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第1章・パート3:嫉妬が命取りになるなんて知らなかった

死にかけたのが二回目のあとにベッドで寝るってのは、まるで天国に入るようなもんだ…


…朝の六時に誰かが冷水をぶっかけてくるまではな。


—起きろ、新人!仕事だ!


—なっ、何だとぉ!?朝ごはんはどうなったんだよ!?


—任務が先、朝食は後。現実の世界へようこそ。


リリエンは一切の情けなしにタオルを投げてきた。彼女はいつもの軽装鎧を着ていて、今日は「お前をトラウマにして成長させるぞ」って笑顔だった。


【新しい任務を受領:「リリエンと共に国境警備に同行せよ」】

【報酬:経験値、生存の可能性】

【推奨レベル:問わず。お前はただの付属物】


俺はため息をつき、あきらめた。


【場所:テラリス北の小道】

太陽がようやく昇りはじめた頃、俺たちはねじれた木と巨大な岩の間を歩いていた。


俺は常に周囲を警戒していた。またゴルルクに襲われるんじゃないかって。


一方リリエンは、腹が立つくらいのんびり歩いてた。


—なんで俺を連れてきたんだ?一人のほうが楽なんじゃ…


—学ばせるため。そして… —彼女は立ち止まり、横目で俺を見た— …あんた、嫌いじゃないから。


—えっ?


—いや、「好き」ってわけじゃない。ただ…あんたが鶏みたいに逃げ回ったかと思ったら、結果的に助けてくれたのが面白かったのよ。


—全然慰めにならねぇよ!


彼女は笑った。そして少しの間、静けさが訪れた。


しばらくして、小川のそばで休憩を取ることにした。リリエンは水筒を取り出し、俺はナイフ持ったリスでも出てくるんじゃないかと警戒してた。


—ねえ、カイト —突然、彼女が言った— あんた、自分の世界に戻りたい?


—…ああ。毎秒そう思ってる。


彼女はうなずいた。


—普通よ。召喚された人の大半は帰りたがる。帰れる人もいるし、そうじゃない人もいる。


—あんた、俺みたいなの何人も見てきた?


—何人かね。1日で終わった人もいれば、何年もいた人も。でも、みんなに共通してたのは一つ。


—「恐怖」?


—違う。「迷い」。自分がこの世界にいるのは間違いだって、いつも思ってた。今のあんたみたいにね。


俺は黙った。


—で、あんたはどう思うんだ?


彼女は俺の方を向いた。一瞬だけ、その笑顔が消えた。


—思うのは…この世界って、思ってるほど間違ってないのかもね。


また歩き出した。さっきよりも、ゆっくりと。彼女の言葉が、胸の中でずっと渦巻いていた。


そして、気まずい瞬間が訪れた。


俺はHUDに気を取られて、根っこに足を引っかけた。


転んだ。


リリエンの上に。


彼女が仰向けに倒れ、俺がその上に。


固まる俺たち。


顔が数センチの距離。彼女の目が皿のように見開かれていた。


—な、なにしてんのよ、このバカ!


—わざとじゃねぇ!あの根っこが悪いんだ、クソが!


俺は慌てて起き上がった拍子に、頭を枝にぶつけた。


リリエンは一秒ほど地面にいたが…その後、笑い出した。


—あんた、ほんとに完璧なポンコツね。


—どうも!がんばってるんで!


—でも… —彼女は再び俺を見て、今度は真剣な顔で言った— …反応は悪くない。あとは一つだけ。


—「勇気」?


—違う。「覚悟」。


街に戻ると、ギルドから通知が届いていた。


【新しい状態を獲得:「同行者指定」】

【リリエン・ファルニスが正式に一時的な師匠として承認されました】

【関係値:+1 現在のレベル:「まだチキンだが、役には立つ」】


そして初めて、自分が荷物じゃないような気がした。


もしかしたら…


本当にもしかしたら…


俺だって、「怖がりの俊足男」以上になれるかもしれない。


モンスターも出ず、リリエンの上にもう一度転ぶこともなくパトロールを終えた俺は、今日は平和な日になると思っていた。


――※ネタバレ:ならない。


ギルドに入った瞬間、雰囲気がおかしかった。いつもは騒がしいはずのホールが…やけに緊張していた。


全員が同じ方向を見ていた。


ミッション掲示板の前に、一人の男が腕を組んで立っていた。背が高く、炭のように黒い髪、輝く鎧。背中には巨大な剣。オーラは「村を救い、乙女に崇められる系」。


顔は「敬意なく話しかけたら斬るぞ」って感じ。


【名前:カエル・ドレイヴァン】

【クラス:エリートヒーロー】

【レベル:36】

【ランク:A】

【現在の状態:上から目線のドラゴン系中二病】


—あーあ —とリリエンがつぶやく— …やっぱり来たか…


—知り合い?


彼女はため息をついた。


—元・部隊仲間。そして元…何か。


—えっ!?元カレ!?


—「何か」って言ったでしょ。詮索しないで。それに近づかないで。


※ネタバレ:もう気づかれてた。


カエルがこちらを向いた。そして、貴族と高レベル冒険者に特有の「見下しスマイル」を浮かべた。


—リリエン。生きていたとはな。


—あんたも相変わらず、石像みたいな顔してるじゃない。


俺は反射的にリリエンの背後に隠れた。木か何かのように。


カエルが首をかしげ、俺に視線を向けた。


—こいつは…?


—新人よ。私の一時的な保護対象。


—ほう。興味深い。


くそ。「興味深い」の言い方が一番ムカつく。なんか命の価値をジャッジされてる感じ。


—もう泣かずに歩けるようにはなったか?


—おい! —反射で出てきてしまった— …歩けるし!泣かないし!たまに!


カエルは俺を見つめた。


—レベルは?


—えーと…3。バグで。


—クラスは?


—えー…グリッチウォーカーって出たけど…


—武器は?


—…パニック?


沈黙。


リリエンはため息。カエルは眉をひそめ、何か講義でも始めそうな顔。


—興味深い。 —またかよ。— …で、こいつに何を教える気だ?


—あんたが部下にしなかったことをするの。生き延びる方法を教える。


それは効いたらしい。


カエルは一瞬目をそらし、それから硬い笑みを浮かべた。


—どれだけ持つか、見ものだな。


【カエル・ドレイヴァン:ライバルとして登録】

【関係性:「優雅な脅威。羞恥プレイ付き」】

【新しいタグ:「え、これがリリエンの弟子なの?」】


【後ほど、ギルドの外…】

俺はまだ情報を処理中だった。


—あいつ…何かだったんだな。


—間違いだったわ。腕はあるけど、パートナーとしては最悪。


—なんであんなに俺をピラニアのいる湖に突き落としたそうな目で見てたの?


—あんたを脅威だと思ってるから。


—は!?俺、ニワトリ倒すのも一苦労だぞ!?


彼女は笑った。


—でもね、カイト。あんたには彼にないものがある。


—何?


—謙虚さ。そして本物の恐怖。それがあんたを生かしてる。


俺は黙った。


初めて…自分がただの「足の速いマスコット」じゃない気がした。


【新しい任務が解放されました:「模擬決闘 ― カエル vs. カイト(リリエン補助付き)」】

【報酬:リスペクト、またはトラウマ】

【推奨レベル:……おすすめはしない。でも強制】

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