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次回から投稿時間を土曜0時に変更します。今後もよろしくお願いします。
◆ ◆ ◆
なんやかんやで私がいる現在地が異世界だということが判明しました。……認めたくはありませんけどね。
ところでここが異世界だとすると、私はこうして森の中でぼ~っと突っ立っていていいのでしょうか? 私が知る小説の主人公なら異世界にやってきて直ぐに魔物やら盗賊やらと戦闘することになるのがテンプレでしたけど。
あれ、もしかして私って危険な状態なのでは?
途端に脳裏に不吉な未来が過ぎり冷や汗が流れ始めます。加えて先程まで気にならなかった木々のざわめきの音色も今では微かに聞こえるだけで身が縮こまる次第ですし。これではまるで存在するのか定かではない幽霊に怯える子供みたいです。
……いやいや、そもそも異世界に魔物がいるなんて誰が決めたのでしょうか? 所詮は幽霊と同じで架空の存在に違いありません。
たとえそんな存在がいるとしても、そんなものは物語に登場するような勇者に任せておけばいいのです。私は精々村人Cでしょうしお門違いもほどほどにして欲しいものです。
しかし……念のため、本当に念のためですが安全の確保をしましょう。丁度近くに登りやすそうな木がありますし、なんだか木登りがしたくなってきましたのでそこに登ることにします。……本当にそういう気分なんですからね。
「うんしょ、うんしょ、どっこいしょーいち」
木登りの経験がない私でしたがなんとか登ることに成功しました。今日はスカートではなかったのが幸いでした。因みに現在の服装は半袖のTシャツにショートパンツ、あとはニーソックスだったりします。異世界に来ると知っていれば他の服装をしたのですが、今更悔やんでも仕方ありませんね。虫に刺されないといいのですが、今はどうすることもできませんし。最もそれ以上に恐ろしい生き物がうじゃうじゃいそうですけどね。……はっ、これはもしかしてフラグなのでは!?
「ふぅ~。……さて、これからについて考えましょうか」
それはさておき、言葉に出すことで自分に言い聞かせながら改めて現状の確認をします。
どうやら私は何故か異世界に来てしまったようです。持ち物は充電が80%くらい残っているスマホと財布、ポケットティッシュにハンカチがそれぞれ一つずつ。そして何故か入っていたアメちゃんが二つ。
続いて異世界に来たことで手に入った能力で唯一判明したシステムですね。以上が私の現状です。
診断結果、あなたは間もなく死にます。
……ってボケている場合ではありませんでした。生き残るために必要な食料はアメ二つだけですし早めに調達しなければ一日と持ちそうにありませんね。スマホや財布は異世界では役に立ちそうもありませんし。システムが使える能力だと嬉しいのですが。兎に角、もう一度試してみましょう。
「システムオープン」
先程一度閉じたシステムメニューを再表示させ改めて内容を確認します。因みに先程は右上の×印に触れると画面が消えたのですがどうやら基本操作はタッチでするようです。
目の前に表示された半透明な画面には六つの項目がありなんだか記憶を失う前まで遊んでいた竜なクエストを彷彿とさせます。項目はそれぞれ調べる・強さ・技能・装備・道具・設定となっています。……ツッコミ待ちでしょうか?
ツッコミたい衝動を抑え取り敢えず上から順に確認していきます。
調べるをタッチしてみます。すると新たな画面が目の前に表示されました。
『名称 木の枝
効果 なし
説明
ただの木の枝』
……木の枝、ですか。私が思うに目の前の対象を調べた結果が表示されたのでしょう。鑑定みたいなものですかね? 後ほど要検証ですね。
続いて強さをタッチします。すると先程と同じように新たな画面が表示されました。
『名前 只野真央
レベル 1
職業 学生
HP 100/100(0)
MP 50/50(0)
攻撃力 0(0)
防御力 0(0)
知力 0(0)
精神力 0(0)
素早さ 0(0)
運 0(0)
BP 10/10
称号
異世界人
技能
システムメニュー』
本格的にRPGゲームみたいになってきましたね。これは所謂ステータスということでしょうか? レベルは1で職業は学生になっていますね。
能力は六つに分かれているようです。ところで項目の右側の数値が0表示ということは恐らく装備の補正値が記載されるのでしょう。()があることから補正値が二種類あるようですし、BPというのが怪しそうですね。試しに加えてみましょう。
『名前 只野真央
レベル 1
職業 学生
HP 100/100(0)
MP 50/50(0)
攻撃力 0(0)
防御力 0(0)
知力 0(0)
精神力 0(0)
素早さ 0(0)
運 1(0)
BP 9/10
称号
異世界人
技能
システムメニュー』
運に加えた分のBPが減り運の数値の左側が増えました。ということは装備の補正は()内ですかね。因みに運に加えたのは私情です。……こうして異世界にいるのですから察してください。
あと分ったことは割り振ったBPは元に戻せるようです。やり直しが利くというのは意外と嬉しいですね。全振りとか夢が広がります。まぁ、今は生き残るためにバランスよく割り振りますけどね。
続いて称号と技能の項目は見ての通りですね。これ以上でもこれ以下でもないようです。そういえば魔法の項目がないようですので技能に含まれているのでしょうか? となると……先ほど痴態を演じた意味はなかったということですね。……あれは私の黒歴史となりました。
