第35話 騎士団の秘密
俺は騎士団本部へ訪れると、副団長もとい代理団長ナナカに会うため彼女の執務室へ訪れていた。そして、お帰りなさいと俺に言うナナカに対して、俺は気まずいと感じながらもナナカに返事返す。
「ただいま、ナナカ」
しばらく沈黙が続き、何を切り出すべきか迷っていると、ナナカが静かに口を開いた。
「団長。私たちに言うべきことがあるのではありませんか?」
その言葉に胸が痛み、俺は申し訳なさでいっぱいになりながら頭を下げた。
「すまなかった。今まで……放ったらかしにして」
ナナカは小さくため息をつき、少し怒ったような表情で言う。
「もちろん、そのことも怒っています。でも一番言いたいのはそこではありません。なぜ、手紙一つだけ残して私たちの前から姿を消したのかです」
俺は小さな声で、ただ謝ることしかできなかった。
「……ごめん」
そんな俺を見て、ナナカは悲しげな表情を浮かべながら続ける。
「団長が、亡くなった彼女のことで苦しんでいたのは皆知っています。罪悪感があって戻れなかったことも……全部わかっています。だから、誰も団長を責めてはいません。みんな納得したうえで待っていたんです」
「ナナカ……」
胸の奥に溜まっていた重さが、少しだけ軽くなるのを感じた。
するとナナカは、頬を赤らめながらぽつりと言った。
「こんな体にしたんですから……責任、取ってくださいね」
「いやいや、言い方!! 間違ってないけど、それだと俺が変なことしたみたいに聞こえるだろ!」
俺が慌てて否定すると、ナナカは大笑いした。
その笑顔を見て、俺はようやく心から思えた。
(ああ……帰ってきたんだな)
気持ちが落ち着いたところで、本題を切り出す。
「ところで、地下のシードルームはどうなってる?」
ナナカは表情を引き締め、真面目な声で答えた。
「年に一度、異常がないか私が確認しています。ただ、メンテナンスは団長にしかできません。早急にお願いしたいです」
「わかった」
俺は執務机の裏へ回り、引き出しの木目が違う部分に手を置く。
カチリと音がして机が横にスライドし、地下への階段が現れた。
「行こう」
薄暗い階段を降りると、金属で構成された無機質な部屋に出た。
壁には巨大な金属製の引き分け戸。その右下にはタッチパネル。
「ここに来るのも久しぶりだな」
パネルを操作すると、ゲートが音を立てて開き、奥の照明が順に点灯していく。
中には左右にずらりと並ぶ楕円形のカプセルがあり、半分が金属、半分が透明なガラス状の素材でできていた。
奥のいくつかのカプセルには、人が眠るように横たわっていた。
ここは種子保管庫。
本体の肉体を老化停止させ、魔力で作った肉体を遠隔操作するための装置で魔力の肉体がいくら死んでも、本体が無事である限り復活できる。騎士団の団員たちが老いず、死なない理由はこれだ。
クウ、ルナ、ナナカ、そして新人のセリナまで、皆が静かに眠っている。
「これが……俺の罪」
彼女が殺されたあの日。
怒りに燃えた俺は、復讐と戦いを終わらせるという彼女の遺言のために、この禁忌の技術に手を染めた。
本来なら破損していて放置されていたシードルーム。
だが俺は、レブリオンの量産を手伝ってくれたエルセリアに嘘をつき、修理させた。
「団長!!」
ナナカが俺の前に立ちふさがり、両手で俺の顔を掴んだ。
真剣な瞳で、まっすぐに言う。
「いいですか。あの時、団長が怒りに燃えていたのは事実です。でも怒っていたのは私たちも同じ。私は母と父を亡くしました。だから最後には、みんな納得したうえでシードルームを使ったんです。団長だけの責任だなんて、思わないでください」
「……ああ。わかった」
俺は深く息を吐き、ナナカと共に奥のシードメインコンソールへ向かった。
ゲートを開くと、金属の部屋の中央に巨大な大樹がそびえ、その根元には黒い四角い石が置かれていた。
石に触れると青白い線が走り、文字が浮かび上がった。俺は浮かび上がる文字の中からメンテナンスモードを選択し、作業に入った。作業は以外に簡単で劣化した部品の交換などで壊れている箇所はなく、あっという間に作業を終えた。俺はメンテナンスモードから通常モードに戻した。
「よし、終わったし帰るか」
体を伸ばした瞬間、ナナカがニヤリと笑った。
「何を言っているんですか? 団長は今日、騎士団に泊まりですよ」
「……え?」
目をぱちくりさせる俺に、ナナカは満面の笑みで追い打ちをかける。
「学園には明日帰ると連絡済みですので、問題ありません」
「いやいや、絶対エルセリアとグルだろ!!」
「逃がしませんよ」
そう、俺は逃げられなかった。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年の抱負は、私の作品を沢山の人に見てもらうことです。
投稿が1月13日になってすみません。今回の話はとても短いですが、今週中にはもう一話投稿する予定なのでよろしくお願いします。
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