プロローグ
屋上。
小説やドラマでは青春や憂いの舞台として主人公が登場する場所。
友とのお昼ご飯、語らい、喧嘩、一人で考え事……。そのシーンは様々だが、いつもそこには屋上があった。
背景として描かれる青い空や町並み、時折月夜の輝かしい光すらも受けてその場所は際だつ。
その場所は僕たち少年の夢の場所であり、自分の物語が広がる場所だと信じていた。
だが、そんな僕らを邪魔したのは、社会問題だった。
飛び降り自殺。
近年高層の建物が増える一方で、人はその高みから自らを投げ捨ててしまう。
何を思ってか、何に脅かされたのか、その理由は様々だが、この自殺は今でも増加している。
高校生も例外ではなく、学校の屋上からその若い命を失うこともあった。
当然、対策はなされた。
学校カウンセラーもその一つだったが、直接の解決方法としては力不足だった。
そして、次に行われたのは、単純であり有効すぎる手段だった。
封印。
とうとう、屋上は閉鎖された。
通じる扉は厳重にされ、生徒がどうにかできる代物ではなかった。
外からの侵入を考えることもできなかった。なぜなら、今日のセキュリティ重視時代、怪しい行動の一つで自分の身は危うくなってしまうからだ。
安全、確かにそう言えば問題は解決された。
しかし、それは同時に僕たちの夢を壊すことにもなった。
卒業アルバムの写真にも使われなくなった場所。
何も考えなければ一生縁のない場所。
普通に生活していれば気にはならないが、その場所への興味は少しながらあった。
もはや非日常となってしまった、屋上。
もし、あの場所にもう一度行けるチャンスが出来たとしたら
世界は、どう目に映るんだろう。
もし、あの場所に日常を持っていくことが許されたとしたら
その場所に、何が生まれるんだろう。