「はぁ~。次にいきましょう」
重いため息を一息吐き落ち込む気分を切り替えると次に移ります。技能を開くと新たな画面に技能の一覧が表示されました。
『技能
システムメニュー
SP 10/10』
強さにもありましたが今ある技能はシステムメニューだけのようです。しかし、その下に気になる言葉を発見しました。
「SP」
呟く声を漏らしながら逸る気持ちを抑えSPをタッチします。すると未修得のスキルの一覧が表示され……ませんでした。
「ですよねぇ」
残念な気持ちを言葉に出しつつ考察を続けます。予想通りSPは獲得済みの技能のレベルを上昇させるためのもののようです。因みにシステムメニューにはレベルの概念がないようで上昇できませんでした。タッチするとエラーの表示が出て、レベルを上昇できませんと出ました。
ある程度把握し終わると私はがっくりとうな垂れます。予想していたとはいえ期待を裏切られたのは結構堪えました。好きな技能を獲得できるなど簡単にチートできるほど人生甘くないってことですよね。……まぁ、システムメニューが準チート級ですけど。
下落しつつある気分をなんとか保ちつつ続いて装備をタッチします。こちらも同様に新しい画面が表示されました。
『装備
武器 なし
防具
頭 なし
体 異世界の服
防御力+0
足 異世界の靴
防御力+0、素早さ+0
装飾
足 異世界のニーソックス
防御力+0、魅力+2』
私の装備は異世界シリーズのようです。まぁ、装備というよりただの服装なので補正値がなく、装備としては今一でしょうけどね。……ところで隠しステータスがあったような気がしますが一先ずおいておきます。魅力って、え。
流石に武器がないのは問題がありそうなので先程調べた木の枝を拝借し装備することにします。攻撃力は上がらないでしょうがないよりはマシです。
勿論、装備は装備しないと意味がないと最初の村の村人に言われないようにしっかりと装備できているか確認しました。……装備せずにゲル状生物に囲まれるのはもうコリゴリですからね。
暫くの間木の枝を軽く振りある程度満足すると次の項目に移ります。画面に表示された道具は予想に反して何もありませんでした。私の予想では先程確認した所持品と装備品である木の枝などが表示されると思ったのですが。
「う~ん。道具がないということは……もしかして」
色々な小説を参考に頭を悩ませた結果、私が到達した結論はアイテムボックスでした。所持品とは別の道具を出し入れできるという風に考えた末の推測です。
試しに木の枝を収納するようにイメージします。
「あっ、できました」
すると木の枝はそこにあったのが幻だったかのように消えてなくなりました。急いで画面を確認すると木の枝と表示されていました。どうやら成功のようです。
続けて取り出すようにイメージをしてみます。しかし、木の枝は取り出せず空振りに終わります。どうやら何らかの条件が必要なようです。
「ふむふむ。実験が必要ですね」
その後、試行錯誤の末色々と試した結果分ったことは以下のことでした。
1、収納するには触れていることが必須。
2、収納限界は不明だが同じものは同様に数え、×○で表示される。
3、収納対象は生き物以外。虫などがいなければ木を丸まる一本収納できるかも? どんぐり――調べるで表示されました――で検証した結果は虫が入っていると収納不可だった。微生物や細菌類は恐らく大丈夫だと思われる。
4、排出は道具をイメージし、かつどこにどのように出すかをイメージしなければならない。範囲は半径三メートルほどで排出するものの大きさが三メートルを超えていても少しでも範囲内に収まっていれば排出可能。
5、一度に複数を収納・排出可能。ただし要訓練。
これは場合によっては意外とチートですね。まぁ、異世界でアイテムボックスが標準装備の可能性もありますが。……剣と魔法の異世界なら魔法の鞄とかの名前で普通に売ってそうですね。または空間魔法でしょうか?
「まぁ、私は魔法を覚えていませんけどね」
黒歴史を思い出し思わず悪態を吐いてしまいます。誰もいない森の中に一人で放り込まれて段々ネガティブになってきているようです。これはあまりよくないですね。もっとポジティブにいきましょう。ステータスにはMPだってあったのですから覚える機会はきっとあるはずです。ファイトです、私。
情緒が不安定なのはおいておき最後の項目を確認することにします。設定。なにやらチート臭がぷんぷんしますね。
「タッチっと。……え?」
私は画面に一通り目を通すと驚きの声を上げて硬直します。なぜならそれは私の想像以上にチートだったからです。
『設定
難易度 ノーマル
言語 日本語(標準)
パーティ 未設定』
「えっ、えぇ!? 難、易度?」
この世界は異世界でも特にゲームの世界なのではないかと思う今日この頃です。……私、チートでした。
名前 只野真央
レベル 1
職業 学生
HP 100/100(0)
MP 50/50(0)
攻撃力 2(0)
防御力 2(0)
知力 1(0)
精神力 1(0)
素早さ 3(0)
運 1(0)
BP 0/10
称号
異世界人
技能
システムメニュー
SP 10/10
装備
武器
右 木の枝
種類 片手剣
攻撃力+0
左 なし
防具
頭 なし
体 異世界の服
防御力+0
足 異世界の靴
防御力+0
装飾
足 異世界のニーソックス
防御力+0、魅力+2
『木の枝を装備しました』
真央「片手……剣?」
木の枝「一木瞭然やろ、木だけにな」
真央「……え」
達人なら気合を入れれば斬れます(笑)……おそらく。