表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ

もし誰かが教えてくれていたら──

「お前の死(か、それに近い何か)はあくびから始まるぞ」って。

…そしたら、あの朝もっとちゃんと歯を磨いてたのに。


まぁ、ちょっと巻き戻そうか。


俺の名前は秋山カイト。17歳。高校生。神レベルの先延ばしスキル保持者。

生まれ持った才能? 社会的にギリギリ生存できるレベルで目立たないこと。

俺はデスクトップにずっと残されてる「いつか使うかも」っていう謎のファイルみたいな存在だ。


天才じゃない。スポーツもダメ。ムードメーカーにもなれない。


でももし「心優しいNPC」っていうキャラ職があったら、たぶん俺はレベル99だ。


俺の毎日は、最低限の努力で構成されたアート作品みたいなもんだった:

– 電車で寝ても乗り過ごさない技術。

– ノートを取るフリしてスライムの落書き。

– 中身が謎のパンを食べながら、自分が何かの主人公だったらな〜って妄想。

 (たとえそれが椅子と床の恋愛ストーリーでも。)


野望? うーん。特殊能力? 一応、パソコンを壊さずに自作したことある。


でもひとつだけ、ちょっと変わってるところがある。


俺、本気で思ってたんだ。

「現実の人生も、経験値バーと魔法の剣があったらマシになるのに」って。


で、ある夜、それを声に出しちゃった。

めっちゃ大声で。イライラしてたし、現実にスキルポイントもインベントリもないのが嫌で。


「アクションでも! 魔法でも! ドラゴンでもいいからよこせ! クソみたいなこの世界、いっそ異世界にでも飛ばしてくれ!」


(※注:宇宙の謎存在には絶対に叫ばないように。

 ユーモアのセンスがないか、あってもかなり歪んでる。)


次の朝は、いつも通りの月曜日だった。


賞味期限切れのクッキーを朝食にして、左右で色の違う靴下履いて、貧血気味のゾンビ並みのテンションで学校へダッシュ。


そして教室に座って──あくびをした。


長い。

そして、なぜか魂が抜けるような、謎にドラマチックなあくび。


そしたら、起きたんだ。


空中に閃光。

空間に亀裂。

そして、[対象を確認] とかいう浮かぶ文字。


当然、俺は夢だと思った。

もしくは空腹による幻覚。

もしくは、夢の中で空腹。


──ネタバレすると、全部違った。


なぜか知らないけど、宇宙は俺を選んだんだ。


俺を。

カイトを。

ガチャ運ゼロのこの俺を。


そして、全てが真っ白で耳鳴りの中に包まれる直前、俺の最後の思考はこうだった:


「これ、絶対ヤバいだろ。」


……正解だった。


超正解だった。


でももう、後戻りはできなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