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魔王な勇者~勘違いから始まる魔王たん~  作者: 大野かな恵
第0譚 魔王な勇者~ある日、森の中、勘違いに出会った~
5/15

◆ ◆ ◆






 絶世の美少女と見詰め合うこと暫くが経ち、彼女が漸く何らかの行動を示そうとしたのと同時に護衛と思われる男性の一人が呟きを漏らします。


「ぁ」


「これは一体どうゆう状況なんだ?」


 人気のない森の中で女性と少女が向かい合っており、さらには一方が悲鳴を上げているこの状況が理解できないのでしょう。私にも何故このような状況になっているのか分っていませんし。


 未だに呆けている私を尻目に助けが来たことに気がついた女性は護衛の男性に這い寄ります。


「助けてください、騎士さま!」


「落ち着いてください。我々は何からあなたを助ければいいのですか」


 この中で最も体格の良い男性が縋り付く女性の肩を押さえながら声をかけています。そのお陰か女性は少しは落ち着きを取り戻したようですけど、早く誤解を解いてもらいたいものです。私ほど人畜無害な人はいないというのに何時までも怯えられると正直傷つきます。


「あの少女が? どう見たって無害そうですが……」


 男性の一人がこちらを見ながら戸惑った様子で呟きます。はい、どう見ても怪しまれていますね。正直これは困りました。兎に角話をしないことにはどうにもなりません。


「そうですね。そちらの貴方、少しお話を聞かせてもらってもいいですか?」


「はい」


 漸くまともな会話はできると内心安堵しながら短く返事を返します。本当なら敵意のない満面の笑みで答えたいところなのですが私の表情筋は無職のニートさんのように働いてくれないので殆ど変化がなかったりします。まぁ、分る人には分るらしいですけど。


「ところで貴方は何者ですか? そして貴方のような小さな女の子が一人で森の中で一体何をしていたのか説明して頂けますか?」


 ぼんやりとしていると金髪碧眼の綺麗な美少女が鋭い視線で見ていました。多少上の空であったこちらに非がある上、身分不詳な身ですので仕方がないとはいえ申し訳ないことをしました。


「やっとまともな方と会話ができるというのに、しっかりしなくては」


 聞こえないような小さな声で気合を入れると誠意を示すためにも目を合わせるように金髪碧眼の美少女に向き合います。そして彼女の質問に答え、更に円滑なコミュニケージョンを取るためにもまずは自己紹介をしましょう。ついでにここがどこなのかも尋ねることにします。


「私は只野真央(ただのまおう)と申します。不躾で申し訳ないのですがここはどちらでしょうか?」


「……ここはヤマト王国の領内にある森の中ですよ、魔王さん」


『技能を覚えました。

  耐硬の守護Lv5

  耐恐の守護Lv5

  威圧Lv5』


 へぇ~、ここはヤマト王国? という国にある森の中なのですか。


 漸く情報が手に入り嬉しいはずなのですが素直に喜べません。何故なら何故か金髪碧眼の美少女とその護衛たちが私に警戒を露にしているからです。加えてそれとは裏腹に緊張感のないピロリーンという間の抜けた音が聞こえると同時に、技能を覚えたという表示が目の前に浮かび上がり視界を邪魔にならない程度に遮っているのですから。


 彼女たちの唐突な豹変振りと突然起こった謎の現象に困惑していると更に続けて先程の音が頭の中で鳴り響きます。


『技能を覚えました。

  耐混の守護Lv1』


 って、また何か増えましたし!? どうしてですか?


 護衛たちが殺気立ち剣の柄に手をかけ、金髪碧眼の美少女が掌をこちらに向けて睨みを利かしているというのに、つい首を傾げてしまいます。


 守護というのは何でしょうか? それに威圧というのも気になります。ってそもそも何で急に技能を覚えたのでしょうか。あっ、そういえばヤマト王国ってどこなのでしょう。


 次から次へと浮かんでくる疑問はさておき、まずはこの状況をどうしましょう?


 取り敢えずこの場をやり過ごそうと曖昧に笑みを浮かべてみます。もちろん表情は殆ど変化しませんが。


「っ!? ここは退きますよ! 光よ、魔を導く術式の下、ここに現出せよ! ライトボール!」


「……へ? っ!?」


 金髪碧眼の美少女が掌から頭上に向けて光の玉を出すという摩訶不思議な光景に思わず声を漏らしその軌跡を辿ります。その刹那、光の玉は眩く発光しました。咄嗟に手を翳すも閃光は私の視界を真っ白に染め一時的に視界を奪います。


 って、悠長にしている場合ではありませんでした! 目が、目がぁ~!?


