第三話〜変化〜
三十分後。
「ったく、何だってんだよ」
俺は、帰路についていた。
部長は結局どうなったかは知らない。
気がついたら姿が見えなくなったので、無視して帰ることにした。
帰ったところでむかつく親がいるだけ。俺の日常は変わらない。
つまらなく、くだらない日常。
ブーッ、ブーッ。
携帯のバイブの振動が足に伝わった。
この時点で俺は過失に気づいた。
……やべ、あいつ学校に置いてきたままだ。
俺は一応、メールを確認した。
『今日部活早く終わったから、いつもの場所で待ってるよっ』
最悪だ……。
メールの主は高本真紀、簡単に言うと俺の彼女だ。
実のところ、俺はこいつにそこまでの感情を入れてるわけではない。
ただ、訳もわからずに告白されて、そのまま流れで了解してしまっただけだ。
背の低い童顔の彼女は学年でも注目の的で、俺を好きになる理由が全くわからなかった。
俺よりかっこいい奴なら学校にごまんといる。頭のいい奴も運動神経のいい奴も。
それなのに、高本は俺とつき合っている。
休日はなるべく時間を作ってデートなんかもして、お互い一緒にいて楽な関係くらいにはなった。
でも、俺はあいつのこと、好きなのだろうか……。
俺は学校に引き返して、高村との待ち合わせ場所(クラス棟と体育館を結ぶ渡り廊下に設置されている水道)に向かう前にクラス棟一階のトイレに寄った。
今さら急いだところで高本が怒っていることには変わりないんだし、まぁゆっくりするってのは悪くないでしょ。
俺は小だけ済まして、手を洗っていた。
そのとき、俺はふとしたものに目がいった。
防犯、カメラ。
この学校は、いじめなんかにも敏感っていうこともあるが、それ以前に今はセキュリティ時代、いつ不審者が学校に入り込んでもおかしくはないからこうして防犯カメラは欠かせない。にしても、こんな露骨なものをトイレの入り口につけなくたっていいだろうになぁ……。
俺はトイレを後にし、廊下を通って直接高村との待ち合わせ場所に向かった。
キラッ。
瞬間、廊下の外に並列している木から、光の反射が見えた。
俺は気になって、その木を遠くから観察してみた。
確認できたものを知ったとき、俺はこの学校の恐ろしさを知ったと思った。
防犯、カメラだ。
確かに、トイレで見たようなあからさまなやつなら俺だって驚かない。でも、あれは完全に盗撮のような要領で設置されている。最新の小型のやつだ。
「まさか……」
俺は反対側の廊下へと走り出し、同じように外を見た。
キラッ。
果たして、それはあった。
トイレだけでなく、こんな開けた廊下さえも防犯が必要なのか?
「これじゃぁ、まるで」
「監視カメラのようね」
後ろから、声!?
俺は素早く後ろを振り返った。
「宮野……さん?」
後ろにいたのは、宮野だった。
しかし、目の前の人物は今までに見ていた穏やかな目を向けてはくれなかった。
鋭い。
「あなたも、気づいたようね」
声のトーンが……低い。
「お……お前は誰だ」
俺が口にしたのは、そんなたわいもないことだった。
「宮野よ、あなたもそう言ったじゃない」
こう言われることくらい、目に見えただろうに。
「昨日、まさかあなたがここにくるとは思ってなかったわ。今日の変化から、私にも気づいているものだと思ってたけど、違った?」
……昨日。
「あの黒髪、お前だったのか……」
「そうよ」
その瞳が、まるで俺の全てを見透かしているような錯覚を起こした。
「あなたは今事実に気づいた。これで二人目よ。この学校が封印したものに気づいたのは」
……封印?
そんなの、ゲームの単語だろ?
そう思ったけど、俺にはこのとき、声を出す勇気がなかった。
「ねぇ、協力しない?」
……協力、だと?
彼女は俺の顔をのぞき込んで、いつもの天使でない、悪魔の笑顔を見せて俺にささやいた。
「一緒に、屋上へ行きましょう」
その日、俺の『日常』が変質した。
書きたいことは山ほどあったはずなのに、いつの間にかそれが書けなくなっていたりして、すごく内容が薄いですが、感想などあったらよろしくお願いします。