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第33話 悲しい夢

「すまん遅れた」


 俺は部活動見学のあと、皆を寮に送り届けた俺は、トウリス第二学園の学園長室に来ていた。


「遅い!!」


 エルセリアは学園長室の椅子に座りながら頬を膨らませ、不満の声を漏らした。


 「待ちくたびれたよ。師匠」


 エルセリアの隣に立っていたミカは、苦笑しながらそう言った。

 俺は、学園長室に呼び出された理由を尋ねる。


「で……どうして呼ばれたの?」



「なんじゃ理由がなければ読んでは駄目なのか?」


 エルセリアの返しに、俺はため息をついた。今日一日でさすがに疲れていた俺は、早く寮に戻って休みたかった。


「疲れているんだ……要件をお願い」


 エルセリアは俺の顔を見つめ、真剣な表情で告げた。

 

「本題に入ろう…………お主、騎士団に顔を出せ」


 エルセリアのその言葉に、俺の表情は一気に曇った。


 この学園都市では、街の門番や村の警備を担う兵士たちは「衛兵隊」と呼ばれ、代理だが統治者であるエルセリアの直轄組織として、主に警察のような役割を果たしている。一方、騎士団は魔物や盗賊、他国の軍からの防衛を担い、衛兵が逮捕した犯罪者の裁きも行い、災害時の対応も騎士団を中心として衛兵隊と合同で行われる。人数は衛兵隊よりも少なく、かつて俺が創設した組織でもある。


 俺は俯いてしばらく無言になっているとミカが俺に話しかけてきた。

 

 「師匠……騎士団のみんなは師匠の帰りを待っている。200年以上、騎士団に顔を出さないから」


 ミカが言い終わるとエルセリアはため息を付いて俺に言う。


 「お主に何があったのかは聞かん。だが、一度は顔を出せ、でないと話が進まん。人攫いの件は騎士団と協力することになった。いいか、絶対に行くのだぞ」


 俺はエルセリアに念を押されると静かに答えた。

 

 「わかった……明日行く……」


 その後、寮に戻り、何事もなく一日が終わった。しかし、心は落ち着かず、眠りにつくと俺は昔の夢を見た。

 

 

 そう、悲しい夢を。

 

 真っ暗の中、ただ一人、幼い少女が泣いていた。

 

 (子供が泣いている)


 俺は泣いている少女のもとへ歩み寄り、声をかける。


 「お嬢ちゃん。泣いているけどどうしたの?」


 幼い少女は泣きながら答える。


 「お父さんが……お母さんが……お姉ちゃんが……血を流して動かなく……うぐっ」


 幼い少女は再び泣き出した。


 俺は少女のそばにしゃがみ込み、震える肩にそっと手を伸ばして頭を撫でた。


 その瞬間、夢の景色が切り替わり、目の前には成長した少女がいた。幼い時の面影を残しつつも、凛とした瞳を持つ女性へと変わっていた。彼女はバルコニーの手すりに寄りかかり、風に髪をなびかせながら俺を見つめる。


 「ありがとう、あの時、私を助けてくれて」


 騎士の鎧を着た彼女は微笑み、バルコニーの手すりに手をかけ景色を見ながら語る。


 「今度は、私が助ける番になりたいの……お父さんやお母さんがお姉ちゃんと私を逃がしてくれたように。そして、お姉ちゃんが私を庇ったように……」


 「そんな事言うな……生きてくれ俺の為に……」


 「ふふっ……わかった、お兄ちゃん」


 彼女は笑うと笑顔で言い、俺は彼女の笑顔を守りたいと思った。


 だが、その笑顔を俺は守れなかった。


 あの日、彼女は幼い少女を庇い、その身に死霊魔法を受けた。


 彼女は力を振り絞り、俺の腕の中で最後の言葉を紡ぐ。


 「ごめんね……生きれなくて……」


 その言葉に、俺の胸が締めつけられた。


 「謝るな……生きてくれよ……」


 俺は一粒の涙を流す。


 「それは……できそうにないな……」


 彼女は俺の頬に手を添え、微笑む。


 「私が……助ける……番になれて……良かった……だから満足」


 「そんな事言うな!!」


 俺の目から大粒の涙がいくつもこぼれ落ちる。


 「お兄……ちゃん……戦いを……終わらせて」


 「終わらせる。だから……」


 「お兄……ちゃん……私は……お兄ちゃんの……」


 彼女は最後の言葉を言い切らないまま、俺の頬から手が離れ、意識を失った。

 

 俺は泣き叫び、彼女の意志とはいえ、戦いに巻き込んでしまったことを深く後悔した。


 そして、息を荒げながら目を覚ました。


 「はぁ、はぁ、あの時の夢を見るとはな……」


 ベッドの上でそう呟き、しばらくの間、動くことができなかった。


 しばらくして、朝食を摂るために身支度を整え、一階の食堂へ向かった。食堂はいつも通り人が少なかったが、すでにアナとステラが席について朝食をとっていた。


 俺は朝食が乗ったトレイを持ち、アナの隣に座った。俺に気づいたアナは笑顔で俺に挨拶をする。


 「おはよう、レイ」

 

 「おはよう、アナ。それにステラも」


 「ん……おはよう」


 軽く挨拶を交わし、俺も朝食を口に運び始める。いつもなら、皆と楽しく会話しながら食事をするのだが、昨夜の悲しい夢のせいか、俺はどこか上の空だった。パンを噛みながら、無言のまま視線を落とす。


 アナは会話の途中で俺の様子がおかしい事に築き、心配そうに顔を覗き込んできた。


 「レイ、どうしたんですか? 昨日の夜から元気ありませんが、今日は特に元気がありませんよ……」

 

 俺は顔を上げて、アナを見た。一瞬、夢の事を話そうか迷いつつも濁しながら話した。


 「嫌な夢を見ただけですから気にしないでください」


 俺が話を濁したことに気づいたのか、アナは俺に近づく。


 「ど…どうしました?」


 俺が少し驚くと、次の瞬間、アナは俺の頭に手をのせ、やさしく撫でた。


 「よしよし、大丈夫ですよ」


 アナの優しい仕草に、俺は思わず顔を赤らめた。けれど、心の重さが少しだけ軽くなった気がした。


 「怖い夢を見た時よくシンがこうして頭を撫でてくれましたから」


 その言葉に、俺は思わずふっと笑ってしまった。


 「そうですね。それでよくエルザに不敬だって頭を殴られましたね」


 「私は嬉しかったですけどね。少しだけ気分が良くなりましたから」


 俺は微笑みながら、アナに礼を言った。

 

 「ありがとう。アナ」


 「いいのですよ」


 その瞬間、アナの姿に、ふと彼女の面影が重なった気がした。


 「おはようごさいます」


 突然響の声がして、俺とアナは驚いて距離を取る。アナは顔を赤くしてそっと離れた。

 

 その後、光輝と皐月も食堂に現れ、皆で楽しく会話を交わしながら朝食をとった。そして、俺達は朝の授業へと向かった。

すみません。

話のキリが良かったので今回のエピソードは本文が短くなってしまいました。

次回のエピソードはイラストを乗せるので投稿が遅れるかもしれません。

よろしくお願いします。


よろしければ、ブックマークに追加の上、「☆☆☆☆☆」で評価して続きをお読みいただけますと幸いです。

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