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第一話〜逃避〜

「ふざけやがって……」


ブツブツと独り言を言いながら、誰もいない小さな路地をふらつく。

午後11時、不審者としても少年の補導としても人に捕まる理由はいくつもあった。

雲が出ているのがよくわかるくらい空が白い。夜の闇がほんのり薄れているような空色。


家を飛び出した理由は、簡単だった。


外部模試の点数が低かった。

     ↓

親、しかも普段勉強については何も言わない親父も、キレた。

     ↓

「うるせー!人の勝手だろが!」


……と。


中学のころは、そこまで勉強しなくても、満点近い点数がとれた。

だから、当然のように公立の進学校に入学した。

あれから一年と3つの季節が過ぎ、気がつけば大学受験となってしまった。

今まではそれなりに勉強して、三百人いる学校で、一桁をとることもできた。


でも、思う。

青春と呼ばれるこの時間、俺はただ勉強して、友達とくだらないことで笑いあってきた。

それだけなのだろうか。

もっと、もっと、胸をざわつかせるアグレッシブな出来事があるんじゃないんだろうか。


「それを、無駄な時間って片づけるのか……?」


ふとつぶやいたこの言葉が、俺を混乱させた。


それで、現在の深夜徘徊に至るわけである。


「もうちょっと服着ればよかったなぁ……」


白無地の半袖シャツにグレーのセーターを重ね、買ったばかりのジーパンと体育だけにしか使わない黒のスニーカーをはいたくらいじゃ、この雪がちらつきそうな夜を歩けるわけがない。

でも、俺は帰りたくない。そう簡単に折れたくない。


学校のやつらは、どう考えてるんだろう。

諦めてる?

求めてる?

実現してる?

望んでない?

わからない。

俺が求めてるものも、漠然としすぎてるしなぁ……。


どこへ行くかを考えていなかった俺は、我に戻ると通学路を歩いていた。


「もはやこれも、空虚の証拠なのだろうなぁ」


と、つい最近模試で見た評論の一文のような言葉を漏らす。それこそも、それだろうに。


しばらくして、本当に学校に着いた。正門は厳重な鉄格子によって閉められている。


こうして見ると、結構広い。何坪くらいあるんだろう。

サッカー、ハンドボール、野球、その三種の野外スポーツが充分に出来るグラウンドは、四階建てのクラス棟の北に広がっている。

中央に位置するのは三階建ての管理棟、職員室とか生活指導室とか、要は職員がいる建物で、クラス棟へと渡り廊下が通じている。

東の隅には、武道場と体育館がある。よく通った、ただそれだけになろうとしている場所。

西のはなれには旧校舎があって、今では家庭科室や音楽室として使われている。

どこにも、生活のにおいがある。どれも、日常の香り。


本当に、ここで勉強してるんだ。

何故だろう、今はここが別世界のような気配がする。

でもここが俺の学校、何一つ不自由なく生活できていたはずの世界。

俺は、何を求めてるんだろう。


「……ん?」


クラス棟の非常階段の近くに、人がいる。

やば、見まわりだ。

俺は後ずさりを始めた。

しかし、すぐその足を止める。どうも、前にいるのは先生ではない。


「誰だ」


俺は声を荒げた。

影はすぐさま正門へと走り去ろうとした。


「待て!」


俺は影を追った。

しかし影のほうが速く、追いつけない。

影から、長い髪のようなものが伸びていることだけは、近所の明かりでわかった。


逃げられてしまった。


「帰ろう……」


あれは気のせいだ。そういうことにしよう。


だって、ここは日常、そんな突発的な出来事がない世界だから。

語彙が少なくて説明不足な話になってしまいました。

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