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無国時代 本編 二話

「ここがアスタフォンなのか・・・・」

大きな平原に出た。もうここはアスタファン。オール民族上流階級の住む土地だった。アルコスらは敵に見つからないように火を消してアスタファンの景色を眺めていた彼らの目の前に広がっていたのは今まで見たことがない石造りの建物群だった。石造りの建物はとても美しくほとんどの兵士たちはその建物に見とれていた。しかしその建物の美しさとは裏腹に道端には住む家を持たない子供たちがそこら中で寝ころんでいたのだ。

「なんだこれは・・・。さすがにここまでひどいとは・・・・」

オール民族たち全員が自分たちの力で得た恩恵を受け取っていたわけではないのだ。ほとんどの住民は安い賃金で働かされ住む家なんて持たないものが多数だった。本当に恩恵を受け取っていたのは一部の上級階級の者だけだった。

アルコスは深呼吸をした。

「我々が恨むべきなのはどうやらオール民族ではないようだ」

「と、言いますと?」

「まだわからんか。オール民族自体には死神などはいない。死神どころかもうすぐ死にそうな奴等ばかりではないか」

またアルコスは深呼吸した。次のはさっきのよりも深く大きく呼吸をした。

「死神はあの石造りの建物に住む連中だ」

アルコスは唇をかみしめたまま涙を流した。そして

「アルメディよ。全ての兵士を並ばせろ」

「了解いたしました」

「最後に演説をしたい」

兵士たちは整列した。規則正しい並び方だ。全ての兵士がオール民族を倒すことに執念を燃やしていた。

アルコスは平原にある少し高い切り株の上に立ち高らかに演説を始めた。

「皆の者。ここまでの戦いぶり非常にあっぱれである。我々は間もなくオール民族の上流階級が住む都市アスタファンに着く。我々の目的はオール民族の族長エーディを殺すことだ」

「そうだー!」「我々には準備は出来ている!」

兵士たちは口々にそう叫ぶ。

「しかし皆の者、私はこう考えたのだ」

「どうお考えになられたのですか?」

「今我々だけでエーディを殺すことは我々のためにはなるがこのオール民族のためにはならない」

「・・・・?」

「ましてやいきなり族長を殺されたのであれば住民たちが武装奮起する可能性もある。そうなったら我々も太刀打ちできない」

「何が言いたいのですか、アルコス様?」

「私はこれが言いたいのだ。我々はまずエーディを生け捕りにする。そして明日の朝アスタファンの大広場にて我々が今後この地をどのようにするか演説をする。そしてエーディを処刑していいのか住民たちに尋ねる。多数の賛成が得られたその時にエーディを処刑するのだ」

「はぁ?」

「我々だけでエーディを殺害するのであれば知れは我々の憎しみだけで殺す人殺しだ。これではオール民族とやってることと同じだろう。我々はまず相手の立場や意見を聞きそのうえで処刑するか否かを決めればいいじゃないか」

「アルコス様。質問がございます」

「なんだ?」

「もし、住民たちが賛成しなければどうなるのですか?」

アルコスは少し沈黙し、そのあとこう笑顔で語った。

「そんなことあるはずがなかろう。あいつの悪政は住民全員が知っているはずだからな」

そういうとへしたちの表情はきりりとした表情から一気に顔がゆるみ全員笑顔になった。

「では行こうか。エーディの元へと」


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