「承知しました。風よ、魔を導く術式の下、ここに現出せよ! ウインド」


「了解っと。土よ、魔を導く術式の下、ここに現出しな。ストーンランス。姫さん!」


「えぇ」


 視界が戻らない某大佐のような状態の中、背筋が冷えるような嫌な予感を感じ取り咄嗟に後ろに下がります。するとその刹那に台風でも起こったかのような風の音が先程までいたであろう場所から聞こえ、何か硬いものが衝突したかのような音が続けて起こりました。


 って、今度は一体何が起こっているのですか!?


「ちっ、避けたか。ならもういっちょ、ストーン……」


「アーノルド、これ以上は。少し無理をしますが一気に戻りますよ。そこの彼女も連れて私の元に集まってください。魔を導く術式の下、我らを導き空間を越えよ」


「姫さん、こっちは準備完了だ」


「はい。ではいきます、ワープ!」


 そんな金髪碧眼の美少女の声を最後に森は静寂を取り戻し、私の視界が正常に戻ったときにはそこには誰もいませんでした。


 ……置いてきぼりですか? はい、ぼっちです。


 突然の出来事に状況を飲み込めず出遅れた私は荒れ果てた森で一人佇み途方に暮れるのでした。……ん、視界の端に何かが表示されているようです。色々あって気づきませんでした。


『技能を覚えました。

  耐光の守護Lv4

  光魔法Lv4』


 …………え?






◆ ◆ ◆






 えぇー、知らぬ間に魔法使いの一員となった私ですが現在森の中を探索しています。


 え、魔法はもう試したのかですか? 当然です、……と胸を張って自慢したいところですが少々問題が起こりまして魔法は使えないのですよ。


 ……端的に言うと黒歴史再びということです。先程聞こえた詠唱のようなものはものを唱え光の玉をイメージし、更に魔力? を込めるイメージで挑戦してみたのですが駄目でした。何故でしょう? 先程の出来事を思い返してみても、杖などの発動体を持っていなかったはずですので杖が必要という訳でもないようですし、今のとこと原因がとんと検討がつきません。


 ということで魔法は後回しにして人を求めて三千歩という次第です。因みに三千歩というのは正確ではありませんので悪しからず。


「それにしても人っ子一人いませんね」


 先程怯えられた女性の格好が軽装だったこともあり近くに村があるのではと思ったのですが見当違いだったかもしれません。やはり彼女たちと別れた――決して置いてかれた訳ではありません――のが痛いですね。こうなると知っていれば村の位置でも聞いておくべきでした。


「はぁ」


 なかなかうまくいかず大きなため息が漏れます。そもそもどうしてこんなことになっているのですか。運が悪いせいですか、なら全振りしてしまいますよ。


 自分の運のなさに思わず八つ当たりをしてしまいますが、何とか思い止まり強さという名のステータスの表示を閉じます。そういえば、ステータスで思い出しましたが守護が何なのかを確認するのを忘れていました。


 システムメニューから技能を開いて守護とついた技能を見比べながら当時を思い出しつつ考察してみます。


「う~ん。……耐なんたらの守護という表記からして、恐らくゲームで言う耐性という感じでしょうか?」


 思いついた推測は強ち間違いではないように感じます。あの時、殺気立つ護衛の方々に睨まれ、つまり威圧され身体が竦み動けなくなる『硬直』の耐性と、睨まれた際の『恐怖』の耐性が付いたのでしょう。加えて威圧が技能として取得されたということでしょう。耐混は状況についていけなかった『混乱』ということで辻褄が合いますしほぼ間違いないと思います。


「ということはあの光の玉は光魔法ということですよね。しかし、どうして急に魔法を唱えたりなどしたのでしょうか?」


 あのときの彼女たちの行動を振り返り益々謎が深まります。そういえば最初に出会った女性も金髪碧眼の美少女も私が自己紹介した途端に顔色を変えていたような気が……。


「まさか






 名乗るときの苗字と名前の順番が逆で、更に男みたいな名前が勘違いされて森の中で一人女装を楽しむ怪しい奴と警戒されたのでは!?」


 そうです、ここは異世界でした。只野真央。異世界風に名乗るとマオウ・タダノ。苗字にしろ名前にしろ男っぽい名前には違いありません。加えて私の見た目は女の子寄り、寧ろ異世界に来てからは完全に女の子になっていますので女装していると思われてもおかしくないはずです。


 Q.E.D. 謎は全て解けました。じっちゃんの名に懸けて真実はいつも一つです。……あれ、でも向こうとあまり変わらないのでは?


