのでこちらに皆様をお呼びさせてもらいました。私はあなた達に勇者になって頂きたいのです。」
「……勇者!?」
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しばらく皆が黙りこんだ後、王女に俺が質問した。
「んで、勇者とはいったいどういうことですか?」
「私は他人の能力を見ることが出来るのです、さらに、能力を隠されても見ることが出来るこの力は、この国では異端とされており、皆からは忌み嫌われるようなものなのです。」
「けど、忌み嫌われてるなら王女にはなれねえよな?普通って?」
「はい、実は私の能力は王女になってから受け継がれたものなのです。」
「受け継ぐ……? だとすれば歴代の王もその能力を?」
「いえ、実はそうではなく王位継承の際に使われる冠から能力を授かるのです。」
俺は正直驚いた。王位継承の時に使った王冠が原因で、忌み嫌われる存在になるなどゲームなどでは普通あり得ないと思ったからだ。
しかし王女によると、王冠から貰う能力は人によってバラバラで、たまたまその能力を手に入れたそうだ。そんなことありか?と思いつつも、王女がそこは人の個性などで決められると言っていたからそこは仕方がないのかと思った。
王女は焦って何とかしようとしたのだろう、その結果英雄がこの国の近くにある遺跡やら何やらに行き、その最下層にある宝を使えば忌み嫌われる能力では無くなる……らしい。
それを信じた王女は自分の能力を使い俺達を見つけ、城の転移魔法使いに頼んで俺達を呼んだそうだ。 だが途中で邪魔が入り転移位置がずれた結果俺達は森林に転移していた。
ーーーこれが事の顛末だった。
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「……つまり俺達は転移魔法を使って城に移動するはずが邪魔が入って森林に転移したってことか…」
「そうです。今回は本当に申し訳ありません、私がいながら邪魔が入り皆様を危険な目にあわせてしまって……」と頭を下げて俺達に謝罪した。
「顔をあげてくれ、王女、確かに俺達は危険な目にあった、けど皆無事なんだ。それで良いじゃん?それに一国の王が簡単に頭を下げる必要は無い、違うか?」と俺が言うと王女は泣き出した。
「お、おい……泣くなよ…………」
「私はあなたを呼んで良かったと思いました‼普通ならこのような話を信じてはもらえないでしょう、なのに貴方は信じてくれました。私は嬉しいです……」
俺は王女って案外脆い存在なのかと思ってしまった、理由はもし彼女が王女でなければ恐らくは俺達と同じような年齢の単なる少女だからだ。
俺は王女に同情した。が、夢吐達はそうでは無かったようだ。
「……結局は何だ?あんたの身を忌み嫌われ無いようにするためだけに、俺達は危険な遺跡やら何やらに行って戦わないといけないのか?それは単なる自己満足だよ‼転移魔法使える奴がいるならさっさと元の世界へ戻してくれ‼」
「……それは出来ないのです。転移魔法は一度使うと最低でも三年は使えなくなるのです。」
「ってことは、俺達は元に戻れるまで少なくとも三年はかかるのか?」
「はい……こればかりはなんともなりません…ですが、ある遺跡には転移魔法をまた使えるようになる宝があると聞いています‼帰りたいならばそれを取ってきて下さい。」
「……つまり、俺達には選択肢は無いと?」
「そうなります……ですがその遺跡に行くために、他の遺跡の宝などが必要になります‼私はそれがあれば忌み嫌われる事は無くなるのです‼お願いです!私の為でもありあなた達の為でもある宝を取ってくる英雄となってくれませんか?」
最早俺達は選択肢が無いので王女の言う通り英雄とやらになるしか無かった。
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その日の夜、俺達は城の部屋に移動した後でまた王女の前にいた。
王女が言うにはこれから英雄になるためにその能力を見るそうだ。
「では、これから皆様の能力を見させて頂きます。体には影響ございませんので安心して下さいませ。」
俺としては夢吐とか悠や看護資格持ちの女子とかは能力値高くて俺は低いんだろうなーと思っていた。
…………だが、あんなことになるとは思っていなかったのだ。
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