「……まぁ、細かいことは置いておきましょう。それにしても失念していましたね。……改めて考えてみるともしかしたら苗字があるのも問題になるのかもしれません」


 私がよく読んでいた小説では苗字を名乗っていいのは貴族だけという作品も少なくありませんでしたし。では、暫くの間フルネームは必要なときだけ――日本人と明かすときや本名が必要なときなど――にして、普段はただのマオと名乗ることにしましょう。……あれ、あまり変わっていないのでは?


 何はともあれ事前とまでは言いませんが人里に着くまでに懸念が払拭されやっと気が楽になりました。これでコミュニケーションが取れます。……人に出会えればですけどね。


「はぁ。でも」


 先行きが不安になり無意識のうちにため息が漏れます。しかし、いつまでも落ち込んでいられないと決意を改め、新たな出会いとこれから先に待ち構えている何かを期待して探索を続けるのでした。




名前 只野真央(ただのまおう)

 レベル 1

 職業  学生

 HP  100/100(0)

 MP  50/50(0)

 攻撃力 2(0)

 防御力 2(0)

 知力  1(0)

 精神力 1(0)

 素早さ 3(0)

 運   1(0)

 BP(ボーナスポイント) 0/10

 称号

  異世界人、楽する者、

 技能

  システムメニュー、闘魂注入Lv1、身軽Lv4、受身Lv1、剣術Lv1、気配遮断Lv4、気配察知Lv5、咆哮Lv1、音撃Lv1、閃駆Lv1、高跳躍Lv1、闘術Lv1、投擲Lv1、採取Lv1、鑑定Lv1、鑑定眼Lv1、探索Lv1、索敵Lv1、直感Lv1、危機感知Lv1、予知Lv1、耐硬の守護Lv5、耐恐の守護Lv5、威圧Lv5、耐混の守護Lv1、耐光の守護Lv4、光魔法Lv4

  SP(スキルポイント) 0/10

 装備

  武器 

   右 木の枝

      種類 片手剣

      攻撃力+0 

   左 なし

  防具

   頭 なし

   体 異世界の服

      防御力+0

   足 異世界の靴

      防御力+0

  装飾

   足 異世界のニーソックス

      防御力+0、魅力+2




真央「今回あの戦闘で光魔法を覚えましたが、土魔法のようなものと風魔法のようなものは覚えていないのは何故でしょう?」


アーノルド「それについては俺が解説しよう」


真央「えっと、どちら様でしょうか?」


アーノルド「(ショボーン)金髪碧眼な姫さんの護衛の一人で御者をしていたダンディーでマッチョでイケメンな男だよ」


真央「あぁ、あのゴリゴリな人でしたか。これは失礼しました」


アーノルド「ゴリゴリ言うな! ……とまぁ雑談はこの辺にしておいて解説に入るぞ。覚えた魔法と覚えなかった魔法の違いはお前に関与したかしてないかなんだ」


真央「そういえば確かに光魔法で目はやられましたが、他の魔法は避けた記憶があります」


アーノルド「そういうことだ。仮にあの場面で喰らっていれば覚えていたかもしれないぜ。……まぁ、無事では済まない可能性もあるけどな」


真央「……避けて正解でした」


体格の良い男性「いやいや、漢なら耐えるべきだろJK(常識的に考えて)


風魔法使いのエアーマンさん(仮)「いや、あの場面では華麗に避けるのが正解だろ、マジで」


アーノルド「ぶっちゃけ俺なら石壁で防ぐけどな」


二人「「名持ちは黙ってろ! 脳まで筋肉のスカポンタンのくせに生意気だ!」」


アーノルド「あぁん? しばくぞ、コラ!」


 映像が乱れております。暫くの間、まおちゃん(十歳)の可愛らしい映像をお楽しみください。


可愛らしいまおちゃん(十歳)「みんな、けんかしたらめっ☆だよ(にっこり)」


三人「ゆるしてつかあさい(平伏す)」


真央「……何て言うのか、折角の世界観が台無しですね。はぁ」


 あとがきに登場する人物は事実とは異なり本編とは関係ありません。恐らく、きっと、メイビー。